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plus E誌 2012年12月号掲載 |
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(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています。) |
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幻想的な白黒3D上映で,バートン・ワールド全開 |
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| 今度こそ本当にティム・バートン監督作品であり,それも久々にお得意のストップモーション・アニメ(SMA)である。しかも,白黒3Dという,珍しい上映形態だ。加えて,単なる新作ではなく,彼が1984年に製作した思い出の短編映画を,長編SMAでリメイクしたファンタジーだというので,期待が膨らんだ。
上記の期待の背景は,少し解説が必要だ。まず,先月号で紹介した『リンカーン/秘密の書』は,T・バートンの世界であることをウリにしていたが,彼は製作だけで,監督ではなかった。名作『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(93)も原案・製作だけだったので,監督でないことは問題ではないと思ったのだが,結果はご存知の通り,冴えない凡作だった。今度は,正真正銘の彼自身が監督した作品であり,しかも『ナイトメアー…』と同じSMAなら尚期待できる。実際,彼自身が監督を務めたSMA『ティム・バートンのコープス ブライド』(05年11月号) は素晴らしい作品で,当欄でも激賞し,年間ベスト5に選んでいる。本作に登場する人形たちの外観を見る限り,この『…コープス ブライド』と同系統のルックスであり,かつ個々のキャラはより個性的にデザインされている(写真1)。
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写真1 個性的なキャラのデザインを入念に点検するバートン監督
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物語の設定は,かつての同名の短編(約30分)とほぼ同じで,映画の導入部もそっくりだ。即ち,主人公の少年ヴィクターは,科学好き,映画好きの少年で,彼が撮った愛犬スパーキーの映画を皆で観ているところから始まる。交通事故で他界したスパーキーの死の悲しみに耐えられないヴィクターは,雷の大電流を流してスパーキーを蘇生させてしまう。かくして,つぎはぎだらけ,首からボルトが飛び出した「フラン犬」が生まれる(写真2)。同じ手口で生き返った動物たちが騒動を引き起こし,小さな町ニュー・オランダは大混乱に陥ってしまう……。
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写真2 蘇生したスパーキーはつぎはぎだらけのフラン犬(ケン)
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少年と愛犬の物語ということで,『ナイトメアー…』や『…コープス ブライド』よりはファミリー向けであり,スパーキーはとても可愛い(写真3)。それでも,子供たちには少し怖い物語かも知れない。白黒にこだわったのも,「ドラキュラ」や「フランケンシュタイン」等の古いホラー映画のテイストを加えたかったのだろう。音楽も古風だが,これも意図的だと感じられた。 |
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写真3 可愛いスパーキーはキャラクター・グッズとしても人気がでそうだ |
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技術的には,今更SMAの技法を語る必要もないから,CG/VFXがらみの話題だけを述べておこう。雷の稲妻,実験装置から発する火花が何度も登場する。一部は実写かも知れないが,大半はCG/VFXだろう(写真4)。コマ撮りアニメと同期させて本物の火花を撮影するより,CGで描いた方が遥かに簡単だ。甦った動物たちの中で,多数発生し,激しく動き回るキャラも存在したが,これもCGで描いた方が効率的である。背景は,デジタルマット画だと見てとれたシーンも少なくない。 |
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白黒3Dなる見せ方に関しては,コントラストの高い映像の場合は,確かに立体感は増す(写真5)。ただし,リアル3D撮影ではなく,『アリス・イン・ワンダーランド』(10年5月号)と同様に,フェイク3Dの産物である。なぜこの監督は,こんな時代遅れの方式にこだわるのだろう? いや,そもそも,この映画を3Dにする必要はなく,2Dのままで十分だと感じた。
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写真5 白黒,高コントラストで立体感も上々 (C) 2012 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
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もう1つ苦言を呈したいのが,全編白黒で通したことだ。『ナイトメアー…』や『…コープス ブライド』がカラーであったのに,ここで敢えて白黒にする意味が分からない。極彩色である必要はないが,淡いモノトーンにし, シーンやキャラによって,色を使い分ける手もあった。火花や炎にだけ彩色するワンポイント・カラーであっても良かったかと思う。
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(画像は,O plus E誌掲載分に追加しています) |
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