head
titlehome略歴表彰学協会等委員会歴主要編著書論文・解説コンピュータイメージフロンティア
| INDEX | 年間ベスト5 | DVD特典映像ガイド | SFXビデオ観賞室 | SFX/VFX映画時評 |
title
 
O plus E誌 2001年1月号掲載
 
 
star purasu
『シックス・デイ』
(コロンビア映画/東宝東和配給)
 
       
      (2000/11/22 東宝東和試写室)  
         
     
  未来描写は一見の価値あり  
   原題は『The 6th day』。6日間ではない。天地創造で,神は6日目に人間を創ったという旧約聖書「創世記」の記述に由来している。クローン技術で造られたコピー人間が登場するSF映画で,主演は『エンド・オブ・デイズ』以来1年振りのアーノルド・シュワルツェネッガー。当然,『T2』や『トゥルー・ライズ』級の歯切れのいいアクションと大規模なVFXを期待してしまう。
 べテラン脇役ロバート・デュバル以外は,共演陣も監督のロジャー・スポティスウッドにも余り馴染みはない。主演スター1人だけが目立つ典型的なシュワ映画だ。いや,クローンが登場するから2人だが…。
 バイオテクノロジーの発達により,ペットさえも複製できるようになった2007年に人間のクローニングを禁じる「6d法」が成立するが,2010年にこの禁断の扉を開く犯罪者が現れたという設定である。映画ですら2007年としているのに,何と日本では20世紀のうちにもう法律ができていた。森内閣不信任案で注目を集めた臨時国会の閉会間際の2000年12月1日に「ヒトクローン技術規制法」が可決したそうだ。まさか,10月末の東京国際映画祭でのオープニング上映を見て,急遽法案を上程したわけではないだろうが。
 完全なクローン人間の生成には,DNAから得た遺伝子情報の他に,後天的な体験や記憶を網膜経由で読み取った「シンコード」が必要という設定が面白い(写真1)。クローニングの実験室風景,2010年の情報端末,ホログラム表示などの描写にも力が入っている。SFファンやIT関係者は,これだけでも一見の価値がある。冒頭のアメフト・シーンでは,QBのヘルメットにフォーメーションの指示がAR表示されるし,家庭の冷蔵庫の扉にはLCDが埋め込まれていて,家族間のコミュニケーションに用いられている。いずれも最近のヒューマンI/F研究でよく話題になるネタだ。運転手がハンドルから手を離す自律走行車のシーンは,カーネギーメロン大学のNavlabプロジェクトを知っている者なら,ニヤリとさせられる。映画の前半は,小うるさいくらいにこの手の小道具が登場し,落ち着きがない。
 「2010年−あなたはふたりいる」というキャッチコピー通りに,クローンの存在だけを掘り下げれば面白いストーリーになったと思うのだが,後半はシュワ映画らしいアクションに転じてしまう。観客の期待に応えるためだろうが,この映画の場合,どうもSFとアクションのバランスが悪い。米国では同日公開の『グリンチ』に大差をつけられたが,日本ではシュワちゃん人気だけで客を呼べるのだろうか。
 クライマックスの2人シュワの活躍は予想通りの展開だが,その合成技術は悪くない。今どき珍しくない技術とはいえ,どちらがメインか合成されたサブか,まったく区別できない。シネサイト社の担当だ。
 700に及ぶVFXショットの中で出色なのは,リズム&ヒューズ社制作のWhispercraft(写真2)だ。ジェット機に変身するこのヘリコプターはフルCGだという。ヘリでの場面,ローターなどはどう見ても実写としか思えなかった。昼間シーンでのこの質感には,VFX技術の進歩を実感させられた。
 
()
 
写真1 ポスターでよく見かけたシーンは,HMDではなく, 眼底からの記憶情報読取り装置写真2 質感豊かなWhispercraft
 
   
  Page Top  
  sen  
 
back index next
 
     
<>br