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DVD特典映像ガイド
   
O plus E誌 2004年2月号掲載
 12月号で3本しか紹介できなかったので,たまっているDVDの大半を片づけてしまおう。念のため断っておくと,通常の作品評価はVFX利用を加味した映画全体の評価であるのに対して,このコーナーでの評価基準は,特典映像としてVFXメイキング解説が充実しているか,分かりやすいかどうかである。映画としての出来栄えとは関係ない。いや,本編ではしっかりVFXを多用し,それをウリにしているのに,DVDでロクに解説していないものは一層評価も厳しくした。  
   
  『ピンポン』
 2枚組でDisc 2はバラエティに富む。CG/VFX解説は,まず54分間のメイキング映像の41分辺りにある。曽利監督は,予定よりCG製ピンポン球合成が増えたこと,カメラワークへの追随の苦労を語るが,これは少し大仰だ。今見てもさほどの出来ではない。
 この他に,「本編解説」の中に「CGシーン解説」9分弱があり,これは良く出来ていた。当時の映画時評でも,オープニングの橋のシーンは褒めたが,フルCGのペコを含め,思っていたよりもCG利用度が高かった。ペコとドラゴンの対戦シーンのメイキングは良質で,マッチ・ムーブはしっかりやっていることが分かる。Sony Pictures Imageworksにいた松野氏の担当はこの2シーンだけだが,これは評価したい。これだけできるなら,もっと派手な卓球シーンのある映画にして欲しかった。
 
   
  『ブレイド2』
 この映画は2002年6月公開だったが,試写会に行く時間がなく,取り上げる機会を逸してしまった。かなりのVFXを駆使していると聞いたので,DVDの発売を待った。2枚組で未公開シーンも予告編も「メイキング・クリップ・コレクション」もどっさり入っている。
「ハイパーVFXの全貌」というだけあって,「デジタル・スタントマン」(約6分)「裂ける口〜最先端CGテクニック」(約3.5分)は解説も詳しい。前者は「トリプルX」より先にデジタル・スタントマンを本格的に使っていたことが分かるし,吸血鬼の顔の下半分をCGに置き換える後者はメイキング・プロセスがよく分かる(写真)。その次の「シーン解説」は題名が良くないが,SFX工房の模型,アニマトロニクス制作のメイキングで53分もある。7つのパートの途中からも入れるのは親切だが,メニューに戻るリンクがないので,このDVD操作は苦労する。
 
   
 
 

写真 左2枚はCGモデルの制作と当てはめ。顔の上半分は実写からテクスチャを抜き出して,右下の映像が完成版。

 
   
  『スチュアート・リトル2』
 本編が短いので1枚だが,映像音声特典が11種類あり,前作同様VFX解説も充実している。「撮影の舞台裏」約23分中に,PreViz,CGの洋服デザインと洋服職人,猫のスノーベルの撮影風景等が登場する。圧巻は,スパイダー・カムでのセントラルパークの撮影風景だ。
 他にVFXメイキング・ドキュメンタリーが3編ある。「ファンルコンが生まれるまで」(7分)「早分かりCGアニメ製作」(2分)「空飛ぶスチュアート」(24分)で,少し重複もあるが,とてもためになる。加えて監督とVFXスーパバイザの音声解説もあるが,とても全部見る(聞く)時間的余裕はなかった。
 
   
  『Returner/リターナー』
 2枚組で,Disc 2のメニューは「Preproduction」「In Production」「Post Production」等に分かれている。どれも長い。ファンに見せるためより,自分たちの記録集といった感じだ。
 VFXは勿論「Post Production」の中にあって約9分。7つのシーンの丁寧なメイキングで,やはり『ピンポン』よりはずっと上だ。模型,クロマキー,モーションコントロール・カメラの使い方が上手く,さすが山崎流VFXは日本一だ。最終のジャンボ機の変形,オイルリグ模型の質感とCGの海面の処理も上手い。「Before⇒After」の項では,質感の向上が良く分かり,堪能できる。
 
   
  『サイン』
 1枚もので,メイキング映像は59分もある。ただし,「撮影」「音楽」「特殊効果」等のサブメニューが明示されていて,各々から入れるから親切だ。「特殊効果」は約8分半。VFXの技法紹介でなく,エイリアンのデザインから撮影風景,CGの工夫まで全体の語りで,結構面白い。本編でのエイリアンの登場シーンより,このメイキングの方が面白いくらいだ。ただし,技術的にはILMにとっては肩慣らし程度だ。シャマラン監督にとってVFXの多用は始めてだというから,今後もっともっと使いたがるのではないか。シナリオがいいなら,それも歓迎だ。
 
