コンピュータイメージフロンティア 特別編
千年紀末を越えて(その3)

映像新世紀はもう始まっている

O plus E, Vol.22, No.6, pp.754-764, 2000

1. プレステ2フィーバーの検証

 モナコでは話題にならず?
 なぜSFX映画にここまで注目するかの議論の前に,ビデオゲーム機の話題に触れておこう。
 Imagina 2000参加報告のたびに聞かれたのは,「プレステ2は話題にならなかったのか,海外での噂はどうだったのか」という問いである。実は,ほとんど話題にならなかった。SIGGRAPH 99のパネルでもそうだった(9910月号参照)ので注意深く聞いていたのだが,やはりその種の議論は起こらなかったのである。
 厳密には,この言葉を2度聞いた。2日目午後のゲーム関連のセッションで,司会者と講演者の1人から「最近の高性能家庭用ゲーム機,例えば,セガのドリームキャストやソニーのプレーステーション2などは……」といった感じでサラッと登場したただけである。話題にしたくてもそれだけの材料がなかった,というのが正しいだろう。CG映像の最新の話題ならくまなく探しているImagina担当者がこれを見逃すわけはない。当然招待講演の候補になっていたのだろうが,日本での出荷(3月)直前の大変な時期に気楽にモナコまで出かけている暇はないよ,と断られたのではないかと想像する。
 それにしても,この1年というものプレイステーション2(以下,PS2と略)に関する報道は凄かった。個人的にはビデオゲームの趣味はないのだが,CGや映像技術に関わる者として気にせざるを得ない。いや,あそこまでネットワーク時代の家庭用情報端末の本命といわれれば,無視できる企業経営者はいないだろう。少しフィーバーも収まったところで,本CIF流検証を試みることにしよう。

 巧みな広報戦略
 PS2のプレス発表199932日である1)。ゲーム業界に大きな衝撃が走ったのはいうまでもなく,翌週,CG関係者が多いISMR'99のコーヒーブレークでも恰好の話題となっていた。
 いま振り返ってみても,この発表は広報戦略の巧みさが浮かび上がる。業界関係者を招いて東京国際フォーラムで開催された発表会でのデモが秀逸であり戦略的だったようだ2)。「無数の毛玉や羽根が乱舞する」「夜の街を走るクルマのボディに多数の光源や風景が映り込む」といったデモ映像(写真1)は,有力ソフト・ベンダーを巻き込んで何種類も作られていた。時間をかけて作成したCG映像なら何の不思議もないレベルなのだが,なまじ家庭用ゲーム機の性能を知る専門家ゆえに「もうここまでリアルタイムで生成できるのか!」と驚愕したのである。


(a)多数の毛玉が空間に舞う

(b)疾走するクルマへの周囲映像の映り込み

写真1 PS2のデモ映像の例


 PS2を構成する基幹チップの性能は先に2月のISSCC 993)で公表されていた。新規開発のメインCPU(Emotion Engine)1050万トランジスタでPentium III950万より上,描画プロセッサ(Graphic Synthesizer)には4MBDRAMを混載というのも目を引いた。なるほど性能は最高水準ではあるが,本気で開発投資すれば十分達成可能な数値だった。「エモーション・シンセシス(情感生成)」なるキザなコンセプトは,CGのプロなら気恥ずかしくてとても口にできない。驚愕の余り声も出ない業界人を前に,それをサラリと言ってのけることに,広報のツボを心得ているなと感心する。
 加えてDVD再生機能,IEEE1394PCカードといったI/O機能等の充実により,これがゲーム機の価格でできたら他は太刀打ちできないと思わせた。1999年暮の発売予定は案の定2000年春にずれ込んだが,この間に熾烈なゲーム機の覇権争いで主導権を握っただけでなく,思惑通りに情報端末論議でも主役に躍り出た。

