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O plus E誌 2019年5・6月号掲載 |
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『レプリカズ』
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(リバーストーン・ピクチャ
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(C)2017 RIVERSTONE PICTURES (REPLICAS) LIMITED.
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オフィシャルサイト[日本語][英語] |
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[5月17日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開中] |
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2019年3月26日 GAGA 試写室(大阪)
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(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています。) |
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B級SFでデザイン的には平凡だが,物語は楽しい |
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| 本号は,メイン欄,短評欄ともに盛り沢山だが,敢えてもう1本メイン欄で語っておきたい。B級SF映画で,VFXのクオリティもそう高くないのだが,このSFテーマに対する他の映画評論家たちのしたり顔の批評が気にくわない。そこで,せめて当欄は支持側に回り,応援演説をぶってみようという訳だ。
テーマはクローン技術で,それも受精卵レベルで遺伝子を移植してクローンベビーを作る話ではなく,対象となる成人から意識や記憶まで完全に移植し,同年齢の人間を丸ごと複製するというのがミソだ。生命科学に加えて,最先端の脳科学研究の成果を盛り込むという位置づけである。勿論,全くのフィクションでこんなクローニングは実現できない。クローン羊が誕生して20年以上になり,猫,馬,猿等での生成成功例は報告されているが,クローン人間は未だ成功していない。
本作では,上記の記憶転写までが完成間近であるが,交通事故で家族を失った神経科学者が暴走し,法規制や生命倫理を無視して家族を復活させる……といった筋立てである。この科学者を演じる主演は,キアヌ・リーブス。『マトリックス』シリーズ当時ほどの売れっ子ではないが,最近では『ジョン・ウィック』シリーズなどで存在感を増し,人気も復活しつつある。そして何よりも,こうしたSFものの主人公はよく似合う。
監督は,『デイ・アフター・トゥモロー』(04年7月号)の脚本を担当したジェフリー・ナックマノフ。監督としてはこれが4作目となる。助演陣は,科学者ウィリアムの妻モナ役にアリス・イヴ,助手エド役にトーマス・ミドルディッチ,厳しい上司ジョーンズ役にジョン・オーティスといった布陣だが,いかにも低予算B級映画らしい人選だ。モナ夫人役のA・イヴは美人ではあるが,表情に乏しく,まるでマネキン人形のようだ。クローン人間として蘇った時に人工的な感じを出すために,意図的に彼女を選んだのだろうか?
ずばり言って,この映画は面白かった。B級SFやホラーは多々あるが,エンタメとしては上々で,結構楽しめた。所詮絵空事であっても,成人のクローン生成は瞬時には出来ず,17日間要するとか(写真1),途中で停電しないよう電源確保に苦労するとか,老化を遅らせる方策,記憶を一部消す操作等々,もっともらしい理屈が付されている。SF映画には,この種の屁理屈が必要だ。
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写真1 この武骨なポッド内で,17日間かけてクローン人間を醸成する
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| そう感じながら試写を観終えた後に確認したら,何とRotten TomatoesのTomatometerはたった10%だった。さすがにそんなに酷い作品ではない。50%はあってもしかるべきレベルだ,批評家たちのコメントは辛辣で,クローン技術の危険性,生命倫理上の問題ばかりを指摘し,こうした映画の存在自体を否定している。そんなに真面目に目くじら立てて揚げ足をとるほどのことか? あらゆる映画を褒める訳には行かないので,SFは否定的評価の格好の対象となる。同じレプリカント映画でも,『ブレードランナー 2049』(17年11月号)のように哲学的香りを振りかければ,彼らは高評価するのだろう。
科学者の暴走というが,警察官のモラルを無視してマグナム銃をぶっ放す荒くれ刑事もいれば,業務を放り出して恋人や家族の救出を優先する消防士や救助隊員も多々いたぞ。自分の家族を実験台にするのは,ジェンナーだってやっていた。本作の主人公は,誰も傷つけてはいない。せいぜいバッテリーの窃盗,会社の実験機材を私的利用,家族とはいえ一応死体遺棄の罪がある程度だ。エンタメなら,これくらいは軽い,軽い(笑)。
という風に精一杯庇った次第だが,以下はいつもの当欄の視点での論評である。
■ B級低予算映画らしく,最先端技術の研究所なのに設備はさほど斬新ではなかった。一流のデザインでないためだが,それでも短評欄の『パラレルワールド・ラブストーリー』よりは少し高級だった。主人公が装着するゴーグルは2種類あり,片方は目からの神経情報抽出用(写真2),もう一方はAR表示する光学シースルーHMDである。いずれも最近のHMD市場での市販品のデザインの域を超えていない。このARゴーグルで眼前の空間に描かれるグラフィック表示を利用して意識や記憶の転写を行なうが(写真3),そのCG表示は合格点である(写真4)。15年前なら絶賛しただろうが,現在では平均レベルだ。
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写真2 この頭部装着装置で,目から神経情報マップを抽出する
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写真3 光学シースルー型ARゴーグルを装着し,ジェスチャ操作で意識や記憶の移植作業を行う。
マイクロソフト社のHoloLensを意識したデザインか?
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写真4 クローン脳内へのインプリント操作。グラフィック表示は,まずまず合格点。
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■ さらに,クローン人間に対してではなく,合成ボディに人間の意識や記憶をインプリントするシーンが登場する。この合成ボディも一種のクローンであるから,もう少し人間らしい風貌でも良かったのに,いかにもメカ的なロボットだ(写真5)。せめて『エクス・マキナ』(16年4月号)のレベルであって欲しかったが,これじゃ15年前の『アイ,ロボット』(04年9月号) のデザインからほとんど進化していない。少し残念だ。
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写真5 いかにもメカっぽいロボットのデザイン。15年前の『アイ,ロボット』(04)を思い出す。 (C)2017 RIVERSTONE PICTURES (REPLICAS) LIMITED. All Rights Reserved.
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(画像は,O plus E誌掲載分に追加しています) |
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