■『SAYURI』  :
チャン・ツィイーが演じる芸者の半生を描く大作。いかにも欧米人の目で見た日本の風景と芸者像だが,コクのあるドラマに仕上がっている。結末が見えてしまうのは欠点だが,4人の芸者のバトルがすごい。キャスティングの成功であり,俳優の個性を引き出すロブ・マーシャル監督の腕だ。「さゆり」の少女時代を演じる大後寿々花の表情が,チャン・ツィイーに似ているのにも驚く。渡辺謙が本作品で再度アカデミー賞にノミネートかとの噂だが,置屋の女将役の桃井かおりの方が数段上で,「助演女優賞」ものだと感じた。
■『綴り字のシーズン』 :
「スペリング・コンテスト」で全国大会優勝をめざず11歳の娘とその特訓に夢中になる父親(リチャード・ギア)。それに反発して母と長男の心が離れ,家庭崩壊の危機が…。そんなシリアス・ドラマの中に,思いがけずCG/VFXの活躍の場面が登場するのは嬉しい。
■『疾走』 :
直木賞作家・重松清の原作を俊才・SABUが脚色・監督した映画祭向きの作品。この監督は器用で,助演陣の演技も光る。映像も音楽もいいが,いかんせんテーマが暗過ぎる。小説はそれで良くても,映画は感動するか,楽しく観るものであって欲しい。
■『天使』 :
少女コミックを女性が脚色し,女性が監督した作品。深田恭子が演じる天使の羽はCG製で,ワイヤー吊りも大人しい目の演出だ。少し幸せになった気分を味わせてくれるが,映画館で入場料を払って観るほどの作品じゃない。
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