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○福田 裕美(ふくだ ゆみ)さん
 【現在,学部4回生.大学院内部進学予定,大阪府・関西大倉高校出身】

◆福田さんへの特別インタビュアは,RM2Cの相談役 田村秀行先生[元メディア情報学科教授.現,総合科学技術研究機構(客員)教授]です.

(田村)まずは,定番の質問で,なぜ立命館の情報理工学部に来て,実世界情報コースの木村研究室にやって来たのかから始めましょう.

 国公立の第1希望に落ちました.私立では,立命館が第1志望だったので…….

福田さん

(田村)そんなに恥ずかしそうに,小さな声で答える必要はありません(笑).ごく普通のことですよ.国公立志望者はセンター試験で多数の科目を受験しているので,基礎学力があり,むしろ教員側では歓迎です.RM2Cの1, 2期生の頃は,大半が国立受験経験者でした.柴田先生,木村先生や私が着任した2003年当時は,全国的に情報系の人気が高く,京大でも阪大でも最難関でした.それに落ちて,立命館の理工学部情報学科(情報理工学部の前身)に現役合格したので,情報系ならば……とやって来た学生が上位層でした.当時の偏差値は62もありました.それが情報理工学部で大幅定員増にし,電気・情報系の人気も急落したので,当学部の学生のレベルも急落したのです.A入試の予備校偏差値を下げたくなくて,推薦入試を増やしたので,益々平均学力が低下しました.受験勉強から逃避して推薦入学で来る学生は,定期試験は適当に誤魔化せても,卒業研究以降で困難に直面した時,それを乗り越えられなくて,指導側も苦労しています.
 関西大倉高校のような受験校で国立受験組は歓迎ですよ.実際,卒業生が立命館には多数来ているんじゃないですか?

 それを聞いて,安心しました.高校からは立命館全体で数十人入学しているかと思います.学校の近くに大阪茨木キャンパスができたので,人気も上がっているようです.
 初めから情報系志望でした.父親がTISに務めているせいもあるかと思います.オープンキャンパスでBKCにやって来て,木村先生にXドームのデモを解説して頂き,こんな凄い装置があるのかと感激しました.
 その時に残っていたのは私一人だったのですが,ゆっくりお話できて,実世界情報コースの木村研に行きたいと考えるようになりました.

(田村)なるほど,大学側,研究室側としては,オープンキャンパスにも手を抜いちゃいけないなという教訓ですね.今度は貴女たちが素晴らしいデモを作って,意欲ある高校生にアピールして下さい.ところで,その当のXドームは今年の春で撤去してしまいました.もうビデオプロジェクタも寿命で,テクノコンプレックスの場所代も,装置を維持して行く経費もバカにならなかったので廃棄に決めたのです.

 それを聞いた時はとても残念でした.でも,HMDを使った重さ知覚の錯覚も面白かったし,ジュベナイルプロジェクトでもHMDを使う班に入りました.

(田村)大学院進学はいつ頃から決めていたのですか?

 大学入学当時から決めていました.理系なら,大学院まで行くのは普通だとも聞いていました.当初は他大学の大学院に進むつもりでしたが,総合的に考えて,立命館の内部進学に切り替えました.

(田村)阪大あたりへのリターンマッチをしたかったのかな? 国公立は内部進学率が高く,殆ど枠があいていないでしょう.空いているところは不人気研究科であり,ここでの研究を続けられる可能性はほぼありません.学部から大学院で継続して研究を続けることが基本の立命館の方式の方が,実績を上げやすく,院卒で就職する時にも有利だと思います.

 先輩たちからもそう言われて,内部進学にしました.

(田村)研究室配属までに熱中していた趣味やサークル活動はありますか?

 「立命館TRPG倶楽部」に在籍していました.本拠地は衣笠キャンパスですが,BKCにも支部があります.
 TRPGというのは,Tabletop Role-Playing Gameの略です.ビデオゲームのRPGはご存知ですよね?あれとは違って,複数人で道具を使って行うテーブルゲームの一種です.役割分担をして会話をしながら,ルールに従って一緒に作品を紡ぐ感じです.1回につき最低1時間はかかり,長い場合は日を跨ぐ場合もあります.
 基本的にはサークル内でプレイする趣味の会ですが,外部の人を入れてやる場合もあります.衣笠では週一でやっていますが,BKCでは月に1回程度の開催でした.高校時代から知っていたのですが,1人でやるのは小規模のものしかできませんでした.大学に入ってこのサークルの存在を知り,すぐに参加することにしました.

TRPG倶楽部活動の一コマ1
TRPG倶楽部活動の一コマ2

TRPG倶楽部活動の1コマ.紙と鉛筆,サイコロを使ってプレイする.

(田村)ビデオゲームよりも,何やら知的な感じがしますね.カードゲームだと「コントラクト・ブリッジ」がそうですが,実際に集まって会話を楽しむことも目的なのでしょう.でも,このコロナ禍でも実際に開催しているのですか?

 オンラインでボイスチャットを利用してやっています.アプリソフトもありますが,Web上で公開されているTRPGサイトを利用することが多いです.

(田村)話をジュベナイルプロジェクトに戻しましょう.「ピタゴラMR」チームのシナリオライタだったようですが,TRPGの経験から,ストーリーを作り上げることに興味があったのですか?

 シナリオライタ兼モデラでした.シナリオライタは,ディレクタに継ぐNo.2的な役目ですよね.私は梶山さんのように人を引っ張って行くタイプではなく,縁の下の力持ち役割の方が向いていると感じています.卒研1の作品制作で江波戸君の補佐役でしたが,その江波戸君がピタゴラ班のディレクタ役に立候補したので,卒研1の延長でシナリオライタに手を挙げてしまいました.

(田村)満足の行く作品に仕上がったのでしょうか?

 かなり凝った作品になり,チーム全体としては満足できるレベルに達したと思いますが,自分の担当した箇所のクオリティはもっと高めることができたと感じています.ジュベナイル期間では現実空間のピタゴラ部分に力を入れ過ぎたので,このバージョンアップを図るなら,仮想空間側を強化したいです.

MRピタゴラの制作風景1
MRピタゴラの制作風景2

CC1階の展示室での「MRピタゴラIII」の制作風景.
 現実世界に多数の部品があるが,大型モニタの左半分には仮想部分が表示されている.

 この作品を作り直して,OICで開催のVR学会に技術展示するような話があったようですが,今年もオンライン開催になってしまい,私たちが展示するかどうかは微妙なようです.
 当初の希望とは少し違い,この「MRピタゴラ」を研究テーマにしているGr.2に配属されたので,このGr.でなら,DRと組み合わせて,新しい作品を作って行きたいです.

(田村)このテーマの原点は,現実空間と仮想空間での物体の動きを違和感なく伝達するRV-Transitionという概念です.他大学でも取り組んでいない当研究室のオリジナルです.少し風呂敷を拡げ過ぎたので,対象をEdutainmentに絞り,LEGOブロックの世界とリンクさせて,創造性を発揮できる作品制作の基幹技術にしようと柴田先生は考えておられるようです.TRPG経験のある福田さんには,ぴったりの発展性のあるテーマだと思います.

  頑張ります!

(田村)院進して,社会に出てからどうなりたいという将来展望はありますか?

  稼げる大人に憧れています.VRやDRを応用できる会社に就職して,大学で学んだことを活かしたいです.親と同じくらいか,それ以上に稼げるようになりたいと思っています.