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O plus E誌 2002年9月号掲載
 
 
『ウィンドトーカーズ』
(MGM映画
/20世紀フォックス配給)
 
 
       
  オフィシャルサイト日本語][英語   2002年7月3日 20世紀フォックス試写室  
  [8月24日より全国松竹・東急系にて公開中]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  名うてのアクション監督も腕をもてあましたか?  
   テロでの凍結後,一旦解禁となると,『エネミー・ライン』『ブラックホーク・ダウン』(3月号参照)以降も戦争映画は目白押しだ。本時評では取り上げなかったが,ブルース・ウィリス主演で第二次大戦時の捕虜収容所を描いた『ジャスティス』,メル・ギブソン主演でベトナム戦争が舞台の『ワンス・アンド・フォーエバー』等,VFXが戦闘シーンで効果的に使われている。『プライベート・ライアン』(98)以降,残虐で迫力ある戦闘シーンを入れるのが当然になったが,いずれもまだ本家と『ブラックホーク・ダウン』を超えてはいない。
写真 アクション・コンビも戦争には苦戦(ジョン・ウー監督(右)とニコラス・ケイジ)

 同時多発テロで公開が延期されていたこの作品の製作費は1億2千万ドルというから,同等以上の迫力を期待した。おまけに,監督のジョン・ウー,主演ニコラス・ケイジの組み合わせは『フェイス/オフ』(97)で大成功を収めているだけに解禁が待ち遠しかった(写真)。
 第二次世界大戦中のサイパン島での日米の戦いが舞 台だ。戦時下での通信に,解読不可能な暗号としてアメリカ原住民のナバホ語を使ったという史実に基づいている。ナバホ族のべン・ヤージー暗号通信兵(アダム・ビーチ)と彼を護衛・監視するジョー・エンダーズ軍曹(ニコラス・ケイジ)の命がけの任務,忠誠心と友情との葛藤を中心に描かれている。激しい戦闘シーンと極限状態の中で生まれたヒューマン・ストーリーをからませる,いわば定番のスタイルだ。それは悪くないが,もう1つ脚本にも演出にもメリハリがなく,何か中途半端な映画だ。
 ニコラス・ケイジは,『シティ・オブ・エンジェル』(98)『救命士』(99)『天使のくれた時間』(00)といったロマンス系,ヒューマニズム系は駄作で,『ザ・ロック』(96)『コン・エアー』(97)『60セカンズ』(00)といったカラっとしたアクション系の方が出来がいい。あるいは,ショーン・コネリーやジョン・トラボルタといった強い個性の俳優の脇に回った時の方が,あの地味な顔が生きてくるのかも知れない。
 戦闘シーンの迫力は水準以上に達していたが,こういう総力戦は個人技重視のジョン・ウーには向かないようだ。少数のアメリカ兵の発砲が百発百中で日本兵がバタバタ倒れるのには笑ってしまう。西部劇やチャンバラや香港のカンフー・アクションでは不思議ではなくても,ここでは違和感を通り越して滑稽だ。ジョン・ウーのシンボルの白い鳩もどこで出すのだろうかと見ていたら,さすがに登場場面はなく,白いカモメで代用していた。
 VFX担当はシネサイト社。あまりメイキングを公開しないこの地味なスタジオは,最近数多くの映画でその名前を見る。そつなく注文をこなす割に,ILMと比べるとぐっと割安なのだろう。その分,オリジナリティと華やかさに欠けるのは止むを得まい。この映画でも,戦艦からの発砲や爆発,多数の兵士が入り乱れるシーンでVFXが多用されていたが,米軍戦闘機の島への攻撃シーンは,誰が見ても『パール・ハーバー』を思い出してしまう。これでは,1億2千万ドルが泣く。
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