|
 |
|
  |
|
 |
O plus E 2018年Webページ専用記事#1 |
|
|
 |
 |
 |
|
|
『ブラックパンサー』
|
(ウォルト・ディズニー映画
)
|
|
 |
 |
 |
|
|
|
(C) Marvel Studios 2018
|
|
|
オフィシャルサイト[日本語] |
|
|
|
|
[3月1日よりTOHOシネマズ新宿他全国ロードショー公開中] |
|
2018年2月16日 GAGA試写室(大阪)
|
|
 |
|
|
|
|
|
|
|
 |
|
(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています。) |
|
 |
|
|
|
ブラックパワーを前面に打ち出したマーベル映画の傑作 |
|
| またまたワクワクするマーベル・ブランドのアメコミ・ヒーロー映画が登場した。毎度のことながら,その質の高さに感心し,畏れ入る。例によって,オールスター映画『アベンジャーズ』シリーズの間に,新しいスーパーヒーローが単独で活躍する作品を公開しておくという営業戦術で,マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の18作目に当たる。本作の主人公は「ブラックパンサー」で,アフリカの小国ワカンダの国王にして,世界平和のために働くヒーローという変わり種だ。
そう聞いて思い出された読者もおられるだろう。単独主演は初めてだが,先行して準オールスター作品の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)に登場し,アイアンマン組に属していた黒装束の男である。チャドウィック・ボーズマンが演じ,同作品内で父の国王をテロで亡くす様子が描かれていたが,勿論,本作でも彼が継続登板し,この後直ぐに控えている『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』にも同じ役で再々登場する。この間2ヶ月余(本邦では2ヶ月弱)しかないから,MCUシリーズは質が高いだけでなく,生産性も極めて高いことに驚く。
『アイアンマン』(08年10月号)を皮切りに,『マイティ・ソー』(11年7月号)『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(同10月号)『アントマン』(15年10月号)『ドクター・ストレンジ』(17年2月号)と単独主演の初登場作はいずれも質が高かった。当然,本作にも同等のレベルを期待したが,同等かそれ以上の出来映えだった。北米での興行成績が2月公開作品の歴代No.1なのは容易に予想できたが,驚いたのは,映画レビューサイトのRotten Tomatoesでのプロの評論家の満足度が100%だったことだ(その後少し下がって,現在は97%)。各メディアが絶賛し,アメコミ作品とは思えない最大限の賛辞が寄せられている。多分にブラック・ムービーとしてのヒット要素を備えていたためと思われるが,少し褒め過ぎだ。当欄の評価は少し異なるが,この点に関しては後で論じよう。
さて肝心の中身だが,物語の時代設定は上記の『シビル・ウォー…』に続く日々に想定されているが,映画の冒頭ではワカンダ国の由来が明らかにされ,次第になぜ国王が守護神ブラックパンサーを兼ねるに至ったかも丁寧に説明されている。何と,ワカンダ国は単なるアフリカの小国ではなく,その祖先は地球外の異星からの到来者であった。この国は大きなパワーを発揮する稀少鉱石ヴィブラニウムを大量に保有していて,実はそれを生かす高度なテクノロジーをもつ超文明国である。歴代の王はこのことを秘匿する方針を守り,世界各国に政治経済情勢を探る秘密工作員を派遣している。
MCU作品全般にそうだが,この導入部のストーリーテリングが実に巧みだ。よく練られた脚本で,格調が高く,かつ分かりやすい。ヴィブラニウムを得ることで世界征服を目論む国内外の敵と戦う構図は定番だが,それでも終盤は大いに盛り上がり,満足度大の結末に終わると予測できる。
監督は,長編2作目の『クリード チャンプを継ぐ男』(16年1月号)で注目を集めたライアン・クーグラー。まだ31歳だ。ヒット間違いなしの本作での監督起用は大抜擢に属するが,インディペンデン系出身の若手にこうした機会を与えるのも,ハリウッド・ドリームの典型である。同作で主人公クリードを演じたマイケル・B・ジョーダンが,本作では「ブラックパンサー=ティ・チャラ」と張り合って国王の座を狙う敵役エリック・キルモンガーを演じている。他の重要な役どころでは,ティ・チャラの妹シュリ役をレティーシャ・ライト,元恋人のナキア役をルピタ・ニュンゴが演じている。
