アクションデータのタイミング・初期位置の半自動調整


 複数人で行うアクションを3次元ビデオ形式でデータ化する場合,技術的な制約からそのデータは個別に収録する必要があります.また,三次元ビデオ形式のデータとモーションキャプチャ形式のデータの両方をアクションシーンに用いたい場合なども,別々に収録したアクションを組み合わせてアクションシーンを作る必要があります.しかし,実際には目の前にいない相手の動きを,想像しながら演技したアクションデータでは,組み合わせた際に若干のずれが生じてしまいます.
 そこで,我々はデータを組み合わせてアクションシーンを構築する場合,データごとに相手と交わる箇所を時間的および空間的に指定しておくことで,これらをもとに半自動的にタイミング合わせと位置合わせを行うこととしました.現在は,まず1対1のアクションシーンに限定し,基準となるキャラクタ(基準キャラクタ)の指定を行い,基準キャラクタにもう片方のキャラクタ(調整キャラクタ)のアクションタイミングを合わせた後,初期位置の調整を行っています.以下,その詳細な過程をご説明します.

1. タイミング調整
 アクションの中で,2人のキャラクタが交わるフレームをキーフレーム(Key Frame; KF),キャラクタが構えている等の再生速度を変更させても不自然ではないフレーム群をタイミング調整フレーム(Timing Control Frame; TCF)群と定義し,事前に設定しておきます.対応するKF同士が合致するようにTCFの再生速度を変化させることによってアクションのタイミングを調整します.図1にタイミング調整の概要を示します.

図1 アクションデータのタイミング調整


2. 初期位置調整
 アクションの中で,2人のキャラクタが交わる3次元位置をコンタクトポイント(Contact Point; CP)として事前に指定しておきます.CPは,図2に示すように両者の刀と刀が交わる位置や攻撃の際に相手と接触する位置とし,基準キャラクタ・調整キャラクタの全てのKFに対して設定します.アクションデータ内の全ての対応するCP間の距離の総和が最小になるように調整キャラクタの初期位置を求めることによって初期位置の調整を行います.

図2 コンタクトポイントの例


3. 半自動調整結果
 図3に個別に収録した2人のキャラクタによるカンフーアクションデータに本手法を用いてタイミングと初期位置を調整した結果を示します.左列は手動でアクションタイミングおよびキャラクタの位置関係を調整して生成した理想とするアクションシーンの正解データを,中列は本手法適用前,右列は本手法適用後のアクションデータを示しています.また,右段の赤枠で囲ったキャラクタは基準キャラクタを示しています.図3より,(e)のKFでは2人のキャラクタの位置関係に多少の不整合が見られますが,本手法によりアクションのタイミングおよび位置関係が概ね正しく調整されていることが分かります.

図3 タイミング・初期位置調整結果