Yukoの検索サービス・ビジネス・ルポ

 今回の検索サービスの原稿を準備するに当たって,有力どころにアンケート調査するとともに,ディレクトリ型と検索エンジン型の代表的なサービスを行っている2ケ所を訪問して,詳しくお話を伺ってきました。

 Infoseek Japan

 検索エンジン型の代表選手は,Infoseek Japanです。階層型ディレクトリもついていますが,やはり元来はUltraseekと呼ばれる高速の検索エンジンが売り物です。米国では,Alta Vista,HotBotと並ぶ3強の地位を保っています。その日本語サービスがInfoseek Japanなのです(付図1)。
 日本でのパートナーは,(株)デジタルガレージ。インターネット分野のシステム開発やコンテンツ制作を行っているベンチャー企業です。1996年10月にサービスを開始し,1997年5月よりUltraseekが本格的に導入されたそうです。Ultraseekは,SunのUltra Enterprise 3000という高速サーバマシン2台で稼働しています。並列処理を利用して高速化を図っているのがウリのようです。日本語のページだけを対象にし,現在は約300万ページ。ページ数を誇るよりも,重複のないデータベース作りに注力しているそうです。ロボットは一日に1000万箇所廻れる実力があるので,充分1日でDBをアップデートできる態勢になっています。
 もう1つのセールスポイントは,自然言語による検索や曖昧検索の機能。これはオムロンが開発した技術を導入しているようです。
 お相手してくださったのは,Infoseek事業部長の佐藤康夫取締役。この業界での生き残りは厳しいと言いながらも,本格的なEC(Electronic Commerce)時代への期待と,検索サービスの重要性を語って下さいました。ECをうまく機能させるには,ユーザからのトラフィックを適切なコマースの場へと流す道筋を作る。そんな「ハブ」の役目が,これからの検索エンジンの役目だそうです。
 検索サービスを無料で維持するための広告集めについては,インターネット用広告代理店(D.A.C)を複数社で設立し,ここから,広告料収入を得ているとのこと。佐藤さん自身広告代理店のご出身だそうですから,プロから見てもこの分野には未来があるということなのでしょう。
 ご苦労話を尋ねたところ,日本のページはHTMLの文法を正しく守っていないものが多いとの答が返ってきました。見た目が同じならばということで,ページの文書構造を無視した記述や,付帯情報を書き忘れたマナーの悪いページが増えているようです。誰でも手軽にホームページを作るようになった反面,検索エンジン泣かせの「ならず者」(Yahooの原義)も増えているようです。

 NTTディレクトリ

 ディレクトリ型のサービスでは,「NTTディレクトリ」を担当されている「マルチメディア実験推進室」を訪問しました。西新宿の初台駅近くにできたピッカピカの東京オペラシティの高層ビルの26Fがそのオフィスです。日本初のCAVEも入っているというNTTのICC(Inter-Communication Center)もこのビルの階下にありました。さぞかしテナント料も高いんじゃないかと,余計な心配をしながら,ご担当の本間幸恵さんをお訪ねしたところ,課長の宮元万菜美さんも同席して下さいました。
 インターネットが日本で広まりだしたころ,NTTの研究所の草の根グループが作ったホームページがWWWの総合ガイド役を果たしてくれました。ブラウザを立ち上げた時の初めのページ(これが本来ホームページと呼ばれるべきもの)に,このhttp://www.ntt.jp/(現在はhttp://www.ntt.co.jp/)を使った人が大半であったといいます。そこには日々新着情報が寄せられて来るようになりました。
 この流れを引くのが現在の「NTTディレクトリ」で,1995年12月からのサービス開始です(付図2)。いまも,ページ作成者からの登録制という基本姿勢が守られています。登録希望者が分類項目を指定する方式なので,誤りを正す以外分類作業には人手はかかりません。「Yahoo! Japan」は約20人のサーファーで約13万件なのに,こちらは約16万件(1997年7月末現在)に達しています。毎日500件が登録されてくるようです。ロボット型検索のgooが400万件なのに比べると少ないのは,AltaVistaとYahoo!の関係と同じで,これは目的が違うので仕方ありません。
 「NTTディレクトリ」のページにも,Infobee,TITANといったキーワード検索エンジンも備わっていますが,これはそう強力ではないようです。
 サービスの特長としては,「U-La-La」といった女性用ディレクトリや「ぷちねっと」という子供用ディレクトリを提供していることでしょう。「スターウォーズ」や「花火大会」といった特集にも力を入れているようです。アダルト関連は登録もお断りといった姿勢は,いかにも公益法人で,まるでネットワーク版「皆様のNHK」みたいですね:-)。
 そして,何よりも他のサービス・サイトと異なるのは,全くバナー広告がないことでしょう。NTTの事業法での規制により,タウンページ以外では一切広告を取れないそうです。このディレクトリは,インターネットの電話帳でありながら,あくまで無償のサービスなのです。NTTとしては,皆さんがせっせとネットサーフィンしてくれりゃいいのですね。
 そのためか,ビジネスとしての意識は高くなく,業界内での生存競争とは全く無縁の存在なのです。こういうサイトは,世界にはあまり例がないようです。サービス過剰,広告過剰にならずに,1つだけおっとりとした検索サービスが残っているのも悪くないなと感じました。
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