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plus E誌 2012年1月号掲載 |
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(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています。) |
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YAMATOの成功から生み出された真面目な一作 |
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| 今月はメイン欄の候補作が沢山あったが,邦画をもう1本選んだ。3年前は毎月1本前後は邦画を紹介していたのに,最近はぐっと減っている。ことCG/VFXに関しては,数多くの映画で使われてはいても,語るに値する作品が少なくなっているためである。その埋め合わせの意味もなきにしもあらずだが,若い世代にこういう硬派の映画も紹介しておきたいと思い,本作を取り上げた。世の中が明るかった『ALWAYS 三丁目の…』の世界に浸るだけでなく,日本人ならその前史である戦争に至る時代をも知っておく必要がある。
副題にあるように,2011年12月8日は太平洋戦争開戦の70周年に当たる。有名な真珠湾攻撃の責任者であった司令長官・山本五十六を真正面から取り上げた作品である。半藤一利監修とあったので,「日本のいちばん長い日」「ノモンハンの夏」等で昭和史の語り部として知られる同氏の同名小説が原作なのかと思ったら,そうではなかった。今回,映画と連動して同名の書籍が出版されているが,脚本そのものは,同氏の「昭和史」「山本五十六」や山本英正著の「父 山本五十六」を参考にして書かれたようだ。ともあれ,「連合艦隊」でなく,意図的に「聯合艦隊」と書くところに本作の意欲と矜恃が伺える。それならば,12月8日か9日に公開して欲しかったが,大作ゆえに間に合わなかったのだろうか。
監督は,『クライマーズ・ハイ』(08年7月号)『孤高のメス』(10年6月号) の成島出。硬派の主人公を描くと演出が冴える。主演は役所広司で,海軍の制服姿が実によく似合う。彼と共に日独伊三国軍事同盟に反対し,米国との開戦を懸念した海軍大臣・米内光政役に柄本明,軍務局長・井上成美役に柳葉敏郎が配されている。この良識派トリオのキャスティングが本作の成功要因だ。新聞記者・真藤利一役の玉木宏,その上司役の香川照之も重い役柄だが,その他に坂東三津五郎,阿部寛,伊武雅刀,吉田栄作,椎名桔平,原田美枝子,宮本信子,田中麗奈等々の豪華俳優陣が脇を固めている。
このスケールで東映配給の本作が企画されたのは,『男たちの大和/YAMATO』(06年1月号) の成功によるところが大きいのだろうと想像できる。実物大の戦艦大和を作ったという同作ほどの派手な話題はなく,やや地味な印象なので,どこまでヒットするか,少し心配になる。ともあれ,1つの作品の成功が,こうした真面目な作品を生む契機となったのなら喜ばしいことだ。
戦艦や戦闘機を中心とした戦争シーンはCG/VFXの活躍の場であり,『…YAMATO』での経験が,本作にも活かされていることが実感できる。聯合艦隊の旗艦「長門」を建造したという話は聞かないから,CGの比率が増えているのだろう。ただし,特撮監督・佛田洋氏の名前がクレジットされていたから,CG一辺倒ではなく,模型を使ったSFXも多用されていたのだと思われる。写真1の旗艦は模型のようにも見えるし,CGだという気もする。日本のモデラーやライティング担当者の腕も上がっているので,戦艦のすべてがCGであっても不思議はない。模型の場合でも,砲撃の炎や噴煙は当然CG描写だろう(写真2)。空母・飛龍の炎上シーンもいい出来だった(写真3)。
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写真1 一見して模型かCGか区別がつかない。 |
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写真2 砲撃の炎や噴煙はもちろんCGによる描写 |
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写真3 炎上シーンは中盤のクライマックスの1つ |
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戦闘機の大半は今やCGだが,質感抜群のアップのシーンも登場する。Production Noteを見ると,空母・赤城の甲板上には原寸大の零戦二十一型が配されていたというから,写真4での何機かは実物なのだろう。全部CGでは,迫真の演技を引き出せまい。その他の戦闘シーン(写真5)も丁寧に作られていた。技術的には特筆すべきものはないが,一昔前の戦争映画と比べると,確実にリアリティが上がっている。限られた予算で大作を生み出す必要がある日本映画界において,CGコストの低下は大いなる福音だろう。
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写真4 甲板上に実物大の戦闘機を配し,プロペラや水柱は合成 |
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写真5 特筆するほどではないが,確実にCGの描写力は向上 (C)2011「山本五十六」製作委員会
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(画像は,O plus E誌掲載分に追加しています) |
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