 否定派と擁護派
 さて,それから1年。発売前後の入手を巡っての大騒ぎは予想通りで,マスコミは早くから予定稿を準備したのかと思わせるほどだった。とはいえ,やはり気になるので渋谷Q-FRONTビル4)のTSUTAYAまで見に行った。ここにはデモ用にPS2が数台用意されていて,同時発売ソフトと共に一般に開放していると聞いたからである。
 若者たちが『リッジレーサーV』(ナムコ)や『ストリート・ファイターEX3』(カプコン)に興じているのをじっくり観察したが,ズバリ言ってそのクオリティには失望した。貼り付けたテクスチャの切り替えが目立つし,微妙なライティング計算や物理シミュレーションがなされているとも思えない。Imaginaで見たSGIPC用ゲームには比ぶべくもないし,1年前のデモ映像にも遠く及ばない。まだ当の『リッジレーサーV』のTVコマーシャルの方がよく見えたくらいである。テレビは解像度が悪い分,嘘っぽいテクスチャのアラが目立たなかったのだろう。
 この種の批判を口にすると,得たりと自説を得々と説いてくれるゲーム通が何人もいる。PS2の開発環境の遅れを論理的に指摘する否定派と,ムキになって弁護する擁護派に分かれるのが面白い。1億総ゲーム評論家とまでは行かないが,成人男子技術系高学歴者のかなりパーセンテージは無関心ではいられないようだ。
 否定派の一部は,「現状のビデオゲームの作り方はフェイクに過ぎない。バンプマッピング5)もアンチエリアシング6)も光源計算もまともにできていない。PS2はこれを解決するものでない」と言う。SGIの利用者,CGのプロほどそう主張する。たかがゲーム機と思っていたのに,本格的CGを売り物にし始めたことが感情的に許せないようだ。
 一方,PS2の肝であるEmotion EngineVLIW7)アーキテクチャを採用していることが,ソフト開発のハンデになると指摘する向きもある。確かにドリームキャストに比べてPS2のソフト開発は難しく,ライブラリの整備も遅れているようだ8)。PSは開発環境の良さでN64を凌駕したのに,今度は逆の立場にあるようだ。
 擁護派の一部は,そのソフト開発の難しさを認めた上で,それゆえにまだまだこんなものじゃなく,本格的PS2用ソフトの登場は今年の秋か冬からだと弁護する。サード・パーティ提供のミドルウエアが充実してきているというのがその理由だ。実のところ,PS2の詳細スペックや開発環境はデベロッパー契約しないと入手できないので,実態は良く分からない。表層的なマスコミ報道ばかりで,しっかりした評論がほとんどないのはこのためである。
 感情的擁護派は「ゲームに微細すぎるリアリティは要らない。ユーザはそんなものを望んでいないから,ゲームソフト会社も入れなかっただけだ」というが,それはひねくれた反対意見だろう。それならば,何故ああいうデモ映像で演算速度と表現力をアピールしたのだろうか。豊かな表現力を活かした作品が次々と登場し,それに慣れてしまえば,もはや過去のクオリティに戻れないことは,あらゆる映像メディアの歴史が証明している。最初のデモ映像は限界性能を駆使して巧みに演出してみせたが,同時発売のソフトは期限に追われてまだそのレベルにチューニング出来なかったというところが本音だろう。

 数十年に一度のお化け商品
 広報戦略の巧みさを割り引いても,PS2は驚くべき商品企画力で武装された製品である。発売後1ヶ月以内に100万台突破,計数千万台の販売が約束されている新製品なんて過去にあったのだろうか。瞬間的ヒットのCDや映画とは訳が違う。
 同時発売のソフトがあまり魅力的でないと分かったためか,発売が近づくとDVD再生機能が喧伝された。タイミングも良く,米国のDVDソフト市場の活況が伝わってきていた。「ゲームにはそう興味はないが,DVDプレーヤとしてなら」と買った中高年も少なくない。ゲームが出来ない言い訳かも知れない。かくして過去5年間のDVDプレーヤの国内販売累計約80万台を1ヶ月足らずで軽く突破した。
 通常の家電製品でもPCでも,類似製品をもつ競合メーカーが何社も存在する。思い切って高性能チップに投資できるのも戦略価格(\39,800)をつけられるのも,ゲーム・プラットフォームNo.1の次世代機ゆえのことだ。当初の開発費がかさんでも,ソフトのロイヤリティ収入で回収できることが約束されているからである。それなら,どんどん機能強化してライバルに水を開けるのが得策だ。そんな理由でDVD再生機能が付されたのでは,DVD専用プレーヤの開発者としてはたまったものではない。まさに数十年に一度のお化け商品だ。まったく,企業人としては脱帽である。
 PS2の1人勝ちでは面白くない,どこかから挑戦者は現れないのかと思っていたところへ,2月にマイクロソフトのX-BOXがアナウンスされた。いま新たにこの土俵に上がる(と宣言できる)のは同社くらいのものだろう。ビル・ゲイツ氏は,PS2が家庭の覇者となることを恐れたのだろうか。独禁法違反で敗訴したマイクロソフトが,この場合は挑戦者というのが皮肉だ。
 PS2の弱点を狙ってか,X-BOXでは開発ツールの充実が謳われている。X-BOXは言わばキーボードレスのPCだから,ソフト環境としてDirectX9)やWin32 API等が利用でき,PCソフト・デベロッパーに受け入れやすいことは理解できる。また,ハードウェア性能でもX-BOXが勝っているというが,ジャンケン後出しだから,半導体世代の差で数値的に上なのは当然だ10)。
 ゲーム・プラットフォームの覇権争いはまだまだ続くのだろうが,ユーザとしては描画性能が向上するのにあえて反対する理由はない。

