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立命館大学
情報理工学部
実世界情報コース

Gr.4:VR/MR視覚提示による触錯覚・自己運動感覚・身体所有感の分析・解明

【VR/MR視覚提示による触錯覚現象】

・視覚が触知覚に与える影響に関する研究

 触覚に関する研究では,視覚・触覚を併用したMRに関する研究を行っています.MRでは,実物体にCGを重畳描画することで実物体の外観を変更することができます.私たちはこのことを利用し,物体の見た目を変更することで,同じ実物体でも異なる触知覚を得ることが可能ではないかと考えました.そこで,形状の異なるCGを実物体に重畳描画し,重心知覚がどのように変化するかを調査しました.現在は重心知覚だけでなく,重さ知覚などに対しても研究を行っています. 

視覚情報が重心知覚に与える影響
視覚情報が重さ知覚に与える影響

・人間の温度知覚に関する錯覚現象の研究

 触覚に関する研究の1つとして温冷感覚を扱っています.温冷感覚は他の皮膚感覚である触覚や痛覚に比べて知覚特性が複雑です.理由としては,他の感覚より受容器の数が少ないことや,体の部位によってその分布が異なることがあげられます.そのため,温度知覚に関する錯覚現象が数多く確認されています.新たに錯覚現象を発見し,「温冷感覚誤認現象」と名付け発生原因について研究しています.
 温冷感覚誤認現象とは,温冷覚刺激を前腕の複数箇所に提示した場合に,温覚刺激を冷覚,冷覚刺激を温覚として知覚するという現象です.例えば,前腕の手首から肘にかけて3箇所に,数十ミリの間隔を空けて温度を提示したとします.その温度設定の並びを,高温,低温,高温と交互に並べた場合,手首や肘で高い温度を提示しているにもかかわらず冷たいと,中央で低い温度を提示しているにもかかわらず温かいと知覚することが確認されています.この現象のメカニズムを解明するために,提示の並びのパターンや温度差などの様々な条件を変更して分析を行っています.
 これらの知見は将来的にVR環境やテレイグジスタンス技術における触覚フィードバックへの応用が可能であると考えています.

温冷感覚誤認現象
実験装置

・電気刺激による線運動錯視の発生傾向の分析

 触覚における線運動錯視の発生傾向を分析するため,電気刺激に着目し研究を行っています.本研究では,電気刺激の提示に電気通信大学の梶本らが提案した触覚提示装置である電気触覚ディスプレイを利用しています(Electro-Tactile Display).電気触覚ディスプレイはデバイス上に配置された電極から電流を流し,皮膚下の触覚受容器の神経を活動させることで触覚の提示ができます.この装置には合計61箇所の電極が正六角形に配置してあり(Electrode arrangement),それぞれ独立に電気刺激を提示することが可能です.現在では,電気触覚ディスプレイによる触覚だけでなく,視覚を加えた際の錯覚現象に対しても研究を行っています.

Electro-Tactile Display

【ベクション:視覚刺激誘導型自己運動感覚】

・直線運動と回転運動が共存する場合のベクション効果に関する分析

 ベクションに関する研究を行っています.ベクションとは,実際には自分が動いていないにもかかわらず動いているかのように錯覚する運動感覚のことです.ベクションは,知覚する運動方向の違いから直線運動感覚 (Linear Vection; LV) と回転運動感覚 (Circular Vection; CV) の2つに分けられます.
 これまで,様々なLVとCVの組み合わせに着目し,この双方を知覚する映像を用いて,LVとCVの関係の解明に取り組んできました.そして,組み合わせに依らずLVとCVは互いに影響し合うことを明らかにしました.現在は,実験で提示する映像の複雑化,奥行き知覚や視野角などが与える影響の解明へと研究を発展させています.

広視野ディスプレイシステムの外観
映像を提示している様子
HMDを用いた実験の様子

・ベクションを利用した応用例

 ベクションを利用して,足が不自由な児童生徒向けのゲームを開発し,児童生徒に身体の制約上体験できないような移動や運動を体験させることを目指しています.
 また,電動車椅子の操作練習にベクションを利用する事例を開発しています.一人で安全に練習することができることを目指し,実際の電動車椅子の操作を体験したり,利用者にインタビューをしたりすることにより,必要な機能の検討を行っています.

洞窟を冒険するゲーム
操作練習場所のモデル

【身体感覚の分析・解明】

 仮想空間における身体の視覚的変更が身体感覚に与える影響について研究を行っています.
 人工現実感 (Virtual Reality; VR) や複合現実感 (Mixed Reality; MR) の技術を用いることで,ユーザーは自身の身体とは異なる形状・構造等を持つアバターを操作することができます.しかし,そのようなアバターを操作することにより,ユーザーの痛覚等の知覚や行動に影響を与える可能性があります.そこで,VR/MR技術を用いて身体の視覚情報を操作し,身体感覚にどのような影響を与えるかを確認しています.
 例えば,MRとVR空間において前腕を半透明にすることにより,知覚する痛みが弱まる傾向や,左右の手の位置を実際とは異なる位置に表示し,その状態でトレーニングを行うことで,その後の行動が変化することを確認しました.

前腕の半透明化
手の視覚的位置変更の実験イメージ