Voice

○岡田 大翔(おかだ ひろと)さん
 【現在,修士1回生.滋賀県立東大津高校出身】

◆岡田さんへの特別インタビュアは,RM2Cの相談役 田村秀行先生[元メディア情報学科教授.現,総合科学技術研究機構(客員)教授]です.

(田村) 定番のなぜ柴田研にやって来たかと聞く前に,なぜ実世界コース,いやなぜ情報理工,なぜ立命館にやって来たかまで遡って聞きましょう.

 私立なら立命館で,自然にこのBKCと決めていました.ダメ元で,国立の旧帝大も受けたのですが,学力的に足りなくて,予定通り立命館になりました.高校に通うのと同じ感覚で通えるというのも大きな要因でした.

(田村) 出身は「東大津高校」ですか,あまり知らないな.この近くじゃ,膳所高校,大津高校,石山高校を昔から知っているけれどね.石山高校はBKCに近いせいか,情報理工への学生供給源です.過去にこのVoice欄に登場したM2田付君も,RM研3期生の岡本夏美さんも石山高校出身だったはずです.

 BKCには石山高校より,東大津高校の方が近いです.もっとも,東大津高校からすると,立命館BKCよりも龍谷大や,滋賀県立医大の方が近いです.大半の卒業生は,龍谷大学に行き,立命館や同志社に入学するのは,そう多くありません.膳所高校は断然上ですが,偏差値的には,石山>東大津>大津の順なので,そういう結果になってしまうのでしょう.

岡田さん

 BKCには石山高校より,東大津高校の方が近いです.もっとも,東大津高校からすると,立命館BKCよりも龍谷大や,滋賀県立医大の方が近いです.大半の卒業生は,龍谷大学に行き,立命館や同志社に入学するのは,そう多くありません.膳所高校は断然上ですが,偏差値的には,石山>東大津>大津の順なので,そういう結果になってしまうのでしょう.

(田村) じゃあ,岡田君は東大津高校の中では成績優秀者だった訳だ.そうした優秀層が折角BKCに来てくれているのに,情報理工学部がOIC(大阪茨木キャンパス)に移転すれば,ほとんど理工学部に取られてしまい,はるかOICまでは来なくなりそうですね.

 そんなことないと思いますよ.高校自体はBKCに近いけれど,自宅がJR沿線の学生はJRだけで行けて,駅からも近いOICは魅力的だと思います.私の自宅は湖西線の「大津京」で,高校にもBKCにも京阪・石山坂本線,JR琵琶湖線,バスを乗り継いで通っていましたから,JRだけで通える方がずっと楽です.

(田村) なるほど,交通の便を考えれば,滋賀県からOICも大いにあり得るのか.ええっと,岡田君は今修士1回生で,OIC移転の2024年春は,丁度修士で出て行くタイミングか.じゃあ,博士後期課程まで進んで,是非OICまで来て下さい.
 それはさておき,立命館BKCの中で,なぜ情報理工→実世界情報→柴田研を選択したのでしょう? 野間研は考えなかったのかな?

 最初から理系志望で,理工学部ならロボティクス学科,情報理工なら実世界コースと決めていました.物作りが好きだったからです.結果的に,プログラミングの腕を磨くには情報理工で良かったと思っています.VRやMRに興味があったので,迷わず実世界コースでRM2Cを目指しました.
 野間研は考えなかったですね.RM2Cの方が,対話デバイスのExtickTouchやITSでのDR利用など,魅力的なテーマが多かったからです.ドローンも少し気になりました.RM2Cの中では,柴田研を第1希望,木村研を第2希望にしました.結果的には,志望通り柴田研に配属され,Gr.配属はITS班のあるGr.1になりました.

西川 卓さん
同じGr.1に所属する
 M2の西川 卓さん

(田村) なるほど,地理的にもテーマ的にも,柴田研に来るべくして来たという(柴田先生からすると)模範的学生ですね(笑).(インタビューの記録係のM2 西川君に語りかけて)そう言えば,西川君も同じGr.1だったよね?