 数は力なり 
 結局PS2フィーバーというのは,CIFシリーズの立場からすると何だったのかをまとめてみよう。デモ映像のリアリティで業界関係者を圧倒させることが出来たのは「家庭用ゲーム機にしては…!」の評価に尽きる。画質的にはSIGGRAPHの応募作品なら1世代も2世代も前のレベルであり,映画なら全く許せるクオリティですらない。実時間処理に限ってみても,ONYXでは当たり前のように達成されていたレベルである。
 驚きのほとんどは,テーマパーク,アーケード,PC,それから家庭用ゲーム機という序列が崩れたことに対してだろう。これは実行マシンの価格の順であり,これまでCGの描画性能にほぼ比例していた。家庭用でも,あれだけ台数が保証されれば,高性能チップで容易に追いつき逆転できることは理屈では判っていたことだ。数は力である。既にPCがミニコンやWSを駆逐したことからも明らかだったのに,具体的なスペックを聞かされ映像を見せられて,皆さんやっとこの事実を理解したのである。
 家庭用マルチメディア端末が,ゲーム機にも,ビデオ再生機にも,ネットワークを介したショッピング・ツールやコンテンツ受信機にもなることは,マルチメディア・ブームの初期から語られてきた。それを狙って情報家電なる領域に参入しようとして失敗したメーカも少なくない。話題先行だったこのジャンルも,ようやく実需と評価に堪えうる製品が登場し始めたということだ。
 X-BOXの参入宣言からは,プラットフォームの覇権争いを尻目に,これまで以上にブランド・ソフトを握るコンテンツ製作側の地位が向上することが感じられた。DVDがヒットすればするほど,ソフト重視の傾向が強まるだろう。その一方で,ゲームソフト製作には開発環境が大きな役割を果たすことや,資本力と技術力のない製作会社ではこの流れについて行けそうにないことも明らかになってきた。
 ビデオゲームは,特有のユーザ層と製作技法をもったまま市場を拡大してきた。百戦錬磨で100年の歴史を誇る映像産業界から見れば,その製作技術も経営もまだまだ赤子のようなものである。映像表現力が上がりユーザの目も肥えてくれば,コンテンツ制作に一層のプロフェショナル感覚が求められる。ゲームと映画の差が縮まれば縮まるほど,演出にも開発管理にも映画的手法が取り入れられることが予想される。

2.SFX略史:1980年代まで

 FX=イフェクツ
 では,本論である映像制作のSFX/VFX論議に移ろう。SFXSpecial EffectsVFXVisual Effectsの略である。Effectsの発音が似ていることから,ちょっと恰好をつけてFXと記されることが多くなった。SFXにはVisual Effects(視覚効果)の他にSound Effects(音響効果)も含まれるが,技術進歩が著しく話題を呼ぶのは圧倒的に視覚効果の方である。日本語では特撮(特殊撮影の略)と呼ばれることが多かったが,本質的に大きな違いはない。
 「特撮」と聞くと,ゴジラらウルトラマンのように,ラバースーツの主人公と怪獣がミニチュアセットの中で対決するシーンを思い浮かべる人っも少なくないだろう。確かに縮小模型の製作は今でも視覚効果技術にとって大きなウエイトを占めている。多額の製作費を費やすハリウッド映画では,縮小率を変えた何種類ものミニチュアが作られている。
 その他の伝統的なSFX技法としては,別撮りした映像を背面投影したスクリーンの前での演技,ワイヤーによる宙吊り,オプチカル・プリンタを利用した多重露光,精巧に描かれたマット画を遠景に利用,対象物を少しずつ動かしてコマ撮りするストップ・モーション,人形や動物を手動で操作するパペット等々が用いられてきた。この種のトリック撮影には,レンズやフィルムの選択,照明技術が深く関わっていて,撮影監督(Director of Photography)や美術監督(Director of Art)の領分であった。
 その伝統的な手法の中に,ブルーバックで撮影し後処理で背景映像を差し替えるクロマキー合成,カメラの移動をコンピュータ駆動するモーション・コントロール,パペットをリモコン操縦やプログラム制御するアニマトロニクス等の電子技術,コンピュータ技術が登場してきた。ここからさらに,コンピュータグラフィックスやディジタル合成・編集による視覚効果に至る過程とその意義を論じるのが今回の目的である。

 SFX教科書:2001年宇宙の旅
 米国映画撮影技術者協会が発行する月刊誌American Cinematographer11)(略称アメシネ)は創刊81年目を迎える。映画史100余年の中で,アメシネ誌創刊の1920年というのはハリウッドに巨大映画資本が独占的な地位を確立した時代である。この雑誌の現在のサブタイトルは,The International Journal of Film and Digital Production Techniquesである。撮影機材や照明装置から「ディジタル制作」への転身を明示的に宣言しているのが興味深い。
 一方,SFXの専門誌Cinefex12)は季刊で,2000年1月号(No.80)では創刊20周年を記念して業界の著名人にSFXの過去20の歩みを語らせた。Imaginaも今年20回目であったから同じ頃にテイクオフしたことになる。では,Cinefex誌の歴史が即ちCGやディジタル映像の歴史かというと,そうでもない。CGの隆盛はこの10年のことであり,初期の頃はまだ伝統的な特撮技術の紹介記事がほとんどであった。
 もう少し時間軸を戻り,表1に過去約40年間のアカデミー賞の視覚効果賞受賞作品をリストアップした。部門名は,昔はSpecial Photographic Effectsと呼ばれていたのが,やがてSpecial Visual Effectsに変わり,そして単にVisual Effectsを呼ばれるようになった。ただし,年によってはSpecial Achievement Award (Visual Effects)として表彰されたこともある。

