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映画史上『クレオパトラ』(63)といえば,エリザベス・テーラーが演じたゴージャスな女王の姿が印象的で,当時の史上最高額をかけた超大作,スペクタクル巨編である。どうしようもない駄作で,興行的にも大コケした作品として映画史にその名を残している。
世紀の美女リズ・テイラーの向こうを張ってクレオパトラを演じるのは,『マレーナ』(00)『マトリックス リローデッド』(03)のモニカ・ベルッチ。これがなかなか似合っている(写真)。美貌も貫録もそうひけを取っていない。最近,本欄でも『ティアーズ・オブ・ザ・サン』(2003年11月号)『マトリックスレボリューションズ』(2003年12月号)と出演作が続いたので不思議に思ったら,この作品はフランスで2002年1月に公開済みの映画だった。それも,本国フランスでは7週連続トップで,何と1,400万人(国民の4人に1人)を動員した特大ヒットだという。そーか,そんなに凄い映画なのか。
原題は「Asterix and Obelix: Mission Cleopatre」。古代エジプトにあった「オベリスク」かと思いきや,前にある「アステリックスとオベリックス」というのは,フランスで絶大なる人気を誇るコミックのことだった。この映画はその実写版の第2作目とのことだ。それゆえ,観客動員も見込めるし。エジプトを舞台の実写映画(実際はモロッコでロケ)も撮らせてもらえた訳だ。
リズ・テイラー版ほどではないにせよ,この映画にもかなりの予算が投じられている。2,000人のエキストラとその衣装,7,500の効果音,1,500羽の白鳩,23匹のラクダ……はその一端だ。マスコミ用試写会の聴衆の1人は,「バカバカしいくらいに下らない所に金を使っているので,もう一度それを観に来た」と語っていた。
VFXはといえば,このスケールだから,ピラミッドやスフィンクスの登場場面を始め,随所に登場する。ところが,残念ながらVFXに予算を投じて高級感を出そうという考えはなかったようだ。もとがコミックだから,マンガ的な効果で構わなかったみたいだ。
監督・脚本は,シーザー役も務めるアラン・シャバ。この生意気なローマ皇帝の鼻を明かすため,クレオパトラはたった90日間で彼のために豪華絢爛の宮殿を完成させるという賭けをする。そこから繰り広がられる大騒動,パロディとフレンチ・ギャグの連発が売りの映画だ。試写会場ではごく一部の大笑いを誘っていたが,意味不明の場面も少なくなかった。これが日本人の口に合うか甚だ疑問だが,試す価値はあるだろう。
印象的だったのは,建築責任者のニュメロビスを演じるジャメル・ドゥブーズ。『アメリ』(01)で八百屋のオヤジにいじめられる小僧リュシアン役だったあの俳優だ。個性的な話し方は,一度観たら忘れられない。この映画で事実上の主演とも言える大役を得てブレークした。
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