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話題作り先行の感があるが,映像制作技術も秀逸 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
話題作である。2つの意味での話題作りで奏功した作品だと言えるだろう。まず,米国で徹底して内容秘匿,情報小出し作戦をとった。自由の女神の頭が吹っ飛んだ衝撃的なポスター,「J・J・エイブラムス製作」「08年1月18日全米公開」という情報しか流さず,題名もついていなかった。ようやくニューヨークの街が破壊される予告編映像が登場し,最後に「Cloverfield」なる意味不明の言葉だけが入っていた。どうやら,これがタイトルらしいと想像できた。それでも依然内容は不明で,インターネットで関連があるのかないのか,奇妙な情報を流し,「じらし作戦」も併用したようだ。 もう1つは,全編手持ちカメラによる撮影である。You Tube世代のための新感覚の映画という触れ込みだった。公開後,乗り物酔いのような症状を訴える観客が続出すると,それを逆手にとって,全米の公開館に「独特な撮影手法を用いているため,『クローバーフィールド』をご覧になる方は,ジェットコースターに乗った時のような乗り物酔いの症状を煩う恐れがあります」との警告文を出すという手際の良さだ。日本では,公開前から劇場内にこの警告文が貼られていた。これじゃ,ジェットコースター・ファンは観たくなること必定だ。観客からのクレームというのも怪しいもので,苦情を訴えたという事実を作るためサクラを大勢雇ったのかと疑いたくなる。 米国での路線を継承して,日本でも「試写会なし」の方針が貫かれた(米国では公開2日前にはあったらしいが)。それでいて,しっかりと宣伝資料だけは送りつけてくる。筆者もまんまとこの作戦に乗ってしまった。止むを得ず,公開日の4月5日(土)にシネコンまで足を運び,入場料を払って観ることにした。一体どんな観客が初日から観に来ているのだろうという興味からである。予想通り,若い男だけのグループが多かった。父子連れもカップルも結構いる。土曜日午後のシネコンなら,ま,こんなものだ。『AVP2』も構成は似たようなものだったが,客席の埋まり具合はこの映画の方がだいぶ上だ。 話題作りの仕掛け人は,プロデューサのJ. J. エイブラムスで,本欄では『M:i:III』(06年7月号)の監督として紹介したが,TVシリーズ『エイリアス』『LOST』の製作総指揮で有名なようだ。この映画の監督は,彼と旧知のパートナーのマット・リーヴス。こちらもTV界を中心に活躍するクリエータのようで,あまり馴染がない。主要なキャストもしかりだが,ドキュメンタリー調を強調するにはその方がいいのだろう。 さて,映像だが,実際によく揺れる。まともな映画を見慣れた目には,かなり疲れて不愉快にすら感じる。車酔いではないが,集中して観るのを妨げるほどだ。それも次第に収まってきて,物語を楽しめるようになる。慣れだろうか? いや,最初は激しい手ブレでハンディカメラを強調しておいて,徐々にマイルドで見やすい画面にしているのだろう。すべては計算ずくだ。ハンディカメラによる映画なら「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(99)をはじめ,低予算のドキュメンタリー作品には珍しくもないが,本作品の場合は,この揺れと視野の狭さを徹底してウリにしている。その方が恐怖心が増すという計算なのだろう。 この映画は,そんなに低予算映画ではない。手持ちカメラ撮影ではあるが,すべてが屋内外を実録した映像という訳ではない。かなりのシーンがグリーンバックで撮影され,そこに高層ビルやHAKAISHAであるモンスターの姿が垣間見える。そのVFXもかなり高度なものだ。以下,ネタバレを含むが,承知の上で読み進んで頂きたい。 まず,かつて「セントラルパーク,N.Y.」と呼ばれていた場所から回収された85分間の個人撮影のビデオ映像という設定だから,NYは破壊され,撮影者は死に絶えていると考えていいのだろう。また,邦題には「HAKAISHA」という副題があるから,何かモンスターが到来してNYの街が破壊されたことが想像できる。予告編にも少し登場していたから,全く秘密でもないのだろう。ところが,そのモンスターの登場場面が極めて少ない。チラリズムで恐怖心を煽る戦術のようだ。スチル写真ではクビのない自由の女神像(写真1)を露出しておきながら,その衝撃的な破壊シーンがある訳ではない。破壊された頭部が飛んで来るというシーンがあるだけだ(写真2)。 映画は,巨大な破壊者によって街が壊滅する様子とその大災害に遭遇した人々の人間模様を1本の記録映像を再生して眺めるという形式だ。騒然とする街の様子(写真3)は,実写だろうし,その部分は説得力もリアリティもある。問題なのは,こうした非常時で自分の命も危ない時に,離れた場所に行く彼女を救出に行く気になれるかだ。それは映画だからと百歩譲ったとしても,なぜ危険極まりない,歩くのもままならない救出行の一部始終を,ハンディカメラで撮影するのかという意義づけだ 。残念ながら,その点では説得力がなく,この映画を空虚な絵空事に見せてしまう。 |
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ドキュメンタリーを観ているような緊迫感はあるものの,視野が狭いので折角の大スペクタクルを広画角の迫力あるシーンとしては観られない。それでいて,音響効果は素人には実現できないプロの技で処理されているから,映像と音がアンバランスなのである。普通の派手なアクション映画,パニック映画を期待して行ったならば,その期待は裏切られる。いわゆる映画特有の間の取り方やカット割りを排除しているので,その点での面白さに欠けるのである。没入感という意味では,功罪相半ばすると言えるだろう。プラスマイナスの総和をとれば,この試みの全体では若干のプラスだろうか。 VFXの主担当は,Double NegativeとTippett Studioだ。それぞれ,ビルの破壊シーンやクリーチャー・デザインに関しては一流である。となれば,画質は意図的に落してあっても,VFXのクオリティが悪い訳はない。揺れる手持ちカメラにCGを合わせ込む3Dマッチムーブには,相当苦労したことは想像に難くない。頻出する夜のNYの街,傾いたビルや粉塵など,ほぼすべてデジタル技術による表現だ(写真4)。その他,ハンディカメラで救出ヘリから地上を見下ろした映像(写真5)など,これまでにない斬新なシーンも数多く見られる。映像表現としては,新境地を拓いた作品と評価できる。 映画終了後の観客の顔は,それほど満足感が高くなさそうだった。ハリウッド作品特有のカタルシスはない。業界関係者の評価は得られても,一般大衆受けはしないだろうというのが,筆者の感想だった。ところが,予想に反し,『映画ドラえもん/のび太と緑の巨人伝』を押しのけて公開週の興行成績No.1である。商業映画である以上,やはり話題作りは大切なのだ。海の向こうから国際市場を見抜いて,広報戦略を練っていたプロデューサの辣腕振り,ビジネスセンスに脱帽である。 |
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