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plus E誌非掲載 |
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『レゴ(R)バットマン ザ・ムービー』
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(ワーナー・ブラザース映画) |
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(C) 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.
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オフィシャルサイト[日本語][英語] |
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[4月1日より新宿ピカデリー他全国ロードショー公開中] |
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2017年3月17日 GAGA試写室(東京)
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(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています。) |
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新学期公開の海外製フルCGアニメ2作品 |
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| 我が国の映画興行は,春休みは『映画ドラえもん』,GWは『名探偵コナン』の両シリーズがトップの位置に座るのが定番で,当欄紹介作品の出る幕はない。興行的にはお子様映画の圧勝で,ファンタジー大作もアカデミー賞関連作品もランク下位に甘んじている。ところが,2014年はディズニー・アニメの『アナと雪の女王』(14年3月号)が大ヒットし,この牙城を崩した。
同じように,今年は3月号で紹介した2本『SING/シング』『モアナと伝説の海』が好調で,3週連続No.1&2を占めている(4/2現在)。 特に,ディズニー・ブランドを押しのけてトップに座る『SING/シング』のパワーに改めて感心した。4月にUSJ内に新エリア『ミニオン・パーク』がオープンすることが話題になっていたから,その宣伝との相乗効果もあるかと思う。完全に2大ブランド化しつつあり,今夏公開の『怪盗グルーのミニオン大脱走』はさらなる大ヒットとなることだろう。
そんな中で,同じく海外製フルCGアニメながら,春休み後半から新学期に,少しひっそりと公開される2本がある。上記2本との直接の競合は避けたのだろうが,少しいじらしい気がしたので,Webページ専用記事として簡単に紹介しておこう。
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2作目も快調。大人も子供も楽しめる二面性がウリ。 |
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| まずは,世界的人気のブロック玩具LEGO(R)に関わるシリーズからだ。全登場人物も背景シーンも,レゴ・ブロックで出来ているという想定でデザインされ,そのすべてをCGで描いた映画『LEGO(R)ムービー』(14年4月号)が3年前に公開された。本作はシリーズ2作目であるが,1作目に登場したレゴ・バットマンを主役に据えているので,スピンオフ作品と言えなくもない。
米国では2月10日に公開され,2週連続のトップに座り,7週連続でトップ10入りするスマッシュ・ヒットになっている。Rotten Tomatoesの満足度は90%で,批評家の評価も極めて高い。本邦では4月1日公開だが,これは名古屋市の金城埠頭に完成した「レゴランド・ジャパン」のオープニングに合わせたものだ。勿論,カラフルなレゴ・ブロックの楽しさを満喫できるテーマパークで,世界で8番目の「レゴランド・リゾート」だという。その前宣伝での評判も上々だったので,相乗効果で映画の集客力も期待したのだが,公開週の興行成績は今イチだった。まだまだディズニー,ユニバーサルの2大ブランドに迫るには時間がかかりそうだ。
