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plus E誌 2015年10月号掲載 |
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『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』
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(東宝配給)
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(C) 2015 映画「進撃の巨人」製作委員会 (C) 諫山創/講談社
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オフィシャルサイト[日本語] |
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[9月19日よりTOHOシネマズ新宿他全国ロードショー公開中] |
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2015年8月26日 東宝試写室(大阪)
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(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています。) |
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賛否両論の劇場版映画だが,躍動感は上々 |
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| 前々号の前編に続く,大人気コミック/アニメの実写版映画の後編だ。余り日が開いていないので,殆どのシネコンでは前後編一挙に観られるようだ。既に夏の大作の興行的ピークは終わっているから,シルバーウィークを狙ってこの後編を公開するとは,実に見事な営業戦術である。後編の97分は,最近の映画としてかなり短めである。コンパクトにまとめたのは褒めるべきだが,おそらく,前後編まとめて見やすくするため,映画館側の都合を考慮して,尺が決められたのだろう。
前作の評判は,ある意味で予想通りだった。原作とはかなり異なる部分があったので,ネット上では賛否両論,ファン同士が結構激しくやり合っていた。どうしても原作へのこだわり派の方が発言力が強いから,本作前編を認めないという意見が多く,かつ過激になる。それもこれも,大体想定の範囲内であった。
そんな中で,当欄が「出来映えは,映画>アニメ>>コミックの順である」と書いたのは珍しかったようだ。この評価を見て,映画館に行く気になったという若者が何名かいたので,責任は重大である。ただし,コミックやアニメと比べて相対的に褒めただけであり, の評価からも分かるように,あらゆる意味で絶賛した訳ではない。以下では,前後編併せて,忌憚なく総合的に長所・短所を語っておくことにしよう。
一気に撮影し,2つに分けただけだから,監督もスタッフも同じで,新たな主要登場人物はいない。後編での劇的な大展開を期待したら,それは裏切られる。前作の終わりで,エレンが巨人に変身できることが判明し,そこから物語は再始動する。その延長線上で巨人たちと戦いが再開するが,思わぬ敵も登場する。終盤クライマックスのバトルを迎えるのは,容易に分かることだ。
時代不詳にした設定は悪くないが,脚本は凡庸だ。若手俳優の演技も稚拙で,「ふざけんじゃねえよ」「許せねぇ」と声高にがなっているだけだ。こんなセリフを与える方のレベルも低い。前編で物語を引き締めた長谷川博己,國村隼の敵役ぶりもワンパターンだ(写真1)。日頃から,邦画でプアなのは脚本と音楽と指摘しているが,本作もまさにその通りだった。副題からの駄洒落のように,劇中で名曲「The End of the World」が流れるが,完全に浮いていた。折角の名曲が台無しだ。誰の好みでこの曲を入れたのだろう?
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それに比べて,やはりCG/VFXは頑張っている。前後編を通して,その見どころを整理しておこう。
■ ロケ,実物大セット,ミニチュアセットが使い分けられている。軍艦島でのロケも敢行されたが,類似したミニチュアセットも作られている。同様に生身の演技,MoCap演技,パペット操作も適宜使い分けている。例えば,写真2では,巨人化したエレンは,ミニチュアセットを前に特殊メイクで生身の演技のようだ。手前に別撮りした複数人の映像を合成し,背景はデジタルマットのVFX合成,その他のCG素材を多重合成している。今やこの程度は当たり前とはいえ,いい出来だ。
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| ■ 終盤,予想通り「超大型巨人」が再登場し(写真3),人類の未来を賭けたバトルが始まる。同時に,前編で登場場面がさほどなかった「壁」がしっかりと描かれている。これも至近距離は実物大模型,カメラを引いた構図ではミニチュア,俯瞰視点ではCGだろう(写真4)。その壁をバックに,「立体機動装置」による(との設定で)ワイヤーアクションが合成される。最も褒めるべきは,この合成シーンだろう。カメラワークも素晴らしく,躍動感に溢れている。TV版アニメも到底この躍動感には勝てない。この実写映画が最も成功した部分と言えよう。
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写真4 壁の上の巨人を見上げる。勿論,この壁は実物大セット。
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| ■ その反面,崩壊した壁の破片の落下などは,少しお粗末だった(写真5)。担当VFXスタジオに実力差がかなりあるようだ。少し数えただけでも30社近くがクレジットされていた。CGアーティストの合計数は,上述の『ダイバージェントNEO』の1/10にも満たない。『アントマン』とは20倍以上違うだろう。いや,数だけではない。スケール感が違う。構図やカメラワーク等でも,彼我の差はどんどん開いている。折角の劇場版映画なら,もっと俯瞰視点での壮大な構図,カメラワークが欲しかった。これは担当VFXスタジオの責任ではなく,監督,特撮監督の構図力の限界かと思う。日本の特撮技術者の着想は,『ゴジラ』『ウルトラマン』の時代から,さほど進歩していないように感じられた。
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写真5 破壊された壁の落下表現は,少しリアリティに欠ける
(C) 2015 映画「進撃の巨人」製作委員会 (C) 諫山創/講談社
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(画像は,O plus E誌掲載分に追加しています) |
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