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plus E誌 2013年8月号掲載 |
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『ザ・タワー 超高層ビル大火災』
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(CJエンタテインメント
/ツイン配給) |
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(C) 2012 CJ E&M CORPORATION.
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オフィシャルサイト[日本語][英語] |
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[8月17日よりシネマート新宿ほか全国順次公開予定] |
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2013年6月17日 GAGA試写室(大阪)
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(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています。) |
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ハリウッドに負けじと韓国映画とロシア映画が奮闘 |
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| もう2本パニック系の作品を紹介しておこう。このジャンルは,圧倒的リアリティを誇るハリウッド製大作が世界市場を席捲しているが,それに対抗して作られた韓国映画とロシア映画である。それぞれの国でのトップVFXスタジオが実力目一杯のCG技術で奮闘し,見応えある作品に仕上げている。
もう1つ共通点がある。緊迫感で殺伐となりがちなストーリー展開の中で,いずれもユーモラスなコメディ・タッチの場面が何度も登場する。さらに,しっかりラブストーリーも描き切っている。それも,一方は一人娘を抱えたシングルファーザーが職場の憧れの君を射止めるのに対して,もう一方は戦争で夫を亡くしたシングルマザーが,一人息子の救出のため戦場を突破する過程で,現場の指揮官と心を通わせる,といった対称形である。いずれも,主演女優が美形なのがいい。やはり映画はこうでなくちゃいけない。
前掲の『パシフィック・リム』の最大の不満は,菊地凛子が重い役に選ばれておきながら,相棒と恋愛関係に発展しないことだ。2人で心を合わせて巨大ロボットを操縦するのなら,当然,その出陣前夜には密接な男女関係になっておくべきだろうに……(笑)。
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CG/VFXはまずまずだが,火と水の特撮が出色 |
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| まず,韓国製の『ザ・タワー 超高層ビル大火災』は,その副題通り,448mの高層ビルの火災がテーマである。「『タワーリング・インフェルノ』を越えたパニック・スペクタクル」というキャッチコピーだが,映画ファンの誰もが知る1974年製作の映画を相当に意識している。パニック映画(Disaster Films)の最高峰と評価が高い作品だ。その後何度もTV放映され,最近はDVDに加えて,Blu-ray版の販売,レンタルも行われている。今観ても十分通用する名作だという証拠だろう。まだCGなどない時代で,旧来の特撮技術が結集され,アカデミー賞では撮影賞,編集賞等を受賞している。
2大スター,スティーブ・マックイーンとポール・ニューマンの競演が話題で,それぞれ消防隊長とビルの設計技師を演じていた。新旧スター達をちりばめたグランド・ホテル形式のオールスター映画で,当時の人気TV番組の主役であったロバート・ボーン,ロバート・ワグナー,リチャード・チェンバレン等が,いずれも身勝手で不誠実な役か悪役として登場していたのが,今でも強く印象に残っている。
その傑作に張り合うため,本作も韓国映画界の実力スター達を集めている。主演の消防隊長カン・ヨンギ役のソル・ギョングは,彼を慕う副士長ビョンマン役のキム・イングォンと共に,既にパニック映画『TSUNAMI-ツナミ-』(09)でお馴染みだ。美形のフードモール・マネージャーのユニ役には,『私の頭の中の消しゴム』(04)のソン・イェジン。大火災の中で奮戦し,彼女を射止めるのは施設管理チーフのデホ(キム・サンギョン)というのが,主な登場人物である。何やら,S・マックイーンとP・ニューマンの役柄に似ている。
対象となる高層ビルは,韓国のマンハッタンと言われるソウルの汝矣島に聳える108階建の「タワースカイ」で,5,700人が居住し,最上階にレストランがあるツインタワーという想定だ(写真1)。『…インフェルノ』の「グラスタワー」は138階建だから,その点では越えていない。ただし,グラスタワーは単独ビルであり,ツインタワーではなかった。
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写真1 舞台となるツインタワーのキービジュアル(上)。CGで描いて,漢江沿いの光景に合成(下)。