(西川)私は,同じGr.1であっても,ITS班ではなく,Framework班です.

(田村) そーか,西川君は成績優秀者だから,Framework班に入れられたのか.

(西川)そうなんですか?

(田村)SIGMAフレームワークは時空間データの映像通信を統一的に扱う大きな構想で,かなりしっかりした基礎学力が要るから,柴田先生は中心となる学生には,成績優秀者を選んでいるはずです.以前の携帯電話用のモバイルMR Framework班でも,各学年の西園寺クラスの学生が技術継承していましたね.岡田君も成績優秀者のようだから,Framework班にトレードされるか,ITS班と兼務するかも知れないよ.ITSもドローンも含む枠組みで,プログラミングが得意なら向いているかと思います.サークルは,RiG++だったっけ?

(西川)それは私です.情報理工学部のプロジェクト団体です.岡田君は違います.


 私は,理工学部のプロジェクト団体の「立命館大学飛行機研究会RAPT」に所属していました.人力飛行機を組み立て,「鳥人間コンテスト」を目指す団体です.そこで,電装班に所属し,ナビゲーションシステムのプログラミングを担当していました.

(田村)鳥人間のRAPTは,14期生の内村君が所属していたサークルだね.じゃ,それは後で最近の成績を聞くとして,岡田君の部活,サークル活動歴を聞かせてもらいましょう.まさか,中学や高校から鳥人間はやっていなかったでしょうから.

 中学では,陸上部に入っていました.最初は長距離走の1500mが専門だったのですが,「オスグッド病」になってしまい,続けられなくなりました.膝下の骨が飛び出してくるスポーツ障害で,中学生くらいの男子によくある症状です.
 それで投擲部門に転向し,「円盤投げ」を始めました.中学生には「槍投げ」や「ハンマー投げ」はなく,「円盤投げ」「砲丸投げ」の2種目だけなのです.よく飛ぶ「円盤投げ」の方が面白そうなので,それにしました.普通の中学校のグラウンドではなかなかその場所はありませんが,私の中学校の隣に陸上競技場があり,この種目の練習に向いていたのです.

(田村)面白そうだね.円盤はどれくらいの大きさ,重さで,何メートルくらい投げるの?

 中学生男子の円盤は鉄製で1.5kgです.大きさは手の平くらいで,約20cmでしょうか.高校生男子は1.75kg,一般男子は2kgで,もっと大きな円盤です.私の飛距離は25m前後でしたが,上級者は30m以上飛ばしていました.

(田村)それじゃ,高校に入ってもっと飛距離が出たとか,あるいは「ハンマー投げ」に転向したとか.

 いや,陸上部は中学で止めて,高校からは他のことをやりたくなり,「軽音部」に入ってロックバンドを組みました.ボーカル,ギター,ベース,ドラムの普通の4人体制で,リードギターを担当していました.長期休暇には,コンサートも開催しました.

(田村)おやまー,何なる変わりようだ.まさに文武両道で色々経験したのですね.では,記念となった円盤投げの写真やロックバンドの演奏風景の画像を載せておいて下さい.

 それが……,1枚もないのです.うっかり,デジタルデータを全部消してしまって,高校時代までの写真は何も残っていなくて…….

(田村)おー,何たること.西川君,こういう学生は要注意ですよ.大事な実験データをセーブし忘れたり,バックアップを取っているはずの共有ハードディスクの中身を壊してしまったり,そういう前科のある先輩もいたので.

(西川)ハイ,しっかり管理します.共有データは,任せないようにします(笑).

(田村)では,いよいよ本命の鳥人間のRAPTに移りましょう.内村君のことは全く知らなかったのですか?

