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plus E誌 2012年1月号掲載 |
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(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています。) |
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3作目は,予想通り東京五輪の年が舞台 |
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| 年明けの1月21日公開なので次号掲載でも良かったのだが,試写を観るとやはり早く書きたくなり,本号のトップに据えてしまった。山崎監督の出世作となった『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズの3作目で,3D映画としての登場となると,当欄としては重きを置かざるを得ない。1作目(05年11月号)の思いがけない 大ヒットにより,予定外の続編(07年11月号)を作ったというが,その時から3作目も製作されると予想できた。監督がどう考えようと,金の卵を産むこれだけのヒットシリーズをプロデューサや製作委員会のスポンサ達が放っておくはずがないからである。
舞台はこれまでと同じ東京の下町,夕日町三丁目で,時代設定は昭和39年になっている。言うまでもなく,東京オリンピックが開催された年であり,それに合わせて,東海道新幹線が開業し,首都高速道路の路線も一気に拡張された。団塊の世代である筆者は,高校の修学旅行に出かけた年であり,それから戻った後は毎日のようにオリンピックの生中継を観ていた記憶がある。まさに日本の高度成長の象徴ともいうべき時代で,3作目で描くならこの年に設定するに違いないと予想していた。
主要登場人物は,前作までと同様,鈴木オート一家(堤真一,薬師丸ひろ子,堀北真希)と小説家の茶川竜之介一家(吉岡秀隆,小雪)で,森山未來や大森南朋などの新キャストも登場する。少し驚き,嬉しくなったのが,成長した子役たちだ。古行淳之介(須賀健太)も鈴木一平(小清水一揮)もすっかり大きくなり,大学受験を考える年齢になっている。第1作の舞台が東京タワー建設の昭和33年であったから,その6年後という時代設定は彼らの実年齢進行と同じで,そのままの状態で出演すればいい訳だ。というか,昭和39年(1964年)を描くために,3作目の製作をここまで待っていたのではないかと想像できる。
その間,山崎監督作品としては,『BALLAD 名もなき恋のうた』(09年9月号)『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(10年12月号)があったが,さほどの出来映えではなかった。 それに比べて,本作は本家返りしただけあって,前2作のファンを裏切らない中身に仕上がっている。以下,時代考証とVFXに関する感想である。
■ 昭和時代の市井の風物,流行を再現することは,本シリーズ物の魅力の1つだが,小物類はますます充実している。美術班スタッフも増え,大いに楽しんでいることだろう。イヤミの「シェー」のポースに,そう言えばこの時代だったと想い出す。テケテケテケのエレキ・サウンドも懐かしい。同じ東宝なのだから,大人気だった若大将(加山雄三)をTV画面に出してくれればいいのにと感じた。後で調べたら,ベンチャーズが日本でブレイクしたのも,『エレキの若大将』が製作されたのも翌年の昭和40年だった。少しフライングだ。
■ フェイク3Dでなく,『アバター』と同じリアル3Dというのがウリだが,冒頭はお馴染みのCG製の模型飛行機に誘導され,夕日町の路地から大通りへ向かう(写真1)。このシーンでは,奥行き感を強調している。続いて,空から観た東京タワー(写真2)。この飛び出し感は凄い。思わず拍手したくなるほどだ。その他,随所にリアル3Dならではの素晴らしいシーンがあるが,この映画は2Dで十分堪能できると思う。
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写真1 模型飛行機を追いながら3Dの奥行き感を演出 |
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写真2 続いて,上から見ての飛び出し感で圧倒 |
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| ■ 東京五輪の象徴の1つは,自衛隊機ブルーインパルスが空に描いた五色の輪だが,勿論CGでの再現だ(写真3)。前作までのSL,こだま号に続き,ほぼ同じアングルで鉄橋を渡る新幹線を描いているのも嬉しい(写真4)。東京駅ホームでの0型新幹線は,青梅交通公園まで出向き,ホームを作って実物を撮影し,後処理のVFXで東京駅に仕立てている(写真5)。前作のこだま号のと同じ手口だ。街のシーンでは,当時の建物,電車,自動車の描写も,一段とリアルさを増している(写真6)。
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写真3 ブルーインパルスが空に描いた五色の輪 |
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写真4 1作目のSL,2作目のこだま号に続くこの光景 |
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写真5 青梅鉄道公園の0系新幹線の前にホームを作り(上),後から東京駅をVFX合成(下)
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写真6 グリーンバックは最低限利用し(上),これだけ上質のVFXを実現後(下)。 (C) 2012「ALWAYS 三丁目の夕日'64」製作委員会
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■ 監督だけでなく,常連キャストも再会を楽しんで演じているかのようだ。助演陣の中では,宅間医師を演じる三浦友和が光っていた。先月号の『RAILWAYS 愛を……』で書きそびれたが,同作での演技も見事だった。年齢を重ねて,いい俳優になったなと感じた。
■ 定番の涙を誘うシーンが随所にある。龍之介の父の死と遺した言葉,六ちゃんの婚約での社長の想い,そしてラストの竜之介と淳之介等々,少し乱発し過ぎだ。寅さんシリーズなら,もっと笑わせた上でほろりとさせたが,まだ脚本や演出がその域に達していない。少し遊びが少ないとも言える。今後,このシリーズはどこまで続けるのだろう? 原作コミックは,誰も年を取らずに,同じ時代を数十年間描き続けているが,映画ではそうはいかない。3Cブーム,大阪万博,オイルショックの頃までは続けられると思うので,円熟を期待したい。
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(画像は,O plus E誌掲載分に追加しています) |
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