アクショントレーニングシステム
アクショントレーニングシステムは,アクションシーンを利用して,CGキャラクタを相手に役者の視点からアクションの稽古を行う複合現実型システムです.アクションに不慣れな役者はアクションの習得に時間がかかります.撮影前に事前に稽古をする場合,相手役が必要で,相手役の役者のスケジュール等を考えると,何度も稽古をすることは困難であり,事前に何度も稽古をすることは現実的ではありません.そこで,生身の人間ではなく,CGキャラクタを相手にアクションの練習を行うことでこれらの問題が解決できると考え,アクションの稽古を行うシステムの開発を行いました.
本システムを用いて演技の稽古をする際,演技者(本システムの体験者)はビデオシースルー型のHMD(Head Mounted Display)とインタラクションデバイスである刀デバイス(図1)を装着します.
図1 刀デバイス(左)とHMD(右)
本システムの利点としては, CGキャラクタを相手に稽古を行うため,演技者の気が済むまで何度も稽古が可能であること,アクションシーンの中でも特に難しい部分のみを繰り返し稽古することも可能であること,および本番撮影に使われる屋内セットやロケ現場などの現実背景に重畳描画されたCGのキャラクタや大道具を見ながら,稽古を行うことができることです.
アクショントレーニングシステムには以下のような機能があります.
コンタクトポイント(Contact Point; CP)の表示
キーフレーム(Key Frame; KF)に近づくと,CPを表示します.
アクションデータの制御
アクションの習得状況に応じてアクションの再生速度を変更します.指定フレーム(主にKF)でアクションを停止,通常の2分の1倍速での再生,通常速度での再生が可能です.
アクションの評価
1人で稽古を行うと,演技者は自身が行ったアクションの出来を確認することは困難です.そこで,演技者のアクションが手本アクションにどの程度近いのかを点数で評価します.剣戟アクションでは刀の動きが重要です.刀の動きが正しければ自然と体の動きも正しくなると考えたため,刀の動きのタイミング・位置,および軌跡を利用して評価を行います.
機器構成図を以下に示します.システム制御部では,メインとなるシステムの制御や,演技者に対する合成映像の提示を行います.客観視点映像制御部では,カメラで捉えた映像にCGを重ねあわせ合成映像を作り出し,客観視点でのアクションの確認を可能としています.感覚フィードバック制御部で,刀デバイスの振動と効果音の制御を行っており,正しいアクションが行えた際に,振動や効果音で演技者にフィードバックを与えます.
図2 アクショントレーニングシステム機器構成図
本システムの体験手順は以下のようになっています.
(1) CGキャラクタによるお手本アクションを見て,アクションを把握します(図3a)
(2) HMD,刀デバイスを装着し,稽古を行います(図3b)
(3) アクション終了後,評価を確認します(図3c)
(4) (1)〜(3)をアクションが習得できるまで繰り返します
図3 稽古の流れ