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O plus E 2021年Webページ専用記事#5 |
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『ロン 僕のポンコツ・ボット』
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(20世紀スタジオ/ウォルト・ ディズニー・ジャパン配給 ) |
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(C) 2021 20th Century Studios
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オフィシャルサイト [日本語][英語] |
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[10月22日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開中] |
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2021年10月13日 大手広告試写室(大阪) |
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(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています) |
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ほのぼのとしたバディものアニメで,CGキャラが可愛い |
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| ディズニー配給のフルCGアニメの最新作である。もはや,CG画像のクオリティでも,ストーリーでも,アニメ映画の本家WDA(Walt Disney Animation Studio)作品なのか,CGアニメの元祖PIXAR作品なのか区別がつかない。いずれであれ,米国のハイシーズン以外の公開なのはどうしてだろうと思ったら,ディズニー傘下に入った「20世紀スタジオ」ブランドの劇場用アニメだった。
「20世紀フォックス映画」時代のCGアニメといえば,伝統あるブルースカイ・スタジオが制作を担当し,『アイス・エイジ』シリーズがヒットした。『I I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』(15年12月号)もこのスタジオが制作したフルCGアニメであった。計10数本の長編アニメを生み出したはずだが,日本市場ではヒットしないと判断されたのか,この数年は本邦で殆ど劇場公開されていなかった。親会社がディズニー傘下に入ったことにより,再度,陽の目を見るようになったかと思ったが,どうやらブルースカイ・スタジオの作品ではないらしい。英国の「ロックスミス・アニメーション」なる新進気鋭のCGスタジオが担当し,これが長編第1作目だそうだ。以下,ストーリー,キャラ,CG等々に関して,項目別に論じることにしよう。
【物語設定と演出】
主人公のバーニーは友達のいない少年で,そのお相手となるのはロボットのロンだが,最新のハイテクロボット「Bボット」の不良品という設定である。テーマは「友達の作り方」「親友の意味するもの」で,孤独な少年とポンコツ・ロボットが,互いを心から理解し,深い絆を築いて行く様を描いている。
少年と動物,恐竜,ロボット等の組み合わせは,この種のアニメの定番だ。我が国のTVアニメでは「正太郎とオバケのQ太郎」「のび太とドラえもん」,海外では「チャーリーとスヌーピー」「ヒックとドラゴン」をすぐ思い出す。人間側が大人の「ウォレスとグルミット」も同じカテゴリーと言えるだろう。そうした鉄板の枠組での物語で,セリフは少し白々しいが,ほのぼの系のバディムービーとして結構良くできていた(写真1)。
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写真1 次第に心を通わせる定番のパターンが心地よい
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| 監督・脚本・製作総指揮のサラ・スミスは,ロックスミス社の創始者の1人とのことだ。共同監督のジャン・フィリップ・バインは『インサイド・ヘッド』(15年7月号)『アーロと少年』(2016年3月号)『カーズ/クロスロード』(17年8月号)等のストーリー・アーティストで,これが監督デビュー作である。いずれも当欄では初登場の名前だが,生身の俳優に演技をつけたり,撮影時の天候や日照を気にする必要もなく,脚本とCGキャラのデザインさえしっかりしていれば,経験は少なくても監督は務まると言えそうだ。
【キャラクター・デザイン】
巨大技術企業バブル社が開発した「Bボット」は,ネット,写真,通話,TV,ゲーム,音楽等のデジタル機能を備えていて,AI機能で持ち主にピッタリな友達を探してくれるという代物だ。要するに,最新スマホやAIスピーカーの機能を,ペット型ロボットに組み込んだ製品だと思えばいい。
その基本モデルは白い縦長の曲面形状で,体表面の前面が情報表示ディスプレイとなっている(写真2)。外観全体の色や模様パターンは所有者の要望で変えられるし,行動時に状況に応じて自らルックスを変えるようだ(写真3)。
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写真2 身体の前面がディスプレイ画面として機能する
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| バーニーのもとに届いたロンは,まともにネット接続もできず,彼の問いかけにも答えられない欠陥品であったが,2人の信頼が増すに連れ,仕草も次第に可愛く見えてくる。シンプルだが,飽きのこない好いデザインだと思う(写真4)。グッズ市場でも人気を博すことだろう(写真5)。ただし,数々のキャラクター商品を有するディズニーゆえに,このロンにどれだけ力を入れるかには疑問符がつく。
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写真4 ドジな欠陥ロボットが段々可愛く見えてくる
(C)2021 20th Century Studios. All Rights Reserved. |
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| 【CG表現と未来描写】
既に何度も書いたように,もはやフルCG作品というだけでは,当欄で取り上げるに値しない。大きな技術的進歩があったゆえに,革新的な新技術がなくても標準的なCGアニメを作れるレベルに達している。本作はその典型だと言える。しかるべきCGツールを投入し,そこそこ経験のあるアニメーター,CGアーティストを集めれば,さほど実績のないスタジオが,メジャーブランドの劇場公開映画を作れる訳である。
バーニー少年のルックスは,かつての『くもりときどきミートボール』(09年10月号)や『アーサー・クリスマスの大冒険』(11)の主人公を思い出す。即ち,どこかで見た顔立ちで,全く新しさや個性を感じない。ロンのデザインは上述の通り,シンプルで嫌味がない。それでいて,Bボットのハイテク機能の紹介は魅力的であり,近未来社会の交通網もしっかり未来を感じさせるものになっていた。CGの使い方はこういうところにだけ注力し,後はストーリー勝負に持ち込めばいい。
【ロックスミス・アニメーションについて】
後日もう少し調べてみたところ,ディズニーは2021年2月にブルースカイ・スタジオの閉鎖を決めたとのことである。伝統あるCGスタジオがこういう形で消えて行くのは残念なことだ。WDAとPIXARの最強スタジオ2つを抱えるディズニーとしては,3つも要らないと考えるのも当然だ。
では,本作を担当したロックスミス社はどう扱われるのかと言えば,こちらも驚くべき状況が浮かび上がってきた。元々ロックスミスはパラマウント映画と制作契約を結んでいたが,パラマウント側のトップの交替により契約がご破算になり,代わって20世紀アニメーションと複数年契約を結んだ。ところが,今度はその親会社の20世紀フォックスがディズニーに買収された。そのため,既に製作中であった本作は,「20世紀スタジオ」ブランドでありながら,ディズニー配給網から公開の運びとなった訳である。既に,本作の監督であるサラ・スミスはロックスミス社を去り,もう1人の創始者ジュリー・ロックハートは,ワーナー・ブラザースと複数年の制作契約をしたそうである。即ち,本作は20世紀スタジオ名義(=ディズニー配給網)で公開される唯一の作品となった訳である。
こうした業界事情を細々と語るのは当欄の本意ではないが,この愛すべき「バーニーとロン」のバディムービーがシリーズ化される可能性は,ほぼ無くなったことを述べておきたかった訳である。
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