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(注:本映画時評の評点は,上から![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
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緻密に計算された広報作戦 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
実に見事な広報戦略だ。何しろ60億円かけたベストセラーコミックの実写映画化3部作の完結編である。1作目はルーブル美術館「モナリザの間」での記者会見,2作目は大阪万博記念公園で「太陽の塔」の外観を改造してのイベントで話題作りをしていたから,この最終章では何をやるのかも楽しみだった。本作では,前人気を煽るのに徹底したじらし作戦が敢行された。いや「箝口作戦」といった方が相応しい。原作とは結末が違うことを強調しておきながら,東京国際フォーラムでの完成披露試写会でも,その他のマスコミ用試写会でもラスト約10分間をカットした特別編集版しか上映しないという。いや,それ以前に台本自体がラストシーンあり/なしの2種類存在し,結末を知っているのは監督を含む最小限の関係者だけというから,そこまで徹底するなら見事だ。「ともだち」が2人映っているスチル写真(写真1)なども,ファンの想像力をかき立てる。エンターテインメントであるなら,お客の早く観たいという欲求を煽るだけ煽って映画館に脚を運ばせるのも「アリ」だろう。 |
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映画館はほぼ満席,CG/VFXも大幅強化 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
392席あるシネコンのこのシアターは,前の2列を除いてほぼ満席だった。昨年来,同じ映画館で『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』『地球が静止する日』『トランスフォーマー/リベンジ』『ボルト 3D』等を公開直後に観たが,ここまでの席の埋まり具合は初めてだ。いかに前宣伝が効果的であったかの証左だ。観客層は勿論若い世代が中心で,前作よりも年齢が低いと感じた。週末の朝なので,中学生のグループや,親に連れられての小学生の姿も目立った。上映前からどんな結末になるのかの会話が交わされ得ていたし,原作コミックを手にしている少年たちも結構見かけた。それだけ,彼らの間にこの物語の行方が関心事なのだろう。 |
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■ 前2作に比べて,CG/VFXの利用は明らかに増えている。まず,2017年の東京の街に浮かぶ大型ビデオモニターつきの飛行船(写真2)。第2章のエンドロール後の予告部分でも登場したが,最終章ではもっと本格的に登場する。数もさることながら,246階建てのともだちタワーの威容とのコンビネーションで,ともだちが支配する得体の知れない未来都市の雰囲気を伝えている。このタワーを中心とした夜景や万博会場の黄昏時の光景も美しい(写真3)。タワーの先端部,川越関所にある大きな建物(砦)(写真4)なども,原作にもある絵柄だが,3D-CGで描くことにより,映画らしいスケール感を出している。成功の部類だろう。 |
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■ 後半登場する空飛ぶ円盤(写真5),二足歩行ロボットの描写にもかなり力が入っている。これも十二分に原作の限界を超え,映画ならではのレベルに仕上がっている。主担当は『GOEMON』(09年5月号)のN-DESIGN社で,3部作の1作毎に力をつけていることが如実に表われている。円盤もロボットもデザインは原作に従わざるを得ないが,それぞれの発進場面はなかなか見ものだった。ロボットを操縦するコクピットのデザインは少しレトロ調で,このロボットには似合っている。浦沢直樹は,絵は上手いが,アクションシーンの描き方は下手くそだ。この映画では,そこをCGによる描写でかなり補っている。ハリウッド大作を見慣れた目には当たり前のように映るが,その当たり前レベルに達していることは評価できる。 |
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■ CG/VFXで強いて難を言えば,古い街並みを壊して移動する様やバランスを崩されて倒れる様が,少しチープに感じる。かつてのゴジラやメカゴジラが街を壊すシーンを想い出させてくれるのはご愛嬌だ。単独で見ると質感は悪くないのに,合成映像に少し違和感があるのは,ハイライト処理,コンポジット処理が若干甘いせいだろう。空飛ぶ円盤の撃墜シーン,ヘリの体当たりシーンは,まずまずといったところだろうか。 ■ クライマックスのコンサート・シーンの背景として描かれる万博会場のVFX処理も悪くない。この合成には違和感はないので,大半の観客はごく自然な光景として受け取っていたことだろう。コンサートの観衆はエキストラ1万人を動員したというから,これはまさに生の迫力だ。ところが,観衆は全部実写と思わせておいて,最後にカメラを引いた俯瞰構図で万博会場を埋め尽くす何十万人という大群衆を見せてくれる(写真6)。勿論デジタル技術の産物だが,クオリティも見せ方もなかなか見事で,このシーンも原作を超えている。 |