さて,シリーズ2作目の本作だが,なるほど満足度90%だけあると感じる出来映えだった。監督は,前作でアニメーション共同監督のクリス・マッケイ。前作の準主役で,ヒーロー軍団を率いていたバットマンが主役に昇格している。元祖コミックやこれまでの映画化作品と同様,大邸宅に住む独身貴族で,悪と戦うヒーローであるが,目立ちたがりで,チヤホヤされるのが大好きの「かまってちゃん」だという楽しい設定だ(写真1)。執事のアルフレッド(写真2),バットマンを慕う少年のロビン(写真3),ゴッサム・シティの乗っ取りを企む敵役のジョーカー(写真4),さらにはバットガールやハーレイ・クインまで,DCコミックでの有名キャラをきちんと配している。
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写真1 主役に昇格したが,目立ちたがりやの「かまってちゃん」 |
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写真4 敵役ジョーカーと本作の悪漢たち
(C) 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. |
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| 即ち,大人も含めて,これまでのバットマン・ワールドを知っている観客には,忠実な人間関係描写や,脱線ぶりがことさら楽しい。日本語吹替版で観たので分からなかったが,英語版なら,米国人なら分かる流行語やギャグも詰まっているのだろう。では,そうしたコミック通,映画通だけにウケる映画かと言えば,そうでもない。むしろその逆で,予備知識がなく,このCGアニメの物語展開を初めて観る幼児でも,十分楽しい,シンプルな物語になっている。この大人も子供も楽しめる二面性が,日本の漫画映画と異なる美点である。
CG的には,特筆すべき点はない。前作と同様に,カラフルかつ動きもシャープで,独特のレゴ・ワールドが描かれている。すべてCGのはずなのだが,まるで本物のレゴ・ブロックが配置され,動いているかのようだ。シーンごとに(仮想)焦点位置を調整し,ある場面ではアップでのミニチュア撮影風に,別の場面では多数のレゴ・ブロックが映るようにカメラを引いた構図で描画されている。そのバランスが絶妙だ。レゴ社では,新しいミニフィグから,レゴ住宅,レゴランドの設計まで,CG導入が徹底しているのだろう。それゆえ,劇場用映画にも,さほど大きな新規投資を行う必要がなく,制作にはストーリーとシーンのデザインに集中できる訳だ。
今後もディズニー風アニメとは異なったテイストのCGアニメ・シリーズが次々と登場することは確実で,前作を未見の読者は是非一度このテイストを味わって頂きたい。
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幼児に圧倒的人気の機関車たちが,毎年長編でも登場 |
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この機会に,もう1本紹介したくなった。幼児たちに圧倒的人気を誇る「きかんしゃトーマス」(Thomas and Friends) である。もう少し正確に言うならば,英国生まれのTVアニメ番組として人気を博し,既に劇場版映画も毎年のように製作されているシリーズのCGクオリティを,上記と比較しながら確認したかったのである。
原典は1945年に英国で発刊されたウィルバート・オードリー牧師作の「汽車のえほん」(邦訳は,ポプラ社刊)とのことだ。この絵本が気に入ったブリット・オールクロフトが,原作者親子を説き伏せ,1番ゲージ(縮尺1/30.5)の鉄道模型を使って撮影した人形アニメを製作し,1984年から英国で幼児用TV番組が放映されている。現在までに第21シリーズまでが製作・放映され,短編エピソード数は計450編以上に及んでいる。本邦では,かつてフジテレビ,テレビ東京で放映されていたが,2012年からはNHK Eテレが毎週日曜日の夕刻に放映している。番外編として,2000年に長編映画が作られ,2008年以降は毎年1作が劇場公開され,本作は長編第12作目に当たる。
シリーズに登場するのは,架空の島「ソドー島」で働く,顔と声をもった蒸気機関車やその他の車両である。主役のトーマス以下,レギュラーは,パーシー,ゴードン,ヘンリー,エドワード,エミリー,ヒロ等々の機関車たちだが,既に数十種類以上に及び,特に長編作品で新しいキャラとしての機関車が登場することが多い。かつて各車両の特徴や仕様も公開されていたので,大人の鉄道ファンにも人気を博していた。最近は,絵本,解説本ともに幼児玩具としての人気が高く,その市場を意識した新型機関車が新登場する傾向がある。比較的歴史が浅いにも関わらず,幼児玩具市場でのシェアは圧倒的に高く,日本国内だけで年商数百億円以上に達しているという。実を言うと,筆者も孫たちの存在により,最近このシリーズの主要登場人物を暗記できるようになり,玩具市場でも少なからぬ消費をしている次第だ。