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| 天候不良の中,派手な演出を望むタワースカイ会長の手配したヘリがビルに激突し,爆発したことから,火災が発生する。やがてこのビルは倒壊するが,WTCの倒壊を同時体験した我々には理解できても,1974年の映画では想像すらできないシーンだろう。この爆発炎上,倒壊,70階の連絡通路の滑落,窓から炎が噴き出す表現等々は,いずれも良くできていた。CG/VFXの担当はDIGITAL idea社で,150人のCGクリエーターが約1,700カットのVFXを仕上げたのは健闘と言っていいだろう。それでも,クライマックスのボリュームはハリウッド作品には敵わない。むしろ,CG表現よりも,旧来のSFX技術による炎と水の表現が優れていると感じた(写真2)。日本の映画界で,ここまでできるだろうか? | |
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写真2 火炎と大量の水の表現は,なかなかの迫力
(C) 2012 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED
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変身ロボットとロシア軍の銃火器の対比が面白い |
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もう一方の『オーガストウォーズ』は純然たるロシア映画だが,英題は『August 8th』であるように,2008年8月8日の8並びの日の出来事で,実際にあったグルジア軍とロシア軍の戦闘を題材にしている。最大のセールスポイントは,ロシア軍の全面協力の下,実際のスホーイ25戦闘機,T-72戦車,Mi-24ハインド攻撃ヘリ等が登場し,銃撃戦に登場する機関銃や狙撃銃の大半は本物が使用されているという。軍事オタクには,たまらない魅力だろう。パニック映画というより,戦争スペクタクルに分類すべきかも知れない。
そうでありながら,映画の冒頭では,いきなりCGによる戦闘ロボットが登場する(写真3)。これはビデオゲーム中の映像であったが,その後も5歳の少年チョーマは,巨大ロボットが変身し,激しい戦闘を繰り広げるシーンを再三目にする。『トランスフォーマー』シリーズ,『パシフィック・リム』,日本のロボットアニメとは一味も二味も違う斬新なデザインというのが,配給会社の触れ込みだ。確かに,少しデザインは違うが,変身のアイデアは,やはり『トランスフォーマー』あってのものだろうし,それをロシア映画でもやってみせたことに,国内のファンは狂喜乱舞したことだろう。
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写真3 少年の想像上の産物であるロボットたちの変身は,まさにトランスフォーマー風
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| CG/VFXの担当はメイン・ロードポスト社で,ハリウッド映画『ウォンテッド』(08年9月号)にも参加経験があるという。市街地での戦闘シーンは,大型セット内での爆発や破壊と,CGの両方を使っているのだろう。間近に見る本物の戦車の迫力は大したもので,これまでに観たどの戦争映画よりも生々しかった(写真4)。それが多数の戦車(写真5)や戦闘機となると,やはりCGでの描写だろう。『ザ・タワー…』のDIGITAL idea社同様,こちらも大健闘の部類だが,やはりクライマックスのこれでもか感はハリウッド作品の敵ではない。
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写真5 これだけ多数となると,やはりCG製だろう
(C) 2011 Glavkino. All Rights Reserved
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監督・脚本・製作は,ロシア映画界の俊才ジャニック・ファイジエフ。主演はチョーマの母クセーニアを演じるスペトラーナ・イヴァーノヴナで,必死で子供を探し求める健気な母親役が良く似合っていた。
ロシア映画と言えば,まず堅苦しいトルストイ作品の映画化が思い浮かぶが,こうした戦争アクションとSFを組み合わせた娯楽作品を生み出すとは想像もしなかった。ある意味での驚きは,戦争の日常感である。日本人にとっての戦争映画は約70年前の昔の出来事の描写であり,アメリカ映画の現代の戦争は,中東やアフガンを舞台にした外国での出来事だ。それに対して,(小さな戦闘とはいえ)ロシアではこんな身近なところで戦争が起こり,民家が壊され,一般人も巻き込まれている。
ロシア軍の装備,軍隊生活の様子なども,こうして身近に観るのは初めてだ。政府首脳の会議の様子なども興味深い。ハリウッド映画が想像で描くロシアとは一味違う。それにしても,最近の軍隊では,戦場近くから兵士が自宅に携帯で電話するとは,別の驚きだった。
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(画像は,O plus E誌掲載分に追加しています) |
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