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plus E誌 2012年12月号掲載 |
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(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています。) |
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50周年記念に相応しい大力作,ボンド映画のベスト1 |
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| 映画史上最長シリーズで,今年はその生誕から50周年だそうだ。作品数でなら『男はつらいよ』シリーズが最多の48本のギネス記録だが,製作年は1969年から1995年までの37年間に過ぎなかった。こちらは,主演俳優を入れ替え,6代のジェームズ・ボンドで,これが23作目である。先日のロンドン五輪開会式のPVまで入れれば24作目と言えるかも知れない。タイミング抜群で放映の,あの映像には驚いた。エリザベス女王本人が登場し,バッキンガム宮殿で本当に女王の部屋で撮影したというから,英国王室の開かれ振りにも感心する。おまけに,開会式上空のヘリからの飛び降りが,まさに本作のタイトルを象徴していて,宣伝効果も絶大だった。どうせならいっそ,女王陛下夫妻の入場時にも,臣下の007号を随伴させれば良かったのにと思う。
勿論,過去22作はしっかり全部観ている。第1作『007は殺しの番号』(62)の公開時には,筆者はまだ高校生であったことは以前にも書いた。第2作『007 危機一発』(63)が凄く,これで大ブレイクした。当時まだ珍しかったアタッシュ・ケースが飛ぶように売れた。中高生で,各学年の7組や,名簿番号で7が付く生徒は皆,あの拳銃型のイラストを描いたものだ。
シリーズ全体を思い出してみると,3代目ロジャー・ムーアと4代目ティモシー・ダルトンの頃は,凡作続きでマンネリだったと感じる。脚本はお手軽で,物語展開にリアリティはなく,それでもそこそこヒットするから,惰性で作っていたとしか思えない。それが一転引き締まったのは,5代目ピアース・ブロスナンのシリーズからで,Mを女性上司にしたのも意欲の表われだった。当欄が取り上げたのはその3作目からだが,その頃からCG/VFXが多用され,アクション・シーンのレベルアップと重厚感を醸し出すのに貢献している。
本作の監督は,『アメリカン・ビューティー』(99)のサム・メンデス。50周年記念に相応しく,初のオスカー受賞監督のメガホンである。この起用は大正解で,映画の品格がかなり上がった。文芸調を気取る訳でもなく,難解でもない。製作陣は『ダークナイト』シリーズの成功を意識したというが,その路線の選択も成功している。文句なく,これまでの23作のベストであり,当欄の今年のベストは『ダークナイト ライジング』と本作のいずれにしようかと迷っているくらいだ。
ボンド役のダニエル・クレイグ,M役のジュディ・デンチ等,主要キャストはそのままだが,本作ではMの存在感が大きく,ボンドとの信頼関係も物語の鍵となっている。若い新Q役にベン・ウィンショー,Mの上司の国防委員長マロリー役に名優レイフ・ファインズが配され,噂によると新しいマネペニー嬢も登場するという。ボンドガールは,ベレニス・マーロウとナオミ・ハリスの2人だ。そして極め付けは,敵役シルヴァ役のハビエル・バルデムで,元MI6秘密諜報員でMに深い恨みをもつ男を『ノーカントリー』(08年3月号)の殺人鬼以上の迫力で演じる(写真1)。悪役がいい映画は,作品も引き締まるというが,その典型だろう。
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写真1 本作のヒールは,ハビエル・バルデム演じる元MI6秘密諜報員のシルヴァ |
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以下,CG/VFX解説を含む,感想である。
■ お馴染みのオープニング・シーケンスで敵と激しく戦うシーンから,CG/VFXは全開だ。イスタンブールのグランドバザールでのバイクチェイス,列車の上での格闘は,目新しくはないが,しっかり描き込まれている。そして,Mの命令で007が狙撃され,90m下の川に落下し,水中に没する過程もVFXの出番は続く。主担当は,英国のMPCで,プレビズも同社内の部門がこなしている。その他,Cinesite, Peerless Camera, Lola VFX, NVisible, Double Negative等が参加している。
■ 物語の落ち着きとともに,CG/VFXの出番も減るが,MI6本部の爆発,地下に作られた新MI6の描写あたりから,徐々に利用率も加速する。大きく空いた穴への地下鉄列車の陥没,ヘリの墜落,終盤のスコットランドでの攻防,スカイフォール邸の銃撃・爆発炎上では,再度全開し,迫力も一段とスケールアップする。
■ 定番乗り物は,バイクは最新のCRF250Rだが,ボンド・カーは懐かしのアストン・マーチンDB5を復活させているのが嬉しい(写真2)。小道具は,ボンド専用のワルサーPPK/Sで,なぜ専用なのかの仕掛けが楽しい(写真3)。そして,どのシーンでも,スーツ姿が見事に決まっているのが印象的だ。
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写真2 冒頭で登場するのは最新のホンダCRF250R。後半登場するのは,想い出のアストン・マーチンDB5。
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写真3 そして,007専用のワルサーPPK/S……。どう専用なのかは,観てのお楽しみ。 |
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■奇妙奇天烈な武器や仕掛けはなくなり,リアリティが増し,ビジュアル面でのセンスの良さも目立つ。シルヴァの逮捕後の,新MI6内での拘置場所は六角柱のガラス張りで,そのデザイン・センスに感心した(写真4)。新しいQが若く,PCオタクっぽい感じにはボンド自身も驚いていたが,ネット時代のQにはそうした新技術の素養も必要だ(写真5)。
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写真4 六角柱ガラス張りの拘置所とは,クールだ! |
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写真5 後の大型ディスプレイは,Sony製の4Kモニター? マグカップにも注目。
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■ ビジュアル面で特筆すべきは,外光や灯り等々,照明デザインの見事さだ。特定のシーンだけでなく,ほぼ全編を通じて,光の使い方が素晴らしい。写真6のような何気ない光景から,ロケ地各地の夜景まで徹底した凝りようである。とりわけ,マカオのゴールデンドラゴン・カジノのシーンは圧巻だ。爆発シーンもただものではない。私がアカデミー会員なら,美術賞部門は本作の照明デザイナーに投票する。
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写真6 全編にわたり,光と照明の演出が秀逸。その一部は,ポスプロでのデジタル加工が寄与している。
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■Mの存在感が大きいのに対して,本作はボンドガールが今イチ冴えない。ボンドのアシスタントで再三登場するイヴ役のナオミ・ハリスは,さして美人とも思えない(写真7)。最後になって,フルネームが語られる。うーん,そうなら仕方ないか。だったら,レイフ・ファインズ共々,次回作以降も登場してくれなきゃ困るよ。
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写真7 ボンドガールとしては今イチだが,実は……
Skyfall (C) 2012 Danjaq, LLC, United Artists Corporation, Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved.
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(画像は,O plus E誌掲載分に追加しています) |
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