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O plus E誌 2020年9・10月号掲載 |
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『グレイハウンド』
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(コロンビア映画
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(C)2020 SONY PICTURES DIGITAL PRODUCTIONS INC.
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オフィシャルサイト[日本語][英語] |
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[7月10日よりApple TV+にて世界独占配信中] |
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2020年7月23日 Apple TV+の配信映像を視聴
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(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています。) |
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テンポよく描く,大西洋上での駆逐艦と潜水艦の戦い |
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| もう1本紹介しておこう。Disney+の目玉商品である『ムーラン』を本号のトップで紹介した以上,Apple TV+の目玉商品の本作もここで対等に紹介しない訳には行かない。既に7月10日から配信されているので,20年Web専用#4で取り上げるつもりだったのだが,上記の理由により,本号のメイン欄まで待った訳である。
最初からネット配信で企画されたお手軽映画ではない。当初は,ソニー・ピクチャーズ傘下のコロンビア映画レーベルで2020年3月22日に劇場公開される予定であったが,新型コロナウイルス感染拡大時期に遭遇し,5月8日に延期され,さらに6月12日に再延期された。ついにソニー・ピクチャーズが配給権を放棄し,ネット配信数社間で落札競争となった曰く付きの大作映画である。目玉映画を探していたApple TV+が高額で落札したが,『ムーラン』のように特別価格は要求されず,Apple TV+に加入する(1週間は無料)だけで視聴できる。
米国の長距離バスが舞台の映画ではない。第2次世界大戦中の米国海軍の護衛艦とドイツ軍潜水艦Uボートの壮絶な戦闘を描いた戦争スペクタクル映画である。当然,艦隊,戦闘機,潜水艦や洋上の描写にCG/VFXがたっぷり使われていることは言うまでもない。原作は,C・S・フォレスターが1955年に出版した「駆逐艦キーリング」である。輸送船団の中心となる護衛艦がフレッチャー級駆逐艦USSキーリングで,そのコールサインが「グレイハウンド」という訳だ(写真1)。物語は,1942年の大西洋上での出来事で,米国から英国へ兵士や物資を送る輸送船団37隻が,独軍Uボートの襲撃を受けるが,艦長就任初航海となるアーネスト・クラウス中佐の冷静沈着な指揮で,船団を守り抜く模様を描いている。
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| 監督は,撮影監督出身のアーロン・シュナイダー。この名前を聞くのは初めてで,まだ長編映画の監督は2作目だ。主演は,米国を代表する国民的俳優のトム・ハンクスで,本作では自ら脚本も執筆している。この大スターの主演映画ゆえに,お手軽映画とはほど遠く,堂々と劇場公開されるはずの大作映画だったのである。
T・ハンクス主演の類似作品としては,緊急時に航空機を川に緊急着水した『ハドソン川の奇跡』(16年10月号)と,海賊に襲われたコンテナ船の船長を演じた『キャプテン・フィリップス』(13年12月号)を思い出す。いずれも実話ベースの映画化作品で,ともに☆☆☆評価を与えているので,両作品を気に入った読者なら,本作には同等の期待をかけていいだろう。
以下は,本作のCG/VFXに関する論評である。
■ 基本的には,駆逐艦も輸送船も,潜水艦も戦闘機も,すべてCGで描写されていると考えていい。一部精巧なミニチュアを作って,カメラテストをすることはあっても,もはや『タイタニック』(98年2月号)や『男たちの大和/YAMATO 』(06年1月号)のように,大型船の実物大模型を作る必要はない。ましてや,戦争映画の場合,登場する船舶や航空機は機種がほぼ判明しているので,デザインの自由度はなく,残された設計図面からいきなり幾何形状モデルを作成しても十分である。レイアウトも自由自在であり,洋上の船団全体の描写は壮観だ。
■ 上記『タイタニック』の頃と比べて,CG技術が格段に向上したと感じるのは,海の表現だ。もはやどの映画であっても,穏やかな凪の海に太陽光が降り注ぐ光景でも,暴風雨下の大波でも,質感たっぷりに描く技術は確立されている。本作の場合,荒れる波をかき分けて進む駆逐艦(写真2)も,洋上に浮上して戦う潜水艦の姿(写真3)もしっかりと描写されている。ほぼモノトーンに近い映像だが,揺れる各艦と波や水飛沫の描写は素晴らしい。映画開始の早々にUボートとの戦闘が始まり,一艦を撃沈した後に一呼吸あるが,その後,複数のUボートとの戦いが最後まで続く。テンポが良く,飽きさせない。
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写真2 荒波に蹴立て洋上を突進する駆逐艦の姿は惚れ惚れする
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| ■ 駆逐艦の外観全体の描写はCGで可能だが,艦上の戦闘員の動きをアップで描くには,VFX処理が必要となる。本作の場合,実物大模型を作らずに済んだのは,同型の駆逐艦が現存していたからだ。今もルイジアナ州バトンルージュ市でミシシッピ川に係留され,軍事博物館として公開されている(写真4)。この船を艦上のシーンの撮影に利用するため,俳優たちはこの退役駆逐艦に乗船し,3日間機器操作の訓練を受けたという。戦闘シーンには,艦上の迎撃砲を動かし,射撃動作を実演している。勿論,実弾は飛び出さないので,CGで描いた火炎や波を後処理でVFX合成している(写真5)。
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写真5 兵士は俳優だが,砲門からの火炎はCGを合成
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| ■ 激しく揺れる艦上のシーンは,スタジオ内の大型ジンバルを配置し,甲板上の躯体の一部をその上に構築して撮影している(写真6)。戦闘機の描写については,特筆することはないが,VFX大作の水準には仕上がっている。本作のCG/VFXは,英国のDNEGがほぼ一社で担当し,戦時中のロンドンの様子も卒なくこなしていた。
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写真6 揺れる艦上シーンはスタジオ内に用意したジンバルを利用して撮影
(C)2020 SONY PICTURES DIGITAL PRODUCTIONS INC. ALL RIGHTS RESERVED.
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(画像は,O plus E誌掲載分に追加しています) |
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