表1 アカデミー賞(特殊)視覚効果賞受賞作品リスト

対象年 作品名 対象年 作品名

1961 ナバロンの要塞 1981 レイダース/失われた《聖櫃》
1962 史上最大の作戦 1982 E.T.
1963 クレオパトラ 1983 スター・ウォーズ/ジェダイの復讐
1964 メリー・ポピンズ 1984 インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説
1965 007/サンダーボール作戦 1985 コクーン
1966 ミクロの決死圏 1986 エイリアン2
1967 ドリトル先生の不思議な旅 1987 インナースペース
1968 2001年宇宙の旅 1988 ロジャー・ラビット
1969 宇宙からの脱出 1989 アビス
1970 トラ!トラ!トラ! 1990 トータル・リコール
1971 ベッドかざりとほうき 1991 ターミネーター2
1972 ポセイドン・アドベンチャー 1992 永遠に美しく
1974 大地震 1993 ジュラシック・パーク
1975 ヒンデンブルグ 1994 フォレスト・ガンプ/一期一会
1976 キングコング 1995 ベイブ
    2300年未来への旅 1996 インデペンデンス・デイ
1977 スター・ウォーズ 1997 タイタニック
1978 スーパーマン 1998 奇蹟の輝き
1979 エイリアン 1999 マトリックス
1980 スター・ウォーズ/帝国の逆襲  

 1960年代から70年代にかけて,いわゆる大作映画がずらっと並んでいる。特撮と意識せずに見ていた戦争ものも,大規模な戦闘シーンのどこかで特殊効果が使われていたようだ。最近の例では『プライベート・ライアン』(1998)の冒頭のノルマンディ上陸作戦シーンで,大型輸送船,ヘリコプター,海岸の兵士たちが,実写の映像にディジタル合成されていた。SIGGRAPH 99Electronic Theaterでそのメイキングを見て,初めてVFXだと分かった。もっとも,数十年前の特殊効果はもっと単純なものだっただろうが。
 SFものに特殊効果は不可欠で,『ミクロの決死圏』(1966)は造形も合成も見事だった。いまリメイクするとしたら,体内シーンはCTやMRIのボリューム・データにCGで描いた赤血球や白血球が合成されることだろう。さらに,この時代で特筆すべきは『2001年宇宙の旅』(1969)である。完全主義者のスタンリー・キューブリック監督らしく,宇宙船の模型も内部の造形も美術的に最高水準で,撮影技術やカメラワークも斬新な方法が採用された。ちなみに,古代で猿人が登場するシーンの幾つかは,背面投影でなく,ハーフミラーと前面投影による合成シーンの代表例として知られている。その他,多様なマット処理やストップ・モーションが用いられ,この作品は後のSFX映画にとって教科書の役割を果たした。

 SFXの革命児:スター・ウォーズ
 1970代前半は,当時全盛の「パニック映画」(英語ではdisaster film)が受賞している。今でもテーマパークのユニバーサル・スタジオには『大地震』や『キングコング』がアトラクションとして残っているところを見ると,アメリカの団塊の世代にとって想い出の映画なのだろう。
 続く時代でSFX史で大きな転機となったのは,言うまでもなく『スター・ウオーズ』である。この映画が他の映画人に与えた影響の大きさは,あえて語る必要はないだろう。技術的には,コンピュータ制御によるモーションコントロール・カメラの導入が特筆に値する。
 ジョージ・ルーカスの先見性は,1975年に自前のルーカス・フィルムを設立し,その一部門としてSFX専門のILM (Industrial Light & Magic)を作ったことにある。『スター・ウオーズ』の成功後は,それまで各映画会社の技術部門に属していた特撮技術者を積極的に集め,専門家集団として育成した。スター・ウォーズ3部作,インディ・ジョーンズ3部作の圧倒的な人気は,ILMSFX技術に負うところが大きく,6作品中5作品がアカデミー視覚効果賞を受賞している。受賞できなかった一作『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』(1989)の年は,同社の生んだCG史に残る意欲作『アビス』が受賞したのだから止むを得ない。
 同社のホームページで担当作品の一覧13)を見ると,次第にG・ルーカスやS・スピルバーグが関係しない他社の視覚効果も手掛けるようになり,独立SFXプロダクションとして作品数を増していることが分かる。その過程で,1980年の『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』から1994年の『フォレスト・ガンプ/一期一会』まで,1986年と1990年を除いて,14年に12回もオスカーを受賞している。Cinefex20年は,まさにこのILMの歴史と符合する。最近次々と生まれるVFXプロダクションの人脈は,ほとんどILMからのスピンオフに端を発しているといっても良いだろう。

 まだCG紀元前
  さすが年の功,古い映画のことはよくご存知ですね(笑)。
  いやぁ,かつての映画青年は制作技法のことなど考えず見ていたのですが,ほとんど全部見ていますね。作品賞は7割強なのに,視覚効果賞は9割以上です。特殊効果にお金をかけられるのは,大作に限られていたからでしょう。
  1980年以降は,やはり『スター・ウォーズ』の影響が感じられますね。でも,まだCGはほとんど使われていなかったのでしょう?
  デス・スターへの侵入経路の誘導に,ほんの少し線画表現が出てくる程度です。
  『スター・ウォーズ』をCG映画の原点のように言う人がいますが,間違いですね。
  1977年といえば,まだパソコンという言葉もなく,マイコンが登場したかしないかの頃です。とてもじゃないが,写実的なCGを描ける時代じゃないです。ILMの活動も,SFXは模型作りや光学的な合成が中心でした。
  ILM社の歴史は,研究室にあった『ジョージ・ルーカスのSFX工房』(1987)で読んだのですが,CGのことはほとんど書いてありませんね。
  原著は86年発行ですが,CGは最終章「デジタル映画:未来へのシナリオ」で少し出てくるだけですよ。
  本当に少しです。いまこの本を書き直すとしたら,この章だけで1冊か2冊になりますね。
  では,大飛躍の90年代を振り返ってみましょうか。

