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O plus E誌
2004年10月号掲載 |
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『アラモ』
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(タッチストーン・ピクチャーズ /ブエナビスタ配給) |
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(c)2004 TOUCHSTONE PICTURES |
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オフィシャルサイト[日本語][英語] |
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[9月25日より全国松竹・東急系にて公開予定] |
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2004年8月31日 東映試写室(大阪) |
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(注:本映画時評の評点は,上から  , , , の順で,その中間に をつけています。) |
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真面目に作られたアメリカ版時代劇特番 |
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数少なくなった西部劇の,かつての大作のリメイク作品だ。「愛する人がいた。守るべき家族があった。戦う理由など,他になかった…」なるキャッチ・コピーはなかなか秀逸で,懐かしのあの映画を思い出させてくれる。
西部劇の大スター,ジョン・ウェインが私財を投じて製作・監督・主演した超大作『アラモ』(60)は,筆者が自分の小遣いをはたいて観に行った最初の洋画だった。生まれて初めて買ったドーナツ盤レコードも,その主題歌「A面:アラモの歌/B面:遥かなるアラモ」だった。大味な映画で興行的に成功しなかったことは随分後になって知ったが,70mm映画の大スクリーンに繰り広げられる戦闘シーンは,中学生の筆者にはワクワクする大スペクタクルだった。描かれている時代や戦争の意味など何も分からなかったが,その活劇だけで面白かった。アメリカのベビーブーマーたちにも同じような想い出があることだろう。
一昨年のSIGGRAPH 2002はテキサス州サンアントニオ市の開催で,現地に行ってからアラモ砦がこの町にあったことを知った。砦の遺跡を見学し,ショッピング・センターの最上階にあったアイマックス・シアターでアラモ砦の攻防の歴史ドキュメンタリーも観賞した。市内中心部を流れる運河の遊覧船と並んで,この町の最大の観光資源だと感じられた。「1836年,テキサス,アラモ砦。数千人の軍勢を相手に立ち向かったのは,わずか200名足らずの民衆だった……」というから,榎本武揚,土方歳三の函館五稜郭のような存在かと思う。
このリメイク映画の監督は,『オールド・ルーキー』(02)に続いて2作目となるテキサス州出身のジョン・リー・ハンコックである。アラモ砦を見殺しにするテキサス軍司令長官サム・ヒューストン将軍に『デイ・アフター・トゥモロー』(04年7月号)のデニス・クエイド,かつてジョン・ウェインが演じた伝説の「鹿皮服の男」デイヴィ・クロケットに『シンプル・プラン』(96)のビリー・ボブ・ソーントン,リチャード・ウィドマークが演じたジム・ボウイにジェイソン・パトリック,ローレンス・ハーヴェイが演じたウィリアム・トラヴィス中佐に新星パトリック・ウィルソンというキャスティングだ。
前作に比べると,顔触れ的にかなり地味な感があるが。映画そのものもケレン味がなく,歴史に忠実に真面目に作られた感じだ。印象は,上述のドキュメンタリーに似ている。新解釈の典型は,デイヴィ・クロケットだろう。当時既にかなりの有名人であった彼が,大衆に作り上げられた虚像に自ら悩むというシーンは,等身大の英雄の内面を描いていて興味深い。ビリー・ボブ・ソーントンのルックスも,ジョン・ウェインに比べると,残された肖像画にかなり近い。風貌ゆえに選ばれた配役だろう。
テキサス州のディッピング・スプリングに作られた広大なオープンセットは,歴史的な戦場をほぼそのままの大きさで再現している(写真1)。サンタ・アナ将軍率いる約4,000人のメキシコ軍との戦いに約2,500人のエキストラを雇ったというから,CG製の兵士を導入することなく撮影したと思われる。VFX担当は,マット・ワールド・デジタル社だから,このオープンセットを取り巻く環境に,様々なデジタル・マット画を配したり,余分な建築物を取り除いて当時を再現したと考えられる。
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写真1 テキサス州に作られた巨大オープンセット
(c)2004 TOUCHSTONE PICTURES.All Rights Reserved.
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勝ち目のないアラモ砦の攻防で命を失った彼らは,アメリカ人の心に残るヒーローで,日本で言えば坂本龍馬や中岡慎太郎のような存在だという。定番の時代劇だから,NHK大河ドラマの題材のようなものだ。いや,この戦争そのものは,白虎隊の戦いや西南の役の田原坂を思い出させるから,年末の時代劇スペシャルのような感じだ。夕焼けに背にした戦士たちのシルエットも,クロケットの奏でるバイオリンの音色も,エンドロールで流れるメロディも抒情的だった。いっそ,堀内孝雄に主題歌を書かせたらもっと似合っただろう(勿論,冗談だが)。
映画史に残る作品ではないが,洋の東西を問わず,この種の時代劇の人間模様は現代人に何かを感じさせる。入場料分は十分楽しめる,観て損はない映画だ。 |
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