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O plus
E誌 2001年5月号掲載 |
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(c)
2000 Twentieth Century Fox |
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(2001/3/6 20世紀フォックス試写室)
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硬派の実話軍隊ストーリー
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昨年11月,米国で『リトル・ニッキー』と同一週に公開された作品だが,こちらは極めて硬派の,実話をもとにした感動を呼ぶ正統派の映画である。
経営的に見れば,アメリカ映画で一定の興行収入が見込めるジャンルがある。軍隊ものか,黒人主演のブラック・ムービーがそれであり,黒人と白人の心の触れ合いが描かれていれば尚よい。世界中の米軍関係者やその家族の数,映画ファンの平均所得レベルを考えるとそれも理解できる。そこに法廷ものやミステリーの味付けが加われば,大コケすることはない。『クリムゾン・タイド』『ア・フュー・グッドメン』『英雄の条件』などがその類いで,『ペリカン文書』『エネミー・オブ・アメリカ』はその変形と言えるだろう。
この映画『ザ・ダイバー』は,人種差別を乗り越えて米海軍初の黒人潜水兵となったカール・ブラシア上級兵曹長(キューバ・グッディングJr.)の生涯と養成所の教官ビリー・サンデー(ロバート・デ・ニーロ)との交流を描いた物語である。後半の聴聞会のシーンは,軍事法廷の一種であり,実話とはいえ計算され尽くした感のある企画だ。
2大アカデミー賞スターの共演に,彩りを添えるのはサンデーの妻を演じるシャーリーズ・セロン。本欄でも『マイティ・ジョー』(98)『ノイズ』(99)『レインディア・ゲーム』(99)で紹介済みだ。その後も『サイダーハウス・ルール』(99)『バガー・ヴァンスの伝説』(00)等,目下売れっ子中の売れっ子だが,この役はよくなかった。役柄に幅を持たせたいのは役者の常とはいえ,若い美人にこの厚化粧の汚れ役は似合わない。
原題は『Men of Honor』。「名誉ある男たち」といったところだろうか。表向きは軍隊における人種差別が撤廃されたとはいえ,まだまだ差別が実在した大戦後から1950年代にかけての米国海軍で,黒人兵初の深海ダイバーを目指すブラシアに,養成所では鬼教官サンデーのしごきが待っていた(写真1)。晴れてダイバーの地位を得て,核弾頭回収に成功したブラシアは,脚に大怪我を負う。その後,ダイバーとしての再帰をはかるブラシアは,脚を切断し,義足での訓練に耐え,サンデーの援護で聴聞会に臨む。というのが概略ストーリーである。 |
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写真1 ダイバー養成所の業者も見物 (c)
2000 Twentieth Century Fox |
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写真2 いかにも重そうな潜水具
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昨年の秋,フロリダのディズニー・ワールドを再訪した折,EPCOTセンターのリビング・シー館で,潜水服の歴史の展示を見た。昔はこんな頑丈で重い潜水服を着用していたのかと驚いたのだが,まさにその歴史的時代を描いた映画だった(写真2)。ダイバー養成所の訓練模様も興味深いが,人種差別の実態もまた生々しく描かれている。アメリカ社会の底流では,まだ人種差別は深く根付いているのだろうが,それをこうして恥として表明する潔さが,アメリカという国のもつ姿勢でもある。
本欄の本題であるVFXは,水中シーンで使われている。特に,核弾頭回収任務中のブラシアを襲うソ連の潜水艦のシーンは,模型とVFXを組み合わせたものだろう。ショット数は多くないが,印象に残るシーンである。
真面目な映画で,実話と知った上での感動もある。悪い映画ではないが,残念ながら実話の壁を越えられないのか,小じんまりとしたレベルで留まっている。名優ロバート・デ・ニーロも悪くはないが,この役はトミー・リー・ジョーンズの方が似合っている。エド・ハリスやゲイリー・シニーズならもっと違った味が出たかも知れない。キューバ・グッディングJr.の顔立ちでは,悲壮感がやや足りないとも感じた。デンゼル・ワシントンやサミュエル・L・ジャクソンでは歳を取り過ぎているのでこの役は相応しくないし,他に思いつかないのだが…。とまぁ,勝手なキャスティングで評価してみたくなるのは,この映画がそれだけオーソドックスに作られているからだろう。 |
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