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plus E誌 2012年3月号掲載 |
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(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています。) |
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さすがスピルバーグ,安心して観られる家族映画 |
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| オスカー候補の2本に2ページを使ってしまったら,残るメイン欄の割り当て紙幅は1ページ余になってしまった。ところが,今月は話題作揃いで,取り上げたい映画があと4本もある。止むを得ず,編集部に1ページ増を認めてもらい,3作品を「準メイン」扱いとし,駆け足で要点を語ることにした。
まずは,アカデミー賞作品賞候補9作品にその名があることに敬意を表して,この『戦火の馬』からである。監督は,『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』(11年12月号)に続いて,またまた御大スティーブン・スピルバーグだ。いくら根っからの映画好きでも,早撮りでも,最近ちょっと製作・監督として名前が出過ぎだ。こんなに安売りしては,折角のスピルバーグ・ブランドも飽きられてしまい,評判を落とすのではと危惧する。ところが,この作品に限って言えば,その心配は無用だった。誰もが安心して観られる堂々たる物語で,ファミリー映画の王道を貫いている。映像によるストーリーテラーの面目躍如で,「さすが,スピルバーグ!」と大向こうから声が飛んでもおかしくない出来映えだった。
ここでいう「戦火」とは,第一次世界大戦下のフランスでの戦闘である。英国丘陵地帯の農村で育った一頭の美しい馬ジョーイが,軍馬として英国軍に売却され,その後,大陸でドイツ兵やフランスの農家の手に渡り,波乱万丈の体験をする物語だ。原作は1982年に英国で出版されたマイケル・モーパーゴの児童小説だが,演出家トム・モリスによって舞台化され,ニック・スタフォード脚色の『軍馬ジョーイ』として2007年秋からロングランを続けているそうだ。2010年にその舞台を観て感激したS・スピルバーグが,短期間で映画化を敢行した訳である。舞台劇の回り舞台のように,ジョーイの行き先は転々とするが,どの境遇でも善意の人々が登場するのが児童文学らしく,心暖まる物語となっている。
馬が実質的な主演だが,次なる重い役はジョーイを最初に育てたアルバートで,新人ジェレミー・アーヴァインが抜擢されている。助演陣の中では,彼の母親役のエミリー・ワトソンが名の知れたところで,他には著名な俳優なしの地味なキャスティングと言える。登場人物よりも圧倒的に目立つのが,英国の素晴らしい田園風景だ。牧草地帯も古風な家々も実に美しい。この手の物語はハッピーエンドに違いないと思いつつも,ついついそれぞれの場面に引き込まれ,次はどうなるのだろうと展開が気になる作品に仕上がっている。夕陽をバックに,アルバートとジョーイのシルエットが浮かび上がる壮大な光景も感動的である。
第一次大戦を描いた映画は少なく,第二次大戦ほど知識がないが,その様子を知るのに格好の映画となっている。まだ戦闘機はなく,銃器や砲弾を中心とした当時の戦闘力や,その中での軍馬の役割もよく描けている。原作者の調査では,英国軍だけで100万頭もの馬が戦死したという。VFXはと言えば,その戦闘や当時の風景を補強するのに使われている。主演のジョーイの大半は本物の馬だが,細い塹壕内を疾走するシーン(写真1)や,有刺鉄線に絡まって暴れるシーンの一部はCGで描かれている。多数の馬が出撃し,銃弾に倒れてもがくシーンも,当然CGホースの出番だろう(写真2)。本作のCG/VFXの主担当は,英国のFramestore社だ。
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写真1 塹壕内を疾走するジョーイ。さすがにこのシーンはCGで描いたようだ。 |
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写真2 この程度の数は全部本物の馬。銃弾に倒れてもがくシーンでは,CGで代用。
(C) DreamWorks II Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
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映画ではこうした描写が可能だが,舞台では一体どうして馬を演技させていたのだろうと疑問に思った。調べてみると, 何と,本物の馬は登場させず,3人がかりで操作するパペットを利用しているという。YouTubeでその映像を観た。一見すると見かけは良くないが,微妙な動きの表現が実に見事だった。これは一見に値する。英国や米国だけに留まらず,豪州や日本での公演も計画中とのことなので,楽しみにしておこう。
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(画像は,O plus E誌掲載分に追加しています) |
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