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O plus E誌 2004年8月号掲載
 
 
『スパイダーマン2』
(コロンビア映画/ ソニー・ピクチャーズ配給 )
 
      TM&(c)2004 MARVEL&(c)2004 CPII  
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]   2004年6月24日 ナビオTOHOプレックス[完成披露試写会(大阪)]  
  [7月10日より日劇1ほか全国東宝洋画系にて公開中]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  220億円かけた2作目は,まずまず期待通りの迫力  
   この2年間で「スパイダーマン」の名前は,日本でもよく知られるようになった。前作のヒットに加え,ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに,昨年「アメージング・アドベンチャー・オブ・スパイダーマン™・ザ・ライド」が登場したこともある。映画会社は異なるが,それをものともせず,この新作はしっかりUSJとのタイアップ広報作戦が展開されている。
 製作費は何と220億円!ソニー・ピクチャーズの力の入れようも尋常ではない。数カ月前から,タブロイド判の速報が次々に届くかと思えば,完成披露試写会でのプレス資料はものすごく豪華だった。方程式通りの,いやそれ以上の前宣伝の効果があって,北米では独立記念日休暇の公開では前作の興収記録を塗り替えた。早くも,3作目,4作目の製作に拍車がかかったという。
 とまぁ,前宣伝のボリューム感をそのまま再現すべく書き始めたのが,こういう場合は映画の中身は今イチで,批評家筋からは酷評されることも珍しくない。ところが,本作に限っては,ファンからの反応も批評家の評価も頗る好調だ。力を入れただけ,娯楽作品としての評価も高いという結果が出ている。大したものだ。
 監督のサム・ライミは続投で,スパイダーマン/ピーター・パーカー(トビー・マグワイア),恋人のメリー・ジェーン(キルスティン・ダンスト),親友のハリー(ジェームズ・フランコ),メイおばさん(ローズマリー・ハリス)などの主要キャストも全くそのままだから,安心して観ていられる。
 前作のグリーン・ゴブリンに代わる今回の敵役は,核融合の専門家のオットー・オクタヴィウス博士(アルフレッド・モリーナ)で,実験中の大事故から凶悪な怪人「ドック・オク」へと変身する。もともとマンガ的なキャラであることは観客も承知の上だが,原作の多数のキャラの中から選んだという,4本の金属アームをもったこの敵役の性格づけが実にいい。グリーン・ゴブリンにも負けていない。これじゃ,3作目以降もこのハイレベルをキープするのは大変だなと感じさせるほどだ。
 では,本稿の主題であるVFXは220億円に見合うだけの出来栄えかといえば,答えはイエスで,見どころは以下の通りだ。
 ■ 主担当は勿論ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス。前作は急仕上げのためか,不出来な箇所も目立つと評したが,今回は面目躍如で,画質的にも演出的にも大幅に改善され,大きな欠点は見当たらない。テンポが良く,目まぐるしく見せ場が続くのでアラも目立たない。
 ■ 前作でも,NYのビル街をスウィングするシーンは上出来だったが,一段とパワーアップしている。快適だ。自分もスパイダーマンになってみたくなる。LAで撮影しているはずだが,NYのビルのテクスチャは完璧だ。
 ■ 高層ビルを活用したアクション・シーンは絶品で,特撮・視覚効果とはいえ,どうやって撮影したのだろうと思わせるシーンの数々だ。メリーおばさんまで激しいアクションに参加させてしまうのには驚いた。
 ■ 列車上の決闘シーンは圧巻だ(写真1)。重力無視のアクションだとの声もあるが,そんなことを気にしている余裕はない迫力だ。列車,背景となるビル,戦う2人の合成は,光学的整合性もしっかり考慮してある。
 ■ ドック・オクは4本のアーム(写真2)は,大半はCGだろうが,エンドロールに「パペッティア」の名前があったところを観ると,一部は金属製の本物を操作させたのだろう。グリーン・スクリーンをバックにした演技に重量感を満たせるために,わざと重い腕をつけさせ,後でCGに差し替えたシーンも少なくないはずだ。
   
写真1 車両上での対決の迫力は圧巻
 
写真2 4本の金属製アームの動きは自由自在
 
 
TM&(c)2004 MARVEL&(c)2004 CPII. All Rights Reserved.
 
     
   ■ 前作ではトビーに裸顔で演技させておいて,CG映像でマスクを描き込んでいると知って驚いた。本作では,スパイダーマンがマスクなしで登場する場面が頻出するが,今度はその裸顔に見える顔自体をCGで描いているようだ。SIGGRAPH 2004のプログラムを見ると,それらしき発表題目があるから,Image-Based Lighting技術の応用と考えられる。
 ■ と,ここまで褒めておいて,総合評価が☆☆なのは厳しくないかと言われそうだ。批評家たちはピーター・パーカーの心の葛藤の描写や,それを演じるトビー・マグワイアの演技力を評価しているが,私の評点は高くない。何よりも,MJが全く魅力的でない。無理に演技派向きの脚本にする必要もない。この種の娯楽作品は,もっとワクワクさせ,スカッとさせてくれる映画でなくてはならない。ハイレベルの人気シリーズとして続いて行くことは確実なので,あえて厳しい評価にした。「大きな製作費,観客動員数を誇る人気映画には,それだけの大きな責任がある!」のだ。
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