3.SFX略史:1990年代

 T2からジュラシック・パークへ
 CGの利用を前面に打ち出した映画として『トロン』(1982)があったが,話題だけが先行して,作品として見るべきものはなかった。この年のオスカー受賞作は『E.T.』,対抗馬は『ブレードランナー』でレベルが高かったとはいえ,視覚効果賞にノミネートすらされなかったことからも『トロン』の技術レベルが想像できよう。むしろ,この作品の不出来ゆえに,映画業界人に長い間CGアレルギーが残ったとも言われている。
 このアレルギーを払拭したのは前述の『アビス』(1989)であるが,もっと強くCGの威力をアピールしたのは,同じジェームス・キャメロン監督,VFXスーパバイザのデニス・ミューレンが作った1991年の『ターミネーター2(T2)だろう。液状金属ロボットT-1000の変幻自在さは,CGなしでは描けなかった属性で,『アビス』でCGの威力を実感したJ・キャメロンゆえの脚本である。写真2に示すようなモーフィングは,いま見ると稚拙きわまりないが,当時は斬新で新しい映像の香りを撒き散らしていた。


 『T2』は本CIFシリーズの第1期で取り上げたように(928月号参照),まさにマルチメディア時代の到来を感じた頃の作品である(思えば,これがSFX映画時評の原点である)。CG映像関係者の誰もが「ともかく,まずT2を見て下さい」と言っていたのを思い出す。この映画の大ヒットで,ディジタル映像新世代の幕が下ろされたといっても過言ではない。
 その影響が直接結びついたのが『ジュラシック・パーク』(1993)だろう。アニマトロニクスとCGの恐竜の使い分けも合理的で,それぞれの特性を活かしたVFXシーンは質・量ともに充実していた。CGの利用が,技術的にも興行政策的にも,大いに意味があることを確定させた作品としてSFX史に残ることとなった。
 90年代中頃には,CG用のワークステーションも急速に高機能化した。このため,コスト的に視覚効果としてCGを利用するのが得策である場合が増えてきた。いったん手の内に入れるとどんどん蓄積がたまり利便性が増すのが,ディジタル技術の特質である。映画やTVコマーシャルにおけるCGの利用はこうして急速に広まった。
 視覚効果としてのCGの利用作品が増えてくると,そのSFX/VFXとしての完成度よりも,一味違った使われ方が評価され受賞しやすくなる。大本命のなかった1995年はそういう年で,ILMの『ジュマンジ』,デジタルドメイン社の『アポロ13』を抑えてオスカーを手にしたのは,リズム&ヒューズ社の『ベイブ』だった。実写の動物の口の周りを3D-CG映像で置き換え,リップシンクさせて動物がしゃべっているかのように見せる技術が高く評価された。3月号で述べたように,この技術は後に「アニマルトーク」と呼ばれ,他の作品にも継承されている。

 実写と実写のディジタル合成
 伝統的なSFX技術の大半は撮影時点で完了するものだったが,クロマキー合成等の流行によりポストプロダクション(撮影後の後処理)の比重がが増してきた。実写とCGの合成は,実写映像をディジタル化しコンピュータ内で合成した後,処理済みのデータを再び生フィルムに焼き付けるので,これは後処理の典型例である。
 こうしたコンピュータ内での合成と焼き付けがコスト的にも見合うとなれば,次に試みたくなるのが,実写同士の合成である。95年5月号で取り上げたロバート・ゼメキス監督作の『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)は,古い報道用映像と俳優の演技を巧みに合成して話題を呼んだ。写真3は,過去の映像をもとに再現された大統領執務室の実写映像をベースに,ニュース・フィルムから切り取ったケネディ大統領とブルーバック・スクリーン前で演技するトム・ハンクスがデイジタル合成されている。この映画では他にも,大勢の群集をリンカーン・メモリアル前の広場に合成したり,ゲーリー・シニーズ演じるダン少尉の両膝から下を消す処理が印象的だった。


写真3 古い記録フィルムとライブアクションの合成
(『フォレスト・ガンプ/一期一会』より)


 これを手本として古い映像素材を活用することが続いたが,こうなると古い映像自身をディジタル処理で甦らせたくなる。スター・ウォーズ3部作の特別編(1997)は,ディジタル画像処理で雑音をとり,退色したフィルムの色調を復元した上で,新たなCG映像を合成していると話題を呼んだ(977月号参照)。どれくらい劣化していたかは知る由もないが,話題作りが巧みな割には,新規追加シーンは大したものではなかった。ILMにとってはほんの肩慣らし,ルーカス・フィルムにとっては『SWエピソード1(1999)から始まる新3部作の前宣伝に過ぎなかった。G・ルーカスの先見性は認めるが,最近はちょっとディジタル技術を宣伝に使い過ぎという気がする。

