◆metaDESK
Tangible User Interfaceの最初の研究事例として開発されたのがmetaDESKである。机上の書類をイメージして作られたのが現在のコンピュータのGUIであるのに対し,実際の机に手でつかめる(tangible)物体を配置し,動かしながらディジタル情報(ビット)を操作できる環境である(付図1)。
アイコンをマウスでクリックする代わりに,ファイコン(phicon)とファンドル(phandle)を操作する。この机の表面はセンサつきのディスプレイ・スクリーンで,映像は下から投射される。即ち,机の上でファイコンを動かすと,それを検出したコンピュータがmetaDESKの像を変化させるのである。
metaDESKの応用として,Tangible Geospaceが作られている。これは地理情報を対象としたシステムで,例としてMITのキャンパスのデータが入っている。具体的には,次のような物理的なインタフェースが提供されている。
- ファイコン/ファンドル:MITのドームやメディアラボの建物の形をした模型(付写真1)。
- パッシブ・レンズ:位置センサつきの大きな虫眼鏡状のガラス板。ズームアップされた地図が表示される。
- アクティブ・レンズ:アームの先に小型液晶ディスプレイがついたもの。この覗き窓の角度から見た地上の3次元シーンが映し出される。
- インストゥルメント:ウィジェットに対応する。地図の大きさを変更したり,回転したりするのに使われる。
◆ambientROOM
metaDESKがフォアグラウンド(Foreground;ユーザが注目する作業の場)を対象としているのに対して,バックグラウンド(Background;気配として感じられる周囲の状況)にもディジタル情報を投映できる全く新しい環境がambientROOMである。
人間の周辺知覚の能力を利用して,データの変化のもつ意味を,物理的な形で五感に訴えることを目指している。さらに,フォアグラウンドとバックグラウンドをシームレスに移行させることもまた研究課題である。
ambientROOMは,光や音の変化,風や水の流れをアンビエント(ambient)な情報のディスプレイとして制御できるようにした部屋である(付図2)。6フィート×8フィートの部屋(Steelcase社製Personal Harborをベースにしている)には,各種ファイコンを置いた棚や机があり,MIDI制御された音を出すスピーカー,光の変化を映し出す天井のディスプレイなども備えられている(付写真2)。
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