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plus E誌 2013年3月号掲載 |
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『クラウド アトラス』
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(ワーナー・ブラザース映画)
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(C) 2012 Warner Bros. Entertainment
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オフィシャルサイト[日本語][英語] |
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[3月15日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開予定] |
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2013年1月21日 角川試写室(大阪)
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(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています。) |
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物語の構成を知らないと難解だが,ビジュアルは抜群 |
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| 映画界での兄弟監督と言えば,まず誰もが思いつくのは,『ファーゴ』(96)『ノーカントリー』(08年3月号) のコーエン兄弟(ジョエル&イーサン・コーエン)だろう。少し映画通ならば,コメディが得意な『メリーに首ったけ』(98)のファレリー兄弟(ピーター&ボビー・ファレリー)や,『ロゼッタ』(99)『ある子供』(05)でカンヌ国際映画祭パルムドールを2度受賞しているダルデンヌ兄弟(ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ)の名も挙げることだろう。彼らは共同で監督し,脚本を書くが,人気監督のリドリー・スコットとトニー・スコットの場合は,共同製作はしても,監督は単独である。そうそう,劇場用映画の創始者リュミエール兄弟(オーギュスト&ルイ・リュミエール)の名前も忘れてはならない。写真技師の彼らは,「シネマトグラフ」(撮影及び映写装置)を発明するとともに,映画草創期に短編作品10数本を共同で監督・撮影・編集している。
さて,CG/VFX専門の当欄としては,当然『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー兄弟(ローレンス&アンディ・ウォシャウスキー)を挙げなければならない。最近駄作揃いで,映画人としての力量に疑問符がついているが,VFX史に残る業績を上げたことは,高く評価すべきである。本作品も彼らの作品だと思っていたのだが,今回は「ウォシャウスキー姉弟」(ラナ&アンディ・ウォシャウスキー)の作品だという。彼らに姉(ローレンスの姉? 妹?)がいたとは知らなかったが,姉弟なら息は合っているだろうし,少し新味も出ていていいかと思った。ところが,本作の公式記者会見記事を見て驚いた。何と何と,兄ローレンス(ラリー)が性転換して,女性ラナになったのだという。いやはや,それで感性が磨かれ,創作力が向上するのなら結構だが……。
この姉弟に加えて,本作は,製作・脚本・監督にトム・ティクヴァが加わっている。『パフューム 〜ある人殺しの物語〜』(07年3月号) 『ザ・バンク-堕ちた巨像-』(09年4月号)のドイツ人監督である。その異才ぶりには感心しつつも,当欄ではあまり高い評価を下さなかっただけに,この大作も素直に受け容れられるか,試写を観る前から,少し危惧した。
原作は,2004年出版のデイヴィッド・ミッチェルの同名小説で,舞台は1849年の南太平洋諸島から,文明崩壊後の2321年ハワイまで,6つの時代と場所にわたる壮大なスペクタクルだ。時代を超えて,同じ魂を持つ複数の人物が登場する。主演のトム・ハンクスを筆頭に,ハル・ベリー,ジム・ブロードベント,ジム・スタージェス,スーザン・サランドン,ヒュー・グラントといった豪華俳優たちが4〜6役を演じている。それを前提に観ても,すぐには細部を把握できない。ましてや,全く予備知識なしで観たら,頭が混乱すること必至だ。目まぐるしく時代を渡り歩くより,個々のエピソードをもっと丁寧に描いた方が分かりやすかったと思う。
懸念通り意欲が空回りしていて,作品としての評価は☆+か☆☆に留まるが,CG/VFX的には素晴らしかった。彼ら(と彼女)のビジュアル・センスの良さは,素直に☆☆☆と評価すべきだ。やはり『マトリックス』は伊達ではなかった。以下,その見どころである。
■ 6つの時代の中では,2144年のネオ・ソウルのビジュアルが出色だ。現実のソウルの街をベースに大幅に手を加えている(写真1)。この種の未来都市の描写は何度も見たが,カメラアングルや建築物や創造物のデザインも斬新で上質である(写真2) | |
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写真1 2144年のネオ・ソウルの街を描いたのは,VFX主担当のMethod Studios。相当気合いが入っている。
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写真2 造形物のデザインも秀逸で,製作費の多くをこの時代にかけている
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| ■ この2144年に登場する大道具,小道具類もかなり手が込んでいる。静止画だと威力を伝え難いが,革命家ヘジュ・チャンとクローン人間のソンミが語る部屋の壁が壮観だ(写真3)。オールド・ソウルの街や様々な絵画調のデザインまで,目まぐるしく変わる壁面は,勿論デジタル処理ゆえの産物だが,未来はこういう部屋になるのかと思わせる。
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写真3 目まぐるしく変わる壁面は全体がディスプレイ
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| ■ 2321年のシーンでは,ザックリーがメロニムを案内するハワイの島(写真4),険しい山の光景が印象的だ。とりわけ,山頂に配された施設の外観が圧倒的だ(写真5)。相当ビジュアルデザインには金をかけたと感じられるし,この姉弟のセンスの良さも感じられる。その他のCGならではの光景としては,技術的新規性はないが,室内で皿が舞い散るシーン(写真6),ソンミのクローンが多数登場するシーン(写真7)が強く印象に残った。
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写真5 山上にそびえるのはRise社製のCG建築物
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写真6 CGならではの印象的なシーンのNo.1はこれ
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写真7 技術的には単純だが,クローンの行進も印象的
(C) 2012 Warner Bros. Entertainment. All rights reserved.
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| ■ この映画は,相当に映画祭の賞を意識して作られたと思う。残念ながらその目的は達していないが,メイクアップ賞や視覚効果賞部門にはノミネートされても良かったのにと感じた。 | |
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(画像は,O plus E誌掲載分に追加しています) |
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