 競争激化,ILMの連勝ストップ
 CGは登場しないが,実写映像のディジタル処理の極端な事例としては,さる2月号で紹介した『カラー・オブ・ハート』(1998)SFX史に名を留めることだろう。
 90年代の後半では,『タイタニック』(1997)は質・量ともに圧倒的だったので,視覚効果部門でのオスカーも異論のないところだ。技術的には,モーション・キャプチャ・データの本格的な利用や水面の処理がSFX史に残るだろう。
 98年の『奇蹟の輝き』(997月号),99年の『マトリックス』(999月号)は,ともにマネックス・ビジュアル・イフェクツ社が主担当の作品で,まだ記憶に新しい。数あるVFX作品の中でのオスカー獲得は,ここでも技術の完成度より新しい感覚のVFXが好まれたものと思われる。
 こうしてみると,かつて常勝のILMはこの5年間視覚効果賞を受賞していない。95年以外はノミネートされたが,最終選考で破れている。それだけSFX市場も広がり,競争が激しくなってきたということを意味している。  

 デイズニー・アニメの復活
 視覚効果賞には該当しないが,別の流れであるCGを利用した長編アニメーションについても触れておくべきだろう。
 TVアニメ番組は日本製が世界中に広まっているが,劇場用長編アニメは長い間ディズニーのほぼ寡占状態であった。製作費の高騰からしばらく新作が途絶えていたディズニー流のアニメ映画は,コンピュータ技術を積極的に導入することにより90年代に復活を果たした。当初,セル・ステージのコンピュータ制御や彩色に使われていたコンピュータが,次第にデータ管理から映像の生成・編集にも使われ始めた。
 従来のセル画のタッチを残しつつ,『リトル・マーメイド』(1989)『美女と野獣』(1991)『アラジン』(1992)で試された3D-CG技術の利用は,『ライオン・キング』(1994)で一気に本格化する(9412月号参照)。これを支えたのはパートナーのピクサーが開発したCAPS (Computer Assisted Production System)である。ちなみに,ピクサー社はILMCG部門が切り離されて生まれた会社で,画像処理ハードウエア,レンダラー・ソフトの開発で試行錯誤した後,現在のようにCGアニメーション・スタジオとしての地位を確立した。
 その後,『ポカホンタス』(1995)『ノートルダムの鐘』(1996)『ヘラクレス』(1997)『ムーラン』(1998)『ターザン』(1999)と年1作のペースでこの系列の長編アニメが作られているが,CG利用とディジタル処理の比率は一作毎に高まっている。キャラクタはセル画タッチを踏襲しているため大きな変化はないように見えるが,10年前の作品と見比べると,キャラクタの動きや3次元的な前後関係から3Dモデルをもとにしていることが読み取れる。また,多頭数の動物の動きや背景画の精密さが著しく進歩しているのも,デイジタル技術ゆえの産物である。
 一方,フルCGアニメの長編第1作は『トイ・ストーリー』(1995)で,この成功により『バグズ・ライフ』(1998)『トイ・ストーリー2(1999)が生まれたこと,ディズニー・ブランドで配給されているが実質的な制作はピクサーであることは,この数ヶ月のSFX映画時評欄で述べた通りである。セル・キャラクタ調に比べて,このフルCG系列の方が技術進歩が如実に現れることは,容易に理解できるだろう。
 ディズニーをライバル視するドリームワークスSKGが,フルCG系で『アンツ』を,セル・アニメ調で『プリンス・オブ・エジプト』(1998)『エル・ドラド』(2000)を製作して対抗していることも前号までに述べた。このCG制作は,グループ内のPacific Data Image社が担当している。このライバルの存在が刺激になり,共にディジタル技術の活用が加速している。
 全編3D-CGの長編映画は,インドで『Sinbad: Beyond the Veil of Mists(1999)が作られ,フランスでは『Axis』が2001年公開をめざして製作中である。同じく2001年公開予定で,我が国の人気ゲームをCG映画化した『ファイナル・ファンタジー・ザ・ムービー』が進行中だが,ハワイで日米混成チームが制作しているというから,残念ながら純日本製とはいえない。
 ディズニーやこれに対抗するドリームキャストでは,従来のアニメの味を出すため,フルCGの場合でもアニメータが動きを付けてきた。これに対して,他ではモーションキャプチャを積極的に導入している。フルCG映画は,伝統的な映画作りに,ゲーム制作の感覚を持ち込み始めたと言えるだろう。