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■ コンサートでのもう1つの関心事は,ケンヂが歌う「Bob Lennon」だ。コンサート風にうまくアレンジされているし,唐沢寿明の歌自体はこんなものだろうが,曲そのものが魅力的ではない。原作者自身が作った想い出の曲らしいが,これがラジオから流れて人々を魅了したというのは苦しい。むしろ,春波夫(三波春夫のパロディ)が歌う「ハロハロ音頭」の方が秀逸だ。大阪万博のテーマソング「世界の国からこんにちは」に「東京五輪音頭」と村田英雄の「皆の衆」をミックスさせた味わいで,パロディもここまでくれば立派なものだ。和服姿の春波夫(古田新太)が両肌脱いでドラマーと化すシーンでは,会場から拍手が湧いた。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
結末は書けないが,観客の大半は満足か | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
さて問題の結末であるが,試写会でカットされた10分間の映像は,感動のコンサートが終わり,エンドロールが流れた後についていた。そのこと自体は映画館でもしきりに注意していたが,ネタバレになるので内容を本稿で明かす訳には行かない。確かに,コミックの結末とは違うことは違う。筆者が周りのカップルや中高生たちに取材したところでは,「期待したほどのサプライズじゃなかった」「誇大広告だ」という声があった半面,「マンガよりずっと良かった。すっきりした」「3部作に完結編としては,これでいい」と評価する感想も少なくなかった。公開初日の席を埋めた熱心な観客の大半がほぼ満足できるオチであったと受け取れた。 1つ訂正しておきたい。2作目の評の最後で,「原作をどう換骨奪胎し,満足感が得られる最終章とするのか,脚本家と監督のアレンジャーとしての腕が見ものだ」と書いたが,無意味だった。この映画の脚本家は,原作者・浦沢直樹と彼のコミック作品のほとんどを手がけているプロデューサーの長崎尚志である。即ち,アレンジの腕もくそもない。原作者コンビがそのまま脚本を担当しているのだから,大きなサプライズがなくて当然だ。コミックのエンディングで不評だった点を補えば,ファンの満足度が上がることも容易に予測できる。思い切って,全く違うプロの脚本家を雇って欲しかったところだ。それも,ハリウッドの一線級が担当したら,どんな物語になったかを観てみたかった。 もう1つ不満を述べておきたい。これが「本格科学冒険漫画」を映画化した「本格科学冒険映画」なのか? 一体どこが「科学的」で「本格」なのかさっぱり分からない。SFをかつて「空想科学小説」と呼んでいたことにならったのだろうか。それでも,こう名乗る以上は,二足歩行ロボットは歩行可能と思えるデザインにすべきだったし,ヴァーチャル・アトラクションはもう少し実現可能と思えるレベルに留めるべきだ。ヴァーチャル・アトラクションをタイムトラベルと思わせるような使い方も感心しない。 さあ,熱烈ファン対象の壮大な祭りは終わった。冷静に振り返って考えれば,映画のレベルは邦画の娯楽作品の中の上程度だと分かるだろう。丁度,マスコミの報道に煽られて駆けつけた万博の各パビリオンは,米国製テーマパークのアトラクションには及ばず,せいぜい国内の遊園地かヘルスセンターと同程度だったのと同じことだ。 それでも,万博は規模が大きいからこそ楽しく,皆で行って語り合えば楽しさも倍加する。この映画も全く同じだ。この祭りに参加できて,実に楽しかった! |
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●付記:プレスシートでのこだわりは,誰に対してのメッセージ? | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
プレスシートのことも書き留めておきたい。プレスシート(略してプレス)とは,紹介記事を書くための参考資料としてメディア関係者に試写会で配られる冊子である。内容は,映画館で一般観客に売られているパンフレットと似たようなものだ。両者を区別するためか,プレスの方が用紙サイズが大きく,ページ数が少ないことが多い。 この『20世紀少年』3部作に関しては,大きさは同じA4サイズだったが,表紙はまるで違い,プレスの方が凝りまくっていた。第1章はケンヂたちが作った「よげんの書」(写真7),第2章は「日本万国博覧会オールカラーガイドブック」(写真8)をもじっていた。後者は,約40年前の公式ガイドブックそのものではないかと,しばし目を疑ったほどだ。 |
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そして最終章のプレスの体裁は,ケンヂたちの小学校の卒業記念アルバムだった(写真9)。色だけではない。布地から金箔文字までも真似てある。その中の写真がまた良くできている。「日光移動教室」(修学旅行)のスナップも,校庭でのクラス集合写真(写真10)もまるで本物だ。これはどこかの小学校のアルバムから流用してきたのかと思った。本作品に出演した子役たちに当時の服装をさせ,それらしいポーズをとらせて製作したものだ。髪形,手の位置や脚の組み方まで小学生そのもので,実直そうな先生もいかにもだ。修学旅行にはしっかり他所行きを着せ,学校内ではきっちり普段着を着せている。ご丁寧にも数十年が経過したかのようなシミまでも描いている。このアルバムは第1章の映画中で登場したとはいえ,この時間のかけ方はハンパではない。 こうした見えないところでのこだわりと洒落っ気を,なぜプレスシートでだけ発露し,販売用のパンフレットでは使わなかったのだろうか? この映画のファンにアピールしてこそ,価値があったと思うのだが……。それとも,「ガキだらけのコミックファン,映画観客には,ここまでのこだわりは通じまい。昭和を忠実に描いたこのアートワークは,当時を知る中高年の記者や編集者にこそ分かって欲しい」というスタッフの熱き想いなのだろうか。 |
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