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plus E誌 2011年2月号掲載 |
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(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています。) |
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オリジナル・ファンも満足の見事な既視感 |
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言うまでもなく,日本漫画史上に輝く名作の実写映画化だ。団塊の世代の筆者は,「巨人の星」と共に週刊少年マガジン連載時に同時体験でむさぼり読み,その後も再読,再々読している。その後のTVアニメ,劇場版アニメでファンになった世代も少なくないだろう。
監督は『ピンポン』(02年7月号)の曽利文彦。となれば,随所にCG/VFXが駆使されていることは確実なので,それを語りたかったが,一切のCG系のカットが提供されない。肉体改造し,代役なしで挑んだジョーと力石の生身のボクシング対決がセールス・ポイントで,CGは表に出したくないからとのことだ。それじゃ,当欄としては短評欄でしか扱えないじゃないか! 何とも残念だが,そうするしかないと一旦諦めたのだが,試写を観て気が変わった。やっぱり,この映画はもっと語らざるを得ない。かくして,画像なしで,メイン欄と短評の中間的変則扱いでの登場である。
まず触れるべきは,その魅力的なキャスティングである。力石徹役に,伊勢谷友介。NHK大河ドラマ『龍馬伝』の高杉晋作役でブレークし,『十三人の刺客』(10)の山の民・小弥太役の怪演も記憶に新しい。彼が減量苦の力石を演じると聞いて,それだけでワクワクした。果たせるかな,計量シーンの肉体は圧巻だった。これがCGなしとは凄い。旬の俳優は何を演じても輝いて見える時があるが,それ以上の存在感だ。
段平のおっちゃんには,出演作が目白押しの香川照之。風貌なら竹中直人の方がピッタリだが,話題性ゆえ彼になったのだろう。芸達者でボクシング狂ゆえに,卒なく見事な段平像を創り上げていた。津川雅彦の白木老人は,全くの自然体で行ける適役だ。香里奈演じる白木葉子は可もなく不可もなくかと思ったが,終盤に近づくにつれ,好演と呼んでいい存在感を醸し出していた。
CG/VFXは,大観衆や昭和40年代の風景での利用は予想通りで,印象的な紙ヒコーキ,リング上で飛び散る汗や吹っ飛ぶマウスピースもCGだろう。その話題を押しのけて,一切のCG加工はしていないという2人の肉体と打撃戦は,なるほど見事なものだった。『ロッキー』(76)ほどの重厚感はなく,『レスラー』(09年5月号)のような目を背けたくなる迫力あるシーンはなかったが,スローモーションや静止カットの使い方が上手い。とりわけ,静止のポーズや構図は,コミック・ファンに見事なまでの既視感を与えてくれる演出だった。この種の実写映画化では,それが重要なポイントの1つだ。
ここまで褒めておきながら,大きく減点せざるを得ないのが,山下智久演じる矢吹丈の存在感の薄さだ。ジョーはもっとイケメンで魅力的な主人公であるべきなのに,これでは完全に伊勢谷友介=力石徹の映画になってしまっている。もう1つ,林屋の紀ちゃんが登場しないのも淋しい。脚本家が女性(篠崎絵里子)ゆえに,「白木葉子が観た力石とジョー」になってしまったのは,止むを得ないところだろうか。 |
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