  4.映像新世紀はもう始まっている

 VFX市場の活況
 以上,駆け足でSFX映画の発展史を概観した。1990年代に入ってから,CGやディジタル処理技術が急成長したことが感じ取れるだろう。SFやオカルト・ムービーにSFX/VFXの表現力が魅力なのは当然だが,今や普通の映画でさりげなくディジタル合成が利用されている例も珍しくなくなった。本格的なロケをやらずに,コンピュータ内の合成に頼れるならコスト的にも引き合うからである。もともと,大道具や照明なども映像作りのために駆使されてきた職人芸であるから,コンピュータによる視覚効果がこれに加わったとしても何の不思議もない。Specialという形容詞が消え,単にVFXと呼ばれることが多くなったのもその表われだろう。
 老舗ILMのあとを追う形で,SFX/VFX専門のプロダクション(アメリカではスタジオを言うことが多い)も次々と生まれた。J・キャメロン監督が創設したデジタル・ドメイン,プロデューサのR・エメリッヒのセントロポリスFXなど自前のプロダクションを持つ動きがあるかと思えば,ディズニー系列ではDream Quest ImagesとDisney Feature Animation,ソニー・グループのコロンビア映画やトライスター映画はSony Picture Imageworksなどメジャー系も復活してきた。コダック系列のCinesiteや英国のComputer Film Companyも,映像編集中心からCGによるVFXへと急旋回してきた。ジョン・ヒューズ氏のリズム&ヒューズ,フィル・テペット氏のテペット・スタジオ等の独立系も数多くの作品に参加し,企業規模を拡大している。
 1つの作品の視覚効果を1社で担当するのでなく,複数社で分業することも日常茶飯事になった。それだけ分量的にも増えたということもあるが,信頼できるプロダクションがいくつも存在するということだ。撮影時にすべて立ち会うのではなく,後処理なら別々に発注できるというメリットもある。ネットワークで繋がっていれば,遠隔地でも構わない。コスト低減のため,ハリウッドが欧州や豪州のプロダクションを利用し出したのは,VFX市場にもビジネスの競争原理が導入され始めた証拠だろう。ここに日本のCGプロダクションの名前が出てこないのが淋しい。

 クリエータ予備軍が続々と
 90年代の急成長をもう少し詳しく見れば,後半の5年間でもう一段加速していることに気づく。フルCGの『トイ・ストーリー』が生まれ,ILMがオスカーを逃した1995年がその節目だろうか。新世紀を待たずに,映像制作が新たな道具を手にした5年間といってもよいかと思う。そういえば,リュミエール兄弟の映画が誕生したのが1895年であるから,映画史の中では丁度新世紀に入っていたわけである。ここまで書き進むまで,これには気がつかなかった。
 この流れを助長したのは,いうまでもなくコンピューティング・コストの急速な低下である。マルチメディア・ブームとともに,ディジタル映像機材が手軽に入手できるようになったこともプラスに働いた。Softimage 3DAlias|Wavefront社のMayaなどCG生成ツールが充実したことが生産効率を上げるのに大きく寄与したと考えられる。
 この映像新世紀の始まりは,後年インターネットの普及と軌を一にするしていると見なされるかも知れない。さすがにそこまで結びつけるのは無理がある。SFX映画と電子メールやウェブページでは,技術的距離が遠すぎて直接の因果関係は見つからない。と思ったのだが,何段かの間接的な要因を経て繋がっているのかも知れない。
 例えば,WWWの突然の登場により,マルチメディア・ソフト製作業界は大きな市場を手にした。ホームページの充実とともにディジタル・クリエータたちは引っ張りだこである。CG映像プロダクションから流出した人材はゲーム業界に流れ,さらにウェブ・コンテンツ制作へ移っているという。その一方で,マルチメディア・スクールやCG専門学校や美大に通う若者が急増している。流出を補う以上にディジタル・クリエータ,ディジタル・アーティストの予備軍が育ち,層が厚くなっているのである。これは,洋の東西を問わず同じ傾向のようだ。技術的に最高峰のSFX/VFXを頂点に,ゲーム,ウェブページという映像コンテンツのピラミッド構造が出来つつあるように感じられる。

 上昇スパイラルに魅せられて
 この10年来コンピュータイメージの最前線を探索してきたが,今最も技術的に旬であり,これから他分野に影響を及ぼしそうなのがSFX/VFX分野であると感じる。年々技術が向上し,優れた成果が注目を集め,それを乗り越えんとライバル達が競い合って新しい技術が生れる。State-of-the-artを体得した技術者がスピンオフして新しいグループを作り,そこから競争が始まることで業界全体がレベルアップする。この好循環,上向きのスパイラルが明確に感じられる。
 職人芸に過ぎなかった世界で,ツールの整備と技術の蓄積が行われている。CGの技術体系をマスターした上で,ディジタル画像処理はもう当たり前,最近ではコンピュータビジョンも積極的に使われ始めた。例えば,実写の自然景観からの3次元形状の復元はComputational Stereoの主対象であり,実写映像とCGの合成のためのカメラパラメータの抽出(3Dマッチムーブと呼ばれている)はStructure from Motionの応用問題である。Dr.SPIDERにとっては,この種の実利用の成果が目の当たりに見られるのはとても嬉しい。若干残念なのは,学界が情報源でないので文献情報が乏しく,動向を正確に読み取りにくいことだろうか。
 いまディジタル映像分野で,これだけ充実した上昇スパイラルを見つけられるジャンルは他に見当たらない。ゲーム業界は覇権争いが先で技術体系の整備は二の次であるし,インターネットは最近商取引の話題ばかりで,技術者の魂に訴えかけるものがない。
 SFX/VFXで培われた技術は,必ずやゲームソフトやウェブ・コンテンツの世界に波及して行くことだろう。人の流れとツールの普及の両方で上述のピラミッド構造が存在する以上,その頂点から裾野へと広がることは必至である。前回エンターテインメント・コンピューテイングの必要条件は「こだわり」であると書いたが,SFX/VFX業界は上流水源としてこの「こだわり」の資質を充分残している。21世紀の新映像産業,エンターテインメント産業の次世代を探りたいなら,SFX/VFXの今を見ておくこと。これが,本CIFシリーズが出した現時点での結論である。