前置きが長くなったが,当映画評としての関心は,当初人形アニメとして製作されていたシリーズが,2009年以降はフルCGで制作されるようになったことだ。画面サイズも4:3から16:9に,収録媒体もフィルムからHDビデオに変わり,まさに映像技術の変化と進歩の影響を受けて,作品も質的に大変化している。
レンタルビデオやYouTube等でも,旧作の人形アニメ版を簡単に視聴できるが,CG制作に変わったことで,機関車や人物の表情が一変した。ソドー島の光景も徐々に複雑かつ味わい深い景観に進化して行った。TVシリーズの短編でも,それは十分に感じられる。劇場用長編映画なら,それがさらにどの程度アップしているのか,ディズニー/ピクサー作品等と比肩できるほどなのかを確認したくなったという訳である。
監督は,デビッド・ストーテン。2014年からTVシリーズの監督となり,長編は前作に続いて2作目である。幼児向けなので,日本語吹替版だけの公開で,勿論,ナレーションも各機関車の声もTVシリーズと同じ声優が演じている。原題は『Thomas & Friends: The Great Race』。英国メインランドで「グレート・レイルウェイ・ショー」が開催され,世界各国代表の機関車たちが集まり,複数部門のレース競技が実施されるという設定だ(写真5)。なるほど,一気に新しい機関車たちを登場させる前提が整っている。 | |
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ヒロイン役で登場するのは,インドからやってきた小型蒸気機関車アシマで,若い女の子らしいカラフルで可愛いデザインだ(写真6)。その声を,何とお笑いタレントの渡辺直美が演じ,トーマスとのデュエット曲も歌うという(写真7)。他で目立つ存在は,お馴染みゴードンの兄として,フライング・スコッツマンが登場し,兄弟揃ってレースに登場する。弟のゴードンは,高速レースに出るために,本作では流線型のボディに変身し,「シューティング・スター 」と名乗っている(写真8)。このモデルは玩具市場で人気しそうだ。物語は,ソドー島の代表選抜で選ばれなかったトーマスが,急にパーシーの身代わりで貨車入替えレースに参加することになり,波乱万丈の出来事の後,最後はアシマと優勝を分け合うという,メデタシ,メデタシの結末である。
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写真7 食中毒から復帰して,元気にトーマスとツーショット |
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写真8 ゴードンは流線型ボディに変身。既にプラレール・モデルが発売されている。
(C) 2016 Gullane (Thomas) Limited. |
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以下,当欄の視点での見どころと評価である。
■ まず冒頭から,ソドー島の見慣れた光景が次々と登場する。フルCGになって8年も経つから,その間に景観のCGモデルデータも増えているはずだ。長編ゆえに,尺に余裕があり,様々なシーンを見せることが出来る。それでいて,TVシリーズでは観たこともない,豪華な車両整備工場や込み入った背景も登場する。予算規模が大きい劇場用映画の際に,新たなモデルデータを作っておこうということだろう。実物ミニチュア模型と異なり,いくら溜め込んでも保管場所に困らないし,劣化もしない。そう考えると,CG化への決断は,この種のシリーズ作品にとっては,実に正しい選択だった。
■ 定番のストーリーであるが,長編らしい「つかみ」から入り,楽しく,見やすく,ワクワクする導入部だ。TVシリーズの視聴者にとっては,いつもより豪華で,長編らしいワクワクする展開になっている。本作はミュージカル仕立てであり,挿入曲は多くないが,主要登場機関車たちが歌い,踊る姿は楽しい。動きも軽快だ。
■ CG技術としては特筆すべきものはなく,コンテンツのクオリティ的にも,驚くほどではなかった。ディズニー&ピクサーやドリームワークス級のCGレベルとは思っていなかったが,予想以上に差があったと言わざるを得ない。これは技術レベルで負けている訳ではなく,使える製作費の制約から,コンテンツのクオリティも上げられないのだろう。主たる観客年齢層が相当低く,まだ自分の意思で映画館に足を運べる年齢ではない。DVD販売や後日のTV放映もあるとはいえ,大きな興行収入は見込めず,長編映画はあくまで番外編の存在だ。そうした状況下で毎年長編を作り続けている姿勢は,高く評価しておきたい。
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