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O plus E誌
2006年5月号掲載 |
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(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています。) |
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一段と向上した毛並みと水の質感には脱帽 |
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レイ・トレーシング表現で定評のあるブルー・スカイ・スタジオが20世紀フォックス傘下に入って最初に作ったフルCG長編アニメの前作(02年7月号)は,予想を裏切る(?)素晴らしい作品だった。第2作目の『ロボッツ』(05年8月号)を昨年リリースしたばかりだというのに,1年も経たないうちに大ヒット間違いなしの『アイス・エイジ2』を送り出して来た。完全に量産体制を整えたようで,Pixar,PDI/DreamWorks
Animationを追う第3勢力としての地位を確立したと言える。
約2万年前の氷河期(アイス・エイジ)を舞台にした前作に対して,今回はまさにその氷河期が終ろうとしている時代に入り,温暖化により氷が溶け始めている世界が描かれている。最近の地球温暖化現象への警鐘ともとれるセリフもあり,日本語吹き替えには森田正光氏を始めとするTVでお馴染みの「お天気キャスター」10名が参加している。吹き替え版は未見だが,前作もかなり優れていたので期待できる。
ナマケモノのシド,サーベルタイガーのディエゴ,マンモスのマニーという愛すべき主役トリオは健在で,中でも本作では絶滅寸前のマンモスの悩みをもつマニーに焦点が当たり,牝マンモスのエリーとの恋の物語を展開する。おっと,もう1匹忘れてはならないのが,リスともネズミともつかない小動物スクラットだ。随所に登場して好物ドングリを求めてのギャグを連発する。このスクラットの活躍ぶりは前作以上だ。
監督は例によって御大クリス・ウェッジかと思えば,『アイス・エイジ』(2002年7月号)『ロボッツ』で共同監督を務めていた若手のカルロス・サルダーニャに監督を任せ,自らは製作総指揮に回っている。そりゃそうだ,短期間に『ロボッツ』とのかけ持ちは無理だろう。まさにピクサーのジョン・ラセッターに見習って,見事に若手登用と量産可能なスタジオ運営へのシフトを果たしている。いや違った。彼は本作品でも珍獣スクラットの声の出演は果たしている。ブルー・スカイ・スタジオとスクラットが健在である限り,この声の出演はずっと続けることだろう。
映画は氷壁をよじ登るそのスクラットのシーンから始まる。まず気づくのは,スクラットの毛並み,特にしっぽの毛が格段に向上し,見事なまでに微細な表現になっていることだ(写真1)。Fur
& Featherチームの技術向上の甲斐あって,他の動物も毛皮の表現はどれも素晴らしい。マニーの背は200万本の毛で覆われているが,その1本1本の拡散反射と影を計算するのに,ボクセル・レンダリングを用いているという。 |
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写真1 お馴染みスクラットの毛並みも一段と向上
(c)2006 Twentieth Century Fox
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次なる大きな特長は,主演のトリオ+1匹の他に実に多数の動物が登場することだろう。氷が溶けての大洪水に備えて,「ノアの方舟」を模した船に多数の動物を収容しようという想定のシーンがあるためだ。それぞれの造形に力が入っていて,専任担当チームが割り当てられているのだなと感じさせる。セリフのある新キャラの中で目立つのは,フクロネズミの兄弟クラッシュとエディだ(写真2)。目と鼻筋の色で兄弟の区別がつく。この2匹の表情や激しい動きのつけ方は秀逸だ。ヒロイン・マンモスのエリーの表情と声も見事にマッチしていて,アニメータの腕に感心する。 |
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写真2 こちらは新登場キャラのフクロネズミの兄弟
(c)2006 Twentieth Century Fox
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火,岩肌,土の質感も上々だが,氷が溶けた後の自然風景にも力が入っている(写真3)。スクリーンで観る以上に静止画で熟視した時に,その精細さに驚く。それ以上に驚嘆すべきは,一段と凄みを増した水の表現だ。氷河が割れての洪水も,マニーがエリーを助けるシーンの水の質感も感動ものだ。CG技術は,本物の水以上の表現力を手にしたといって過言ではない。
質感だけでなく,「火の王様」と崇められるシドが多数のミニナマケモノを前に歌うシーン,それに続くハゲワシのコーラス・シーンは,CGならではの多頭数表現力を発揮している。いい構図と振り付けだ。ミュージカル仕立てで楽しませてくれるのも嬉しい。
ただし,この映画は少々騒々しい。脚本としては前作のヒューマンドラマの方が数段優れている。ギャグあり,アクションあり,スペクタクルありのバラエティ番組風で,1時間31分が長く感じられる。TV番組ならCMで息がつけるところを,スクラットの登場でより熱心に観てしまうためだ。確実に観客が見込めるヒット作の続編ゆえに,随所に遊び心が感じられるし,観客サービスをふんだんに盛り込んだとも言える。ストーリーは今イチなのだが,この遊び心とCGの質感に対しては,やはり☆☆☆の評価となってしまった。お見事です。 |
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写真3 相変わらず氷や水面処理の見事さに加えて,今回は景観の描写にも力が入っている
(c)2006 Twentieth Century Fox
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