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この監督には,南カリフォルニア大学を訪問した折,留学中の彼と出会っているんです。彼が『タイタニック』に参加する少し前です。
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だから余計に期待が大きく,厳しい評価になったのですね。この映画は大作じゃないけど,普通の青春ドラマですよ。
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青春ドラマなら,女子ボート部を描いた『がんばっていきまっしょい』(99)のような瑞々しさが欲しかったし,スポーツもののVFX描写をウリにするなら,『少林サッカー』(5月号参照)のような極端な描写での躍動感が欲しいですよ。
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私は,窪塚君は難しい役をよく演じていたし,竹中直人もいつものくどさは少なく好演だと感じました。この映画のタッチが合わないなら,きっと原作も嫌いなんじゃないですか。
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そう思って,原作全5巻(小学館刊)を買って読んでみました。なるほど,この手の絵と話の展開は私には苦手で,連載ならまず読まないマンガです。でも,これは名作というだけあって,結構ハマってしまい,すぐ全巻読んで感激してしまいました(笑)。
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映画は,原作に忠実じゃないんですか?
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忠実ですよ。構図も人物のセリフや表情も。ペコ,ドラゴン,アクマ,チャイナはイメージ通りのキャスティングです。映画だけなら不自然に感じたスマイルも,見比べるとよく原作の味を出していました。
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この絵だと,バタフライ・ジョーとオババが似てませんね。
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ジョーは柄本明あたりの方が似合ったけど,竹中直人だと別の人格で,それはそれでいいですね。オババの方はミスキャストで,夏木マリじゃ若くて美人過ぎますよ(笑)。そもそもセリフが少なく,映画的な描写を意識したコミックなのですが,それを忠実に映画化したのでは,原作を超えることはできません。
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コミック・ファンには物足りなく,映画ファンにも不満足というわけですか。
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ただ原作をなぞっただけのコピーという感じです。映画は独立した作品として観客を満足させられるものでなくては,映画化の意味がありません。最大のポイントであるはずの卓球の試合は,原作の方がずっと迫力を感じます。この映画はそこが弱すぎます。CGを多用するなら,もっと劇的な動きにして映画の長所を活かさないと,劇画に負けてしまいます。
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素材はいいのに,脚色が弱いんですね。
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そうだと思います。この手の映画は,脚本と監督が同じ人物でないと快適なタッチが出せないのに,その脚本自体も工夫が足りません。
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確かに,卓球観戦の観客もダラダラしていて緊迫感に欠けました。エキストラのギャラをケチったんですね,きっと(笑)。
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当初の評価は だったのですが,私のように映画を観てから原作を買い,それで感動する人間もいますから,それを誘発したという意味で+をオマケしておきましょう。
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