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O plus E誌 2017年2月号掲載
 
 
マリアンヌ』
(パラマウント映画/ 東和ピクチャーズ配給)
      (C)2016 Paramount Pictures
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [2月10日よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズ他全国ロードショー公開予定]   2016年12月19日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  ゼメキス監督初のラブストーリーは,緊迫感も秀逸  
  今月号のメイン欄は秀作が多いが,本作もその1つだ。主演はブラッド・ピットとマリオン・コティヤール。キービジュアルは真っ暗な背景での男女のラブシーンで,ヒロインのライトブルーのドレスが強烈だ。時代は第2次世界大戦下で,極秘任務を通じて出会った男女の物語だと聞くと,文芸調の悲恋物語を予想してしまうのは,『イングリッシュ・ペイシェント』(96)『つぐない』(08年4月号) の印象が強いからだろうか。さらに,舞台は仏領モロッコのカサブランカだというと,誰もがあの名作『カサブランカ』(42)と比べて観てしまう。
 とここまでは当たり前の予想だが,試写を観る直前に,監督がロバート・ゼメキスと知って驚いた。本作の原題は『Allied』だが,ほぼ同時期に『Arrival』が公開されていたので,混同していた。『Arrival』(邦題は『メッセージ』,5月号で紹介予定)は,球体状の宇宙船で飛来する地球外生命体との対話を描いた映画とのことなので,てっきりゼメキス作品はそちらだろうと……。
 何しろ 『バック・トゥ・ザ・フューチャー 3部作』(85, 89, 90)でSFXの魅力を最大限に活用し,『永遠に美しく…』(92)『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)で斬新なデジタル技術を駆使し,『ポーラー・エクスプレス』(04年12月号)『ベオウルフ/呪われし勇者』(07年12月号)で「パフォーマンス・キャプチャー」を利用したフルCGアニメに挑戦した監督である。実写ベースの前作『ザ・ウォーク』(16年1月号)とて,3D上映の立体感が満喫できる佳作だった。この挑戦心溢れる監督が,ただのラブストーリーを撮るとは思えなかった。
 果たせるかな,本作は中盤からサスペンス映画に変身する。『Allied』は「連合国の」「味方の」といった意味だが,カナダ人将校で連合国諜報部員のマックスとフランス軍レジスタンスのマリアンヌは,ドイツ大使暗殺任務を通して惹かれ合うようになる。2人は英国で再会,結婚・出産を経て幸せに暮らす中で,突然マリアンヌはドイツ軍の二重スパイと疑われる……。後は,完全にマックスに感情移入し,嫌疑は無実無根であってくれ,最後は無事逃げおおせてくれと祈る気持ちで観てしまう。ラブストーリーとサスペンスを共存させた見事なストーリーテリングであり,映像的にも緊迫感や没入感を与えるだけの細工や仕掛けが施されている。以下,当欄の視点からの解説とコメントである。
 ■ CG/VFX利用の達人であるゼメキス監督なら,本作にもしかるべきシーンでデジタル技術を駆使していると想像できる。一見してCGだと分かるシーンはわずかであった。冒頭のシーケンスで,ブラッド・ピットが落下傘で砂漠に降下するシーン(写真1),ドイツ軍によるロンドンの空爆,墜落してくる戦闘機(写真2)くらいだっただろうか。大半は,素人目は分からないインビジブルVFXだが,上述の2作よりもその数は圧倒的に多く,かつ上質であった。主担当は,ゼメキス監督ご用達のAtomic Fictionで,UPP,Raynault VFXも参加している。
 
 
 
 
 
写真1 落下傘での砂漠への降下シーンは,スタジオ内撮影。
 
 
 
 
 
写真2 撃墜された戦闘機が目の前に迫って来る
 
 
  ■ 落下傘降下時の砂漠がCG製ならば,写真3の背景もそうだろう。そして,2人の乗ったクルマを包み込む砂嵐も当然CGでの描写である。1940年代のカサブランカの夜景,ロンドンの市街地の光景は定番のインビジブルVFXだが,空爆下の市中での出産シーン等は,VFX技術あってこそ描ける見せ場だ。写真4の家族団欒シーンにも,背景に墜落した戦闘機をさりげなく描き,戦争中の束の間の平穏を演出する意図に使われている。
 
 
 
 
 
写真3 (写真1から分かるように)語らう2人の背景の砂漠もVFX合成の産物
 
 
 
 
 
写真4 家族団欒のバックに墜落した戦闘機と戦火が描かれている
(C)2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
 
 
  ■ CG/VFXのパワーを存分に使っているのは,英国空軍ホールトン飛行場と戦闘機の描写だ。空軍基地の現在の施設を消し去って,写真記録から当時の姿を再現している。手間暇をかけたのは,主力戦闘機ウエストランド・ライサンダーの描写だ。現存する機体は博物館に1機しかなかったので,これを3Dスキャンし,実物大機体を制作して飛行場内に配置し,その他多数はCGで描いたという。これだけの準備をした上で,雨の中の空軍基地でのクライマックス・シーンを描いている。  
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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