 未来へのシナリオは自由に
  なるほど,これで毎月せっせと試写会に通っている理論武装ができましたね(笑)。
  エンターテインメント・コンピューテイングの第2法則は,自ら楽しんで目を肥やすことです(笑)。
  インターネットでかなりの情報が取れるようになったのですが,メイキングの詳細までは公開してませんね。業務用試写会も早く見られるのは有り難いのですが,何度も見られないのが辛いところです。
  そういう意味では,DVD版のボーナスとしてにSFXメイキングが入ってくる傾向にあるから,後で勉強するにはこれが役立つでしょう。
  繰り返して見られるし,本編とも比べられて確かに便利ですね。
   ところで,映像新世紀はもう始まっているとのことですが,今後SFX/VFXはどういうふうに進歩して行くのでしょうか?
  『SWエピソード2』はフルディジタルで制作すると宣言されているように,フィルムレスの方向にどんどん進むでしょうね。となると,ロケやオープンセットで撮影せず,コンピュータ内のディジタルセットでの合成や加工がますます進む可能性があります。ライティングや色調の調整もそれに見合った方法が発達するでしょう。
  まるでゲームのような仮想空間で映画を作る感じですね。
  監督は,ゲームのようなインタラクティブ環境でアングルを変えたり,時には平気でタレントの顔をすげ替えるかもしれません(笑)。 
  今でもフルCGでシミュレーションして,予め実写とCGの絡みを試しているようですね。
  我々の複合現実感技術を用いれば,リハーサルだけでなく,主演俳優は自分の目でCGタレントを見ながら演技をくり広げられますよ。
  タレントさんも,何もないところで格闘したりCG相手に愛をささやいたり大変ですね(笑)。一時期バーチャル・タレントが騒がれましたが,本当に人間の俳優に取って替わりますかね?
  全くのバーチャル俳優より,実物を真似るほうが楽ですよ。技術的には,もう相当リアルに本物の俳優そっくりに表情を作れるみたいです。動きもモーションキャプチャを利用すればいいから,もうすぐそういう話題が出てくるでしょう。
  クローン人間のように,亡くなった俳優を甦らせることもできますね。
  人気俳優は若いうちに,3Dモデルや表情のテクスチャ・データを撮り溜めておけば,年を取ってからも若い役がやれます。
  老け顔はメイクアップで作れますから,若くするのにその方法は有効ですね。
  となると自分のデータを持っていれば,カラオケ並みに,自分がヒロインとして劇中に登場する映画も作れますよ。これは,カラオケじゃなくてカラシネかな。あるいはプリクラならぬ,シネクラ(笑)。
  じゃ,なるべく若い時の顔で登場しましょう(笑)。
  映像表現力のアップは手段に過ぎないけど,こうして楽しいことも色々考えられるでしょう。映像新世紀はディジタル技術で何が起こっても不思議じゃありません。各自が自由にイマジネーションを働かせることが,進歩に繋がると思います。
  さっきの本にあった「デジタル映画:未来へのシナリオ」という最終章の題名は,まだまだそのまま使えそうですね。

用語解説とURL

1) http://www.scei.co.jp/dearscei/pr/990302a.html
2) http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/990304/kaigai01.htm
3) ISSCCIEEE Internationl Solid-State Circuits Conference.集積回路の最新技術が発表される国際会議。
4) Q-FRONTビル:東京・渋谷駅前のハチ公前広場の対面にできた商業ビル。レンタルビデオ・ショップ,インターネット・スクール等が入居している。http://www.qfront.co.jp/
5) バンプマッピング:テクスチャ・マッピングの拡張で,法線ベクトルの方向を利用して陰影を付加する。本来凹凸の有る表面のテクスチャに向いている。
6) アンチエリアシング:ディジタル画像で線分や多角形を表現した時に見えるギザギザした表示(エリアシング)を回避するための処理。標本点の面積割合による輝度調節やサブピクセルの導入等,様々な方法が提案されている。
7) VLIW: Very Long Instruction Word.並列演算の1方式で,同時実行可能な複数の動作をまとめて長い一語長命令とする。柔軟性のある高速化方法として最近流行だが,その機能を引き出すにはプログラミングやコンパイラが複雑になる。
8) http://www.zdnet.co.jp/news/0004/21/ps2.html
9) DirectX: ウィンドウにおけるマルチメディア処理用APIの総称。DirectDrawDirectSoundDirect3D等が含まれる。PC用のゲームのほとんどはこのDirectXを利用して作られている。
10) http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/20000417/kaigai01.htm
11) http://www.cinematographer.com/
12) http://www.cinefex.com/
13) http://www.ilmfan.com/what/