 4学年上の14期生の先輩だったようで,RAPT内での交流は全くありません.RM2C内では,3回生時の「卒業研究1」のお世話係のリーダーは15期生の先輩でしたから,RM2C内でもすれ違いです.この研究室にRAPTの先輩がおられたことも初めて聞きました.
 今見ると,RAPTの概要や役割分担のことは,3年前の内村さんのVoiceページで詳しく語られておられるので,そちらを見て頂ければと思います.
 私の担当は「電装班」のナビゲーションシステムのプログラミングでした.自動車や航空機のナビと同様な機能が,人力飛行機にも求められています.機体速度,プロペラの回転数計測などのプログラムも作っていました.
 年々,電装部分は向上していて,一昨年の「鳥人間コンテスト」では,RAPTの自己新記録となる254mの飛行を達成しました.数十km飛ぶ上位チームには全く太刀打ちできませんが,殆ど飛べずにすぐに落下した内村さんの年よりも,十分長く飛行したので,その様子を見ているだけで達成感がありました.

岡田くん開発のナビシステムと自己新記録達成の飛行シーン
左: 岡田くん開発のナビシステム
右: 自己新記録達成の飛行シーン

 一昨年の「鳥人間コンテスト」はコロナ禍で開催中止でした.昨年から再開されましたが,昨年も今年もRAPTは出場チームに選ばれなかったので,3年前の我々の記録が学内の最長不倒です.
 その後はRAPTとの繋がりも少なくなりました.たまに定例会の議事録を眺めたり,徹夜作業で人手が足りなかった時に手伝いに行っていた程度です.

(田村)随分,課外活動では幅広く,色々体験してきたようですね.その徹夜作業の経験を活かして,卒論でも頑張ったのでしょうか?

 かつては,卒論や修論時に研究室で徹夜した先輩もおられたようですが,コロナ禍で入構制限があり,そんなことはできませんでした.
 研究テーマは,ITS班がめざす隠消現実感 (DR) を使った安全運転支援システムの機能拡張です.測距センサのLiDARの計測可能距離を超えてしまうとDR処理が上手く働かないので,その対処法を考えることが課題でした.

車輌のルーフの設置したLiDAR(上)とRGBカメラ(その下)
赤い点までの距離がLiDARで計測され,3次元点群が得られる
左: 車輌のルーフの設置したLiDAR(上)とRGBカメラ(その下)
右: 赤い点までの距離がLiDARで計測され,3次元点群が得られる

 苦労といえば,入構制限で研究室に常時全員がいることができなかったので,何か疑問点が生じても,すぐに先輩の助けを借りることができなかったことです.Slackやメールだと正しく伝わらなかったり,自力で調べて対処しようとすると,どうしても効率が落ちました.対面で指導を受けていたら,すぐに解決できたのにと思うことも何度かありました.

(田村)その入構制限で,立命館の研究レベルは相当低下しましたね.入構制限は徐々に緩んだのに,自宅にいる癖がついてしまったのか,出て来ずに済まそうという安易な学生が増えたと感じます.京大や阪大の先生に聞くと,授業はオンラインだった時も,研究室内は何も変わりなく,全員普通に来ていたとのことでした.理系の研究室は,毎日顔を合わせ,互いに刺激し合うのが命なのに,国立大との差が益々開いてしまったようです.その証拠に,卒論の結果が学会発表できるレベルに達しなかった学生の方が多いのじゃないかな.

 私もそのレベルには達しなかったので,その遅れを取り戻せるよう,これから頑張ります.
 GW以降は制限がなくなり,今は研究室のいる学生の数が増えました.院生になると,4回生を指導する立場ですが,B4課題やB4チャレンジの論文読みなどで,結構質問してくる学生がいるので,こちらも刺激になります.彼らの学年からは,毎日研究室で過ごすのがデフォルトになればいいなと思います.

(田村)優等生的な発言が出たところで,これから配属希望を出す3回生に対してのメッセージをお願いします.

 RM2Cの最大の特長は,人気研究室でレベルが高い上に,2研究室合同なので,人数が多いことです.それだけ研究テーマも多く,ゼミに出ているだけでも知識量が増えるということも魅力の1つです.切磋琢磨して,自分を成長させることを希望する学生に来て欲しいです.
 先になって,コロナ世代の学生はレベルが低かったと言われることのないよう,頑張りたいと思います.