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plus E誌 2016年10月号掲載 |
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『ハドソン川の奇跡』
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(ワーナー・ブラザース映画)
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(C) 2016 Warner Bros.
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オフィシャルサイト[日本語][英語] |
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[9月24日より新宿ピカデリー他全国ロードショー公開中] |
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2016年9月6日 GAGA試写室(大阪)
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(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています。) |
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細部のリアリティに拘ったハリウッド映画の真骨頂 |
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| 2009年1月USエアウェイズ1549便が,両エンジン停止のため,ニューヨークのハドソン川に不時着水した航空機事故を描いた作品だ。監督はクリント・イーストウッド,主演はトム・ハンクスという名監督,名優の組み合わせだが,意外にもこれが初めてのタッグらしい。原題は『Sully』で,チェスリー・サレンバーガー機長の愛称である。搭乗客+乗務員の計155名全員が無事であったことを称讃し,当時のNY州知事デヴィッド・パターソンが着水の緊急判断と迅速な救助活動を「ハドソン川の奇跡」(Miracle on the Hudson) と呼んだ。邦題はこの言葉を採用している。
比較的最近の出来事であり,米国民なら,何度もTV出演した機長や副操縦士のことはよく覚えている。我々日本人ですら,機長が5日後のオバマ大統領の就任式に招待されたことを知っている。加えて,既にドキュメンタリー映画も製作されていて,サレンバーガー機長本人がかなりの場面で登場していることから,かなり容貌の違うトム・ハンクス主演に異論を唱える声もあったようだ。同じく実話ものの『キャプテン・フィリップス』(13年12月号)での見事な船長役を観ている我々は,むしろ適役のように思えた。
他の出演者は,ジェフ・スカイルズ副操縦士役にアーロン・エッカート,機長夫人ローリー役にローラ・リニーというキャスティングで,他に名の通った俳優は登場しない。全編わずか96分で,機長,副操縦士の次に重要な役柄はUS1549便であるから,それも当然だ。この映画に関するイーストウッド監督の拘りは相当なもので,救助ボートの操作者,救助隊やボランティア,警察官,ニュースキャスターやパイロットなど,できる限り当時の関係者本人に出演してもらったという。最近の出来事ゆえ実現した訳だが,リアリティが増す上に,出演料も安くて済むので一石二鳥である。
予告編での「155人の命を救い,容疑者になった男」というキャッチコピーは印象的だった。てっきり完全に英雄視されていたのかと思っていたのだが,むしろ管制官指定の空港に向かわず,不時着水を選択したのは乗客の命を危険に晒す行為であったという嫌疑をかけられた訳である。国家運輸安全委員会の厳しい追求を受け,どのような裁決が下るかの物語が本作の基本骨格だ。
そうは分かっていたが,事故当日以前のエピソード,機長夫妻の日常生活,航空会社内の様々な人間模様から入るのだと思っていた。やがて離陸した後にエンジントラブルに遭遇し,緊急対応に追われて,最終的に川に着水し,その後に調査委員会の場面と考えるのが普通だろう。ところが本作はいきなり事故後から始まり,追求を受ける機長の苦労を描き,30分以上経過してからようやく離陸から事故に至る映像が登場する。よく知られた出来事を描いた映画としては,見事な導入である。
委員会の公聴会の模様は,まるで法廷劇だ。そこでのフライトシミュレータを駆使した実時間テストの結果を,全員が固唾を飲んで見守る。機長の答弁,そして結末には,感動を覚える。何と素晴らしい演出だ。これが若い監督の作なら絶賛し,今後も見守ろうと思った。しばらくして,イーストウッド監督であったことを思い出した。それくらい,熱中できる物語である。
以下,当欄のCG/VFX中心のコメントである。
■ ラガーディア空港離陸直後に鳥の群れに遭遇してのエンジン事故であり,マンハッタン上空から左旋回してハドソン川に着水するまでの数分間の出来事である。よって,CG/VFXでの描写もそう長くはない(写真1)。事故後の降下中の位置や姿勢の全データは残されているので,急旋回の様子や操縦席からの地上の眺めも完全に再現されているに違いない。当然エアバスA320の機体はすべてCGだろうと思ったが,何と,イーストウッド監督は同型機を1機購入し,撮影に使ったという(勿論,撮影終了後に転売したのだろうが)。
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| ■ TV局や新聞社が撮影した着水後の記録映像が数多く残されている(写真2)(写真3)。この部分でのリアリティも徹底追及したようだ。実際にハドソン川の同地点で,様々な角度から実写撮影を行い,しかる後に航空機実機やCG映像とのVFX合成を行ったようだ。主担当は,例によってMPC。一体,何作並行して受注しているのかと言いたくなる最近の充実振りだ。
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写真2 こちらは,2009年当時のニュース映像(CNN)
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写真3 AP通信が配信した画像
(C) 2016 Warner Bros. All Rights Reserved
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| ■ エンドロールで流れる曲「Flying Home」が絶妙だ。感動を維持し,余韻に浸らせてくれる。監督とジャズ歌手ティアニー・ サットンの共作のようだ。
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(画像は,O plus E誌掲載分に追加しています) |
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