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O plus E誌 2019年9・10月号掲載 |
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(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation
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オフィシャルサイト[日本語][英語] |
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[9月20日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開中] |
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2019年9月11日 TOHOシネマズ日比谷[マスコミ完成披露試写会(東京)]
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(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています。) |
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これまでとは一味違う宇宙SF映画の金字塔が誕生 |
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| 今月のトップ記事は,宇宙もののSF映画で,秋の話題作だ。近年,このジャンルでは『ゼロ・グラビティ』(13年12月号)『インターステラー』(14年12月号)の2本の秀作が生まれ,多数の映画賞を受賞している。勿論,両作品とも視覚効果部門でオスカーを得ている。本作は,この両作に匹敵する出来映えとの前評判だった。結論を先に言えば,まさにそのクラスの良作であり,SF映画の記念碑の1つに数えられる出来映えだ。
こうした優秀作品が次々と生まれるのには,過去20数年間のCG/VFXの進歩も大きく貢献している。精巧な模型やセットを組まなくても,宇宙ステーションや宇宙船の外観や内部がリアリティ高く描けるようになったので,NASAやJAXAから公表される実写映像を見慣れた観客の要求に応えられる品質が実現できる。その一方で,宇宙空間ならではの特異な現象を描くのは,CG技術の独壇場であり,まさに美術担当者の美的センス,CGクリエーターの腕の見せ所である。
本作のもう1つの話題は,第76回ベネチア国際映画祭の正式出品作品であったことだ。SF映画が同映画祭に出品されることは稀有なので,娯楽大作ではなく,深遠な物語であることをアピールしたいのだろう。監督・脚本は『アンダーカヴァー』(09年1月号)『エヴァの告白』(14年2月号)のジェームズ・グレイで,カンヌやベネチアの常連であることからも,本作の方向性が伺える。こちらも結論を先に言えば,確かにこれまでの宇宙ものとは一味違う作品だ。少なくとも,娯楽性を重視したSFアクション映画ではない。サスペンス度では『ゼロ・グラビティ』,ビジュアル度では『インターステラー』に劣るが,思索的という点では勝っている。それでいて『2001年宇宙の旅』(68)のような難解さはない。良質のSF小説にあった文学的香りや思想性の伝統を継承しているとも言えよう。
主演はブラッド・ピット。製作にも名を連ね,彼が所有するPlan B社が製作会社の1つとなっている。彼の映画人生での最高の演技と称されているが,その通りだ。宇宙飛行士ロイ・マクブライド少佐役で,出演シーンが圧倒的に多い。独白のナレーション場面も少なくないので,まさに独演に近い作品だ(写真1)。同じく宇宙飛行士であった父親役がトミー・リー・ジョーンズだ。「必ず,見つけ出す。?太陽系の彼方に消えた父の謎?」がキャッチコピーなので,当然彼の出番はしっかりあるはずだ。ところが,父の旧友プルウィット大佐役のドナルド・サザーランドやロイの恋人イヴ役のリヴ・タイラーとなると,出番はぐっと少ない。まさに終盤の父子の遭遇を期待して物語を追うことを意図した作品だと言える。
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写真1 いつものチャラ男と違って,1人で苦悩するシーンも多い
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| 事前にストーリーは殆ど明かされていなかったので,物語を追いながら,CG/VFXにも言及しよう。
■ まず目を惹くオープニング・シーケンスに,地球上にある国際宇宙アンテナが登場する(写真2)。多数の宇宙飛行士が作業しているが,眼下に見える地球の形状から分かるように物凄い高さだ。ところが,宇宙からのサージ電流の影響で何人も落下する。その落下シーンからも高さの凄まじさが分かる。この事故から生還したロイは,29年前に地球外知的生命体探索の「リマ計画」の司令官として宇宙に向かい,消息を絶った父親が存命だと知らされる。しかも,父の海王星周辺での実験が大量のサージの原因で,太陽系の全生命を奪う恐れがあるという。これを阻止する役にロイが任命される。
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| ■ 地球から43億キロ離れた海王星に向かうには,月にある宇宙船ケフェウスを利用する。そこから火星を経由して,海王星へと向かう訳だ。近い将来を描いた本作では,地球人類の月面入植が行われている。ただし,バラ色の未来ではなく,月世界は治安が悪く,安全な場所ではない。ロイの月面移動中(写真3)にも暴漢に襲われ,護衛役の軍将校が落命する。そうしたトラブルを経て,ようやくケフェウス号は火星へと向かう(写真4)。ちなみに,火星までの所要時間は19日余とされている。
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| ■ 火星到着後,宇宙軍幹部との意見衝突があり,ロイはこのミッションから外されることになる。火星で出会ったヘレン・ラントス(ルース・ネッガ)の助けにより,ロイは地下道経由で発射間際のケフェウス号に強引に乗り込む(写真5)。ところで,上記の月面や火星表面はCG描写ではなく,LA近郊から適した土地を探し出し,オールロケで撮影したそうだ。
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写真5 足下のハッチから地下道に入り,打上げ寸前の宇宙船に乗り込む
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| ■ 火星出発後の船内でのトラブルも,夢物語でなく現実に起こり得る話として描いている(写真6)。そして,ようやく海王星周辺にある「リマ」の基地に到着する。結末が読めない映画で,ここから残り30分が父子の物語となるが,ネタバレになるので詳しくは書けない。T・L・ジョーンズの抑えた演技が印象的だった。もう1つ印象的であったのは,海王星の青い輪の描写だ。5つの輪(環)の存在はボイジャー2号の撮影で確認されているが,本作では実際の輪よりも幅広く,土星の輪にように描かれていた。CG/VFXの主担当は,最大手のMPCだ。副担当はMethod Studios, Mr. X, Weta Digitalで, その他Pixel Piracy, SOHO VFX, Lola VFX, Shade VFX等の10数社も補助的役割を果たしている。
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写真6 火星離陸後,思わぬ事態で他の宇宙飛行士を死に至らしめる
(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation
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(画像は,O plus E誌掲載分に追加しています) |
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