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plus E誌 2011年4月号掲載 |
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(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています。) |
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催涙弾映画という異名通りの感涙のエンディング
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| この地震のことは知らなかった。「20世紀最大の震災」だそうである。1976年7月28日,中国河北省の工業都市・唐山市を襲ったM7.8の直下型地震で,死者24万人以上,重傷者約16万人を数えたという。2004年の「スマトラ島沖地震・インド洋津波」(M9.3)の死者・行方不明者は229,652人,昨年の「ハイチ地震」(M7.1)は222,517人なので,数字の上ではそれを上回る。中国といえば,2008年の「四川大地震」(M8.0)が記憶に新しいが,その被害者は87,500人であった。
政治的理由で報道が規制されていたらしく,中国人ですら「四川大地震」が有史以来最大の地震と思っているようだ。その大災害を機に,唐山大地震追悼の念が増し,慰霊碑や共同墓地などが建設されている。この映画もまた,鎮魂の意味を込めて製作されたようだ。現代中国の経済発展に伴う,精神的余裕とも言える。
予告編でも流れているので,物語の骨子は語っていいだろう。建物の倒壊で瓦礫の下敷きになった双子の兄妹の内,1人しか救出できないと通告され,躊躇した上で,母親は息子を選択する。その声は幼い娘の耳にも届いていた。その後,奇蹟的に助かった少女は,別の家庭で育てられ,ずっと心の傷を負ったまま人生を生きる。母親もまた罪悪感と喪失感の中で,経済的繁栄を受け容れられずに1人で暮らす。そして32年が経ち,中国を再び襲った大地震が,彼女らの運命を変える……。
監督は,『女帝[エンペラー]』のフォン・シャオガン。同作の評(07年6月号)でも書いたが,チャン・イーモウやチェン・カイコーよりも大作の作り方が上手い。大地震の傷跡を見事に描いたかと思えば,約10年毎の刻みで中国の発展・繁栄の模様を淡々と描く。そしてエンディングは,大感涙のドラマだ。泣ける映画であることは間違いない。「催涙弾映画」と呼ばれるだけのことはある。中国では,約2千万人が観たというが,両大地震の被災者,関係者だけでも相当な数であるし,総人口を考えれば,別段不思議な数ではない。
CG/VFXはといえば,大地震の予兆を示すトンボの大群は,勿論CGによる表現だ。これに続く大地震のシーンは,模型を多用し,CGによるVFXとの合わせ技で倒壊の模様を描いている(写真1)。海外スタジオも少し起用しているが,世界のVFX技術の水準を考えれば,平均以下のクオリティである。韓国映画界の実力アップは『戦火の中へ』(11年2月号)で褒めたが,まだ中国映画界にはそこまでの力はないようだ。それでも,この大地震の描写がないと物語が始まらない。その点では『ヒア アフター』(11年2月号)の津波シーンと同様に,効果的に配置され,重要な役割を果たしている。
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写真1 さほど高度なVFXではないが,この映画の冒頭での重責をしっかり果たしている
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建物崩壊シーンよりも効果的だったのは,地震後の瓦礫の山の描写だ。四川大地震直後ゆえに,その映像記録も参考になったのだろうが,このリアルはかなりのものだ。この映画の試写を観たのは,ニュージーランド,クライストチャーチ地震の6日後のことである。四川大地震よりも,多数の日本人語学学校生が生き埋めとなったこの被害に重ねて見てしまう。本稿執筆時点で日本人28人は行方不明のままだ。市街地ならなぜもう少し早く救出できないのかと不思議に思ったが,この被災地の悲惨さを見れば,救出の困難さを納得してしまう。
この感涙の物語にも,少しだけ欠点があった。試写は日本語吹替版で観たのだが,あまり良い出来ではなかった。吹替版は嫌いではないのだが,洋画のセリフ翻訳や声優の技量に比べて,セリフの訳や声優の語りが,まだ中国語に馴染んでいないせいだと思う。もう1つは,救出された少年が片腕をなくしているのに,助けられないはずの少女が,なぜ息を吹き返し,大した怪我もなく生きられたのか(写真2)。不自然であり,説明も足りない。
そうした欠点はあるものの,最後の感動シーンがすべてを帳消しにしてくれる。なるほど催涙弾だ。
[本稿は,今回の東日本巨大地震以前に書いたものです。複雑な想いながら,あえて改稿せず掲載します] |
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写真2 助けられないはずの少女が,どうして怪我もなく生き延びた?
(C) 2010 Tangshan Broadcast and Television Media Co., Ltd. Huayi Brothers Media Corporation Media Asia Films (BVI) Limited. All Rights Reserved.
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(画像は,O plus E誌掲載分に追加しています) |
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