   
  『トリプルX』
 1枚もの。ポストプロダクションの解説は8分強で,音響効果・音楽のことばかり。たったこれだけで,他に見るべきものも全くない。買うんじゃなかった。
 
   
  『マイノリティ・リポート』
 2枚組。本編の未来描写も秀逸だったが,DVDのメニューのデザインも実に洒落ている。メニューは一見少ないが,階層化されているので中身は濃い。「解析:マイノリティ・リポートの世界」が素晴らしい。それぞれ5〜10分の映像が5つもある。50年後の未来予測は,この種のSF映画としては最高だ。アーチ型透明モニタとジェスチャー認識インタフェース,未来交通システムマグレブなど,しっかりした未来予測が下敷きにある。
 「ILM:その特殊効果技術」も堪能できる。これは6つのパートに分かれて,各3〜5分。特に「収容所」のCG制作が素晴らしい。DVDの特典映像もベスト1だ。
 
   
  『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
 前作と同様2枚組で,Disc 2には未公開シーンやゲーム他,ハリポタ世界のグッズ解説,課外活動などが盛り沢山に入っている。「ホグワーツの裏側」の中に「ダンブルドア先生の校長室」と題したメイキング約17分がある。校長室の造形の美術,衣装,へアメイク,音響効果の解説に混じって,VFXも少しだけ語られている。CGだと思っていた怪獣とかがアニマトロニクスだったこと分かる(そう言いたくて入っている)が,これだけの作品なのだから,別扱いでもっと沢山解説して欲しい。
 
   
  『007/ダイ・アナザー・デイ』
 2枚組だが,特典らしきものは,主題歌を歌うマドンナのミージック・ビデオとそのメイキングくらいしか入っていない。普通のメイキングもなく,サービス精神に欠ける。ただし,リー・タマホリ監督と製作のM.G.ウィルソンの音声解説は悪くない。どこがCGでどこが合成なのか,メイキング情報は結構語ってくれている。
 
   
  『戦場のピアニスト』
 1枚もの。特典は,監督・主演らのインタビュー,撮影風景,予告編程度だ。VFXの解説は全くない。映画中でも,僅かしか使ってなかった。この映画をもう一度見たかったから買ったまでで,期待する方が悪かった。
 
   
  『ギャング・オブ・ニューヨーク』
 2枚組。この映画もVFXの利用は僅かで,しかも感心しない使い方だった。予想通りVFX解説は全くない。メイキングの中では,セットデザイン,コスチュームデザインは見るに値する。この映画の特典はこれでいい。「セット探求」は,Enterモードで全方位が見える。面白い。
 
   
  『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』
 2枚組。詐欺師の手口やFBI視点の捜査方法等が特典で,メイキングは約17分。これも予想通りVFX解説は全くない。60年代ファッション,時代の雰囲気作りが中心だ。S. スピルバーグの早撮りが印象的だった。
 
   
  『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』
 前作同様2枚組で,TVスポットやミュージックビデオなど,10種類の特典映像がある。「二つの塔の舞台裏」(14分)が一般のメイキングで,他に「メイキング・クリップ集」として,3〜4分のものが8種類ある。サウンドやクリーチャーや武器・甲冑のデザイン,戦闘シーンの撮影風景などで,VFXに関係するのは「ゴラム誕生」(約4分)くらいだ。この撮影風景,リアルタイム・モーションキャプチャの使い方は,一見の価値はある。
 2年連続のオスカー・ウィナーなら,木の精やヘルム峡谷の戦いなど,もっとVFXメイキングを見せてくれてもいいのに,この印象も前作と同じだ。
 
   
  『デア・デビル』
 監督の音声解説の他に「超感覚VFXモードで再生」がある。本編の再生途中の8箇所でVFXプロデューサ,ジョン・キルケニーのCGメイキング解説が楽しめる。それぞれマルチアングル機能も利用できる。
 映画はイマイチだったが,VFXはたっぷり使っていたので,この解説も充実していた。特に8つ目,レザー・スーツの質感表現に,本物を撮影し,変位マップなどを使ってCG製スーツにリアリティを与える下りはためになる。VFX教科書的教材で,これでこそ特典映像だ。
 
   
  『サラマンダー』
 映像の売りはCG製の巨大竜だったが,11分半のメイキング映像は火炎を扱う技術者の話だった。最近CG製の炎も多いが,この竜がはく炎の大半は本物のようだ。炎を扱う注意はためにはなるが,それだけなのは淋しい。
 
 
   
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