監督や主要スタッフの勢揃い写真を見れば分かるが,大半は黒人であり,女性比率が高い。これは,黒人解放運動を描いた作品よりも顕著である。まるでアカデミー賞ノミネート作品の傾向に真っ向から挑戦するかのようなキャスティングである。それが,ブラックパワーを気にするメディアの高評価,大きな観客動員に繋がっているのかも知れない。
その反面,本作の大きな欠点はと言えば,皆真っ黒で,同じような顔立ちなので,誰が誰だか分からない,敵か味方かの区別もつきにくいことだ(写真1)。かろうじて主人公だけが識別できる。いやいや,敵役のM・B・ジョーダンの出番が多く,あまりに格好良いので,しばしこちらが主役じゃないかと思うほどだ(写真2)。『マイティ・ソー』シリーズの弟ロキと同じ路線での成功例だと言える。
| |
|
 |
|
|
|
|
|
 |
|
|
|
|
|
写真1 皆同じようで,誰が誰だが,見分けがつかない
|
|
|
|
 |
|
|
|
|
|
|
|
|
 |
|
| 上記は差別的視点からの発言ではない。素直に見分けられないのである。髭面だらけのイスラム教徒もそうだし,濃い顔立ちのインド人もしかりである。きっと西洋人から見たら,我ら日本人や中国人,韓国人も,識別できないに違いない。アフリカ系アメリカ人が多数いる米国国内はこれで平気なのかも知れないが,世界の映画市場を当てにしているなら,無理にでも髪形や衣装を違えて,区別しやすくして欲しかったところだ。
以下は,当欄の視点からの論評である。
■ 文明国であることを隠すため,ワカンダ国はホログラム技術を使って熱帯林で覆われているように見せているという設定だ。一旦の中に入ると,高層ビルが建ち並ぶ超文明国が現れる(写真3)。ドバイよりも凄い。まるでSWシリーズのナブー星や他のSF映画でよく見る光景である。宮殿内の描写も無難だが,平凡だ(写真4)。熱帯雨林との落差を強調するためにこうなったのだろうが,もう少しオリジナリティの高いデザインであって欲しかったところだ。中盤以降に登場する地下施設はスケールが大きく,3D上映も意識した上下差のあるデザインだ。勿論,CG/VFXゆえの産物である。
| |
|
 |
|
|
|
|
|
|
|
|
 |
|
|
|
|
|
|
|
|
 |
|
| ■ 落差と言えば,この国の風景描写で目を惹いたのは,ナイアガラ風の大滝の描写である(写真5)。岩肌にいる人々や滝水の落下も丁寧に描かれている。その他,雪山中の砦,ホバーバイク等も好い出来だ。アクション・シーンの切れもよく,屋内外,至るところでVFXの出番がある。一々論じていられないが,メイキング映像を観ると,グリーンバックでなく,ブルーバック撮影が目立った(写真6)。肌の色と関係があるのだろうか? CG/VFXの主担当はMethod StudiosとILMで,他にScanline VFX, Luma Pictures, Rise VFX, Trixter, Double Negative, Storm Studios等々,有力各社が参加している。プレビズ担当では,大手Third Floorの前にDigital Domainの名前があったのが印象深かった。
| |
|
 |
|
|
|
|
|
 |
|
|
|
|
|
|
|
|
 |
|
|
|
|
|
 |
|
|
|
|
|
写真6 グリーンバックでなく,従来のブルースクリーンが多用されている
|
|
|
|
 |
|
| ■ 当欄として最も嬉しくなったのは,妹シュリが天才科学者で,彼女が作り出す数々の小道具や武器が楽しく,デザイン的にも優れていることだ。さしずめ,007シリーズの「Q」の女性版であり,アイアンマンのトニー・スターク社長よりもデザイン・センスが良い。キャプテン・アメリカの楯並みの強度をもつブラックパンサーのスーツは精悍だし(写真7),その装着や付加機能の出し入れもよく練られている。後継作品にも,この発明品の紹介シーンをたっぷりと入れて欲しいものだ。
| |
|
 |
|
|
|
|
|
写真7 妹がデザインした新スーツの着脱にも注目
(C) Marvel Studios 2018 |
|
|
|
 |
|
| ■ 音楽に関しても触れておこう。サントラ盤としてではなく,本作にインスパイアされたアルバムとして「Black Panther: The Album」が発売されている。この中からシングルカットされた3曲が映画中で使われていたようだ。アルバム全体はヒップホップ・サウンド中心で,ラッパーのケンドリック・ラマーがプロデュースしている。最近のグラミー賞を席捲している人気シンガーらしいが,日頃このジャンルを聴かない筆者も,こうした機会にその名を知った。先ほどから,このアルバムを3度繰り返して聴きながら,本稿を書いた。なるほど,この映画のイメージにはぴったり合っている。
| |
|
( ) |
|
|
 |
|
|
▲ Page
Top |
|
|
 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
 |