立命館大学
情報理工学部
実世界情報コース

Gr.3:次世代ヒューマンインタフェース
(道具型デバイス,身体部位活用UI,錯覚利用型UI)

【ExtickTouch:仮想物体への接触感を提示する先端伸縮型デバイス】

・ExtickTouchの設計と開発

 VRの分野では仮想物体に触れた手応えや材質,硬さといった触覚情報の提示が課題となっています.道具班では,仮想物体の形状に合わせて先端を前後に稼働させることで接触感の提示を行う新手法を提案し,その手法を実現するデバイスExtickTouchを開発しました.また,接触感以外の触覚情報の提示も目指しており,デバイス先端の材質変更をはじめとしたシステムの拡張により硬軟感提示を実現しました.今後は,システム全体の改善によって提示する接触感をより現実に近づけるとともに,接触感・硬軟感に続きさらなる触覚情報の提示を目指していきます.

ExtickTouch
ExtickTouchを用いた操作の様子

【身体部位を利用するUI】

・手のひら前や前腕を利用した電子メニュー提示

MR空間において,手のひら前や前腕などの身体部位を表示領域・操作領域として活用する電子メニューの開発を行っています.具体的には,手を開くと手のひらの前にメニューを表示する手法や,前腕に沿ってその上にメニューを表示する手法の設計とその提案を行っています.この手法によって実物体を導入せずに,メニューの位置の容易な制御や,運動感覚を用いた容易な操作などが可能になると考えられます.

手のひら前メニューでの操作

・大腿を利用した電子メニュー提示

 大腿(太もも)を利用した電子メニュー提示に関する研究を行っています.これまでの研究は,メニューの表示・操作領域として,手のひらや前腕などを利用していましたが,私達のグループは他の身体部位も利用できるのではないかと考え,大腿に着目しました.そして大腿をメニューの表示・操作領域として利用した3DUIを設計・実装し,人間工学的な観点から評価・改良しています.現在は,「タッチ」「スクロール」「スワイプ」などの操作方法で操作するメニューウィジェットの実装に取り組んでいます.

大腿メニューでの操作

・アイジェスチャ入力

 VR空間操作としてのアイジェスチャ(EG:目を用いて行う動作)に関する研究を行っています.既存研究ではどのEGがどの操作に適当であるか検討されていなかったため,EGの体系化を目指すことにしました.まず「瞬き」「ウインク」「見開く」等のEGの列挙を行い,それらを認識可能な環境を構築しました.そして,VR空間入力に用いる基本的な操作をEGで行う実験結果から特性の整理を行いました.現在は複数のEGの組み合わせの検討を行い,その組み合わせたEGも加えた,より広範なEGのUI特性を明らかにする研究を行っています.

EMG測定器
システム構成
アイジェスチャ(瞬き)を識別している様子

・表面筋電位を用いたハンドジェスチャ入力

 新たな身体部位による入力方法の提案を目標に,筋電位を用いたハンドジェスチャとその力の大きさの認識に取り組んでいます.具体的には,ハンドジェスチャの列挙ならびに各ハンドジェスチャ入力時の筋電位データを収集し,ハンドジェスチャの認識を行うシステムの構築に取り組みました.現在は構築したシステムを用いて,新たなUIの実装に取り組んでいます.

・表面筋電位を用いた歩行インタフェースの作成

 廉価で高性能なHMDが登場した昨今,VR空間の歩行にはコントローラを使うことが未だ主流です.そこでコントローラーの入力に代わる,表面筋電位を用いた新たなVR空間歩行インタフェースの設計開発に取り組みました.身体動作に伴う生体信号を用いた操作方法を取り入れることにより,トレッドミルなどの大きな機器を必要とせずに,運動感覚を伴う操作が可能になると考えられます.

【錯覚現象を利用するUI】

・視覚刺激を利用した椅子の触感変化提示

 VR空間で視覚刺激を提示し,体験者の体性感覚情報を誤認させることで,椅子の着座感覚を操作する手法についての研究を行っています.具体的には,椅子に着座する際に視点が徐々に下がる映像を提示することで,あたかも自分が沈み込みの深い椅子に座ったように錯覚させる手法を用いています.現在は違和感を低減しつつ,より椅子を柔らかく知覚させることが可能な提示手法についての検討を行っています.

提案手法による映像提示の様子

・重さ錯覚現象を利用したVR空間でのインタラクション

 VR空間において,視覚情報に比べ触覚情報の提示は未だ発展途上です.そこで視覚刺激で提示できる疑似触覚(重さ錯覚現象)に着目し,仮想物体が有する各要因が重さ知覚にどのように影響を及ぼすかの調査を行いました.具体的には,単一要因ごとの条件を変えた仮想物体を持ち上げた際に知覚する重さの差異を分析しました.今後は,分析結果から効果的だと判明した要因を複数組み合わせた条件下で,重さ知覚への影響を分析・検討をし,これからのVR空間における表現力の向上に寄与することを目指します.

仮想物体